きつけ塾 いちき

「きもの」の袖に手を通す時に、「ときめき」を感じる日本の女性たち。
この「胸の高まり」は、いったい何なのでしょうか。

衣裳方を変えて!

2015-07-28 22:01:44 | 舞踊の着付け

師匠は「山田五十鈴」さんの衣裳方
松竹衣裳の衣裳方、故・岸田先生から30年近く、いろいろな事を教えて頂いていました。
帯の結び方もそのひとつです。
岸田さんは、最後の大女優と言われる、故・「山田五十鈴」さんの衣裳方で、衣裳の買い付けまで任せてもらえるベテランでした。
出身は山田五十鈴さんと同じ京都。

帯を一巻きしたら最後…動かしたらアカン!
その岸田さんが、次のようなことを教えてくれたのを思い出します。
「帯を女優さんに一巻きして、手先の長さが違ったからといって、帯をずらしたりしたら、『チョット、衣裳方を変えて!』と言われてしまうんです。ですから、手先を間違えないで、一巻きしたら絶対に動かしたらアカン…」
同じ、松竹衣裳にいた江戸っ子の根津昌平さんも同じことを言っています。根津さんは、あの花柳章太郎さんと、初代・水谷八重子さんの衣裳方でした。
根津さんの著書の中で、若い時の失敗談として、概略次のような文章が出てきます。
「帯を締め過ぎると…荷造りじゃないんだから。ゆるいと…気持ちが悪いと言われる。帯結びでグズグズしていると、帯をひったくって自分で締め始める。…お前みたいな衣裳付きなんかいらない…ということですよ。」
プロの着付けの厳しさを教えてくれています。



着付けの技術は盗むものでした。
私たちの師匠、岸田さんとは、一週間に一・二回は電話でお話を聞き、お勉強させて頂いていました。
そんな中で、教えて頂いたのは、
「技術は教えもらっても身に付かない。見て覚え、盗んでこそ本物が身に付く」ということでした。
一方、根津さんも、
「『教えてもらいたければ、一升もってこい』と言われて一升持って行っても別に教えてくれるわけじゃない。
先輩が着せるのを後ろから見ているだけ。…やることが早くって、手際が良い。…これはいまでもいえることですが、要するに、相手から技を盗むしかないんです。」(根津さんの文章から)
私は、今も昔も、同じだと思うのですが…いかがでしょうか。

 



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「これくらい」という技術

2015-07-28 02:08:52 | 舞踊の着付け

この帯結びの手先は何センチ?
帯結びのおけいこをすると、受講生から「手先は何㎝ですか?」とよく聞かれます。
「これくらいです」と手先をつかんでいうと、定規を持ってきて計る人もいます。
でも、「これくらい」なのです。

半巾帯、角帯、袋帯、どんな帯でも「これくらい」です。
角帯の「貝ノ口」の手先でも、その厚みや硬さによって、手先は微妙に違います。
舞踊の着付けの場合、同じ貝ノ口でも、真面目な商家の番頭さんと、小粋な遊び人とでは結ぶ位置と形が違うのです。
ですから手先の長さも、「これくらい」なのです。



踊りでよく結ばれる「つの出し」でも、初々しい町娘と芸者では形と大きさがずいぶん違います。
また、狭い座敷と、千人以上の舞台で踊る「つの出し」は、その大きさや形が違ってきます。

ですから、あくまでも「手先の長さはこれくらい」なのです。

 



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