20歳のJリーグ④ 若手育成・強化 “自前でプロ”の志を
この春、日本サッカー協会(JFA)アカデミー福島の1期生のある男子選手が、Jリーグ入りでなく、大学進学の道を選びました。
「出番がないJリーグよりも、大学で試合に出たほうがいい経験になる。そこで自信をつけてからプロに進みたい」という判断でした。すでに首都圏の大学サッカー部で、日々の練習に励んでいます。
同アカデミーは、サッカー協会直轄のエリート育成機関として2006年に開校しました。男子の1期生15人のうち、Jリーグ入りは3人。残りは大学進学と海外へのサッカー挑戦がほぼ同数となっています。
表2ルーキー人数と出場機会なしの比率
*ともに福岡大学提供
大卒頼み拍車
プロ入りが少数にとどまったのは、実力が十分でなかったというだけではありません。いまのJリーグのあり方にも、理由が隠されています。
Jリーグは、若手に実戦経験を積ませるためのサテライトリーグを2年前に廃止。レギュラーをとれない若手にとって、試合にのぞめる場はないに等しくなりました。
Jリーガーの出身母体をみると、近年は大卒頼みの現状に拍車がかかっています(表1)。Jリーグは発足時、各クラブにユースチームなどの育成機関の設置を義務付けましたが、ユース出身者は大卒、高卒に次いで3位にとどまっています。
福岡大学サッカー部監督で、全日本大学サッカー連盟の技術委員でもある乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、こんな注文をしています。
「せっかくプロ入りしても、Jリーグではプロとしての経験を積むことができない。大学がその肩代わりをしている。“自分たちの手でプロ選手を育てる”というJリーグのスタート時の志はどこへいったのか」
大学では、リーグ戦やカップ戦が毎年開かれ、選抜メンバーになれば国際大会で経験を積むこともできます。18歳からの4年間は、“若年層で最後の成長期”ともいわれる大事な時期。
長友佑都選手(インテル・ミラノ=イタリア)や、23歳以下日本代表の永井謙佑選手(名古屋)は、大学サッカーの環境で才能を伸ばしました。
各クラブで、昨年に公式戦の出場機会がなかった選手の出身母体を比較すると、大卒ルーキーがわずか
2割に満たないのにたいし、高卒が5割、ユース出身は4割以上にのぼりました(表2)。
「欧州では、若手を試合に出場させないまま『飼い殺し』にすることは、ほとんどありえない」と乾さんは語ります。
イングランドの名門アーセナルに所属する宮市亮選手(19)が好例です。
宮市選手は当初、各国のトップ選手がひしめくチーム内で出場機会に恵まれませんでした。しかし今年1月末、クラブが古豪ボルトンへの期限付き移籍を発表。宮市選手はプレーの場が広がった新天地で飛躍しています。
アーセナルからボルトンに期限付き移籍し、活躍の場が広がった宮市亮選手(ロイター)
代表成績に影
日本の若手選手の実戦不足は、各年代の代表の成績にも影を落としています。
原則23歳以下の選手でのぞむオリンピックでは、アテネ・北京大会ともに予選敗退。20歳以下のワールドカップは、2大会連続で出場を逃しています。
現状に危機感を抱いたJリーグは、「若年層プレーヤー改革プロジェクト」を09年に発足させました。これをもとに、「最強のチームで試合にのぞまなければならない」とする“ベストメンバー規定”をカップ戦などに限って緩和する策を打ち出しましたが、若手が出場できる場をさらに保障することが急がれます。
京都の監督時代にユースチームのための寮をつくるなど、育成部門に力を注いだ柱谷幸一さんは、クラブの姿勢を問います。
「移籍による獲得や大卒選手のスカウトばかりに強化費を注いでいるクラブもある。ユースなどの下部組織を生命線として位置づけ、5年後を見越した育成をしないといけない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月12日付掲載
チームが即戦力を望むのもわかりますが・・・。高卒やユース出身など「いわゆる金の卵」を育て上げるのもJリーグならではの魅力ではないでしょうかね。
広いサッカー層を作ってこそJリーグの未来はあるのではないでしょうか。
野球の場合はセ・パ合わせて12チームですが、サッカーの場合はJ1・J2で40チームにもなります。その下支えをするためにも、発想の転換が求められます。
この春、日本サッカー協会(JFA)アカデミー福島の1期生のある男子選手が、Jリーグ入りでなく、大学進学の道を選びました。
「出番がないJリーグよりも、大学で試合に出たほうがいい経験になる。そこで自信をつけてからプロに進みたい」という判断でした。すでに首都圏の大学サッカー部で、日々の練習に励んでいます。
同アカデミーは、サッカー協会直轄のエリート育成機関として2006年に開校しました。男子の1期生15人のうち、Jリーグ入りは3人。残りは大学進学と海外へのサッカー挑戦がほぼ同数となっています。
表2ルーキー人数と出場機会なしの比率
出身母体 | J1・J2人数 | 出場ゼロ選手数 |
大卒 | 62 | 12(19.4%) |
高卒 | 18 | 9(50%) |
ユース出身 | 36 | 16(44.4%) |
大卒頼み拍車
プロ入りが少数にとどまったのは、実力が十分でなかったというだけではありません。いまのJリーグのあり方にも、理由が隠されています。
Jリーグは、若手に実戦経験を積ませるためのサテライトリーグを2年前に廃止。レギュラーをとれない若手にとって、試合にのぞめる場はないに等しくなりました。
Jリーガーの出身母体をみると、近年は大卒頼みの現状に拍車がかかっています(表1)。Jリーグは発足時、各クラブにユースチームなどの育成機関の設置を義務付けましたが、ユース出身者は大卒、高卒に次いで3位にとどまっています。
福岡大学サッカー部監督で、全日本大学サッカー連盟の技術委員でもある乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、こんな注文をしています。
「せっかくプロ入りしても、Jリーグではプロとしての経験を積むことができない。大学がその肩代わりをしている。“自分たちの手でプロ選手を育てる”というJリーグのスタート時の志はどこへいったのか」
大学では、リーグ戦やカップ戦が毎年開かれ、選抜メンバーになれば国際大会で経験を積むこともできます。18歳からの4年間は、“若年層で最後の成長期”ともいわれる大事な時期。
長友佑都選手(インテル・ミラノ=イタリア)や、23歳以下日本代表の永井謙佑選手(名古屋)は、大学サッカーの環境で才能を伸ばしました。
各クラブで、昨年に公式戦の出場機会がなかった選手の出身母体を比較すると、大卒ルーキーがわずか
2割に満たないのにたいし、高卒が5割、ユース出身は4割以上にのぼりました(表2)。
「欧州では、若手を試合に出場させないまま『飼い殺し』にすることは、ほとんどありえない」と乾さんは語ります。
イングランドの名門アーセナルに所属する宮市亮選手(19)が好例です。
宮市選手は当初、各国のトップ選手がひしめくチーム内で出場機会に恵まれませんでした。しかし今年1月末、クラブが古豪ボルトンへの期限付き移籍を発表。宮市選手はプレーの場が広がった新天地で飛躍しています。
アーセナルからボルトンに期限付き移籍し、活躍の場が広がった宮市亮選手(ロイター)
代表成績に影
日本の若手選手の実戦不足は、各年代の代表の成績にも影を落としています。
原則23歳以下の選手でのぞむオリンピックでは、アテネ・北京大会ともに予選敗退。20歳以下のワールドカップは、2大会連続で出場を逃しています。
現状に危機感を抱いたJリーグは、「若年層プレーヤー改革プロジェクト」を09年に発足させました。これをもとに、「最強のチームで試合にのぞまなければならない」とする“ベストメンバー規定”をカップ戦などに限って緩和する策を打ち出しましたが、若手が出場できる場をさらに保障することが急がれます。
京都の監督時代にユースチームのための寮をつくるなど、育成部門に力を注いだ柱谷幸一さんは、クラブの姿勢を問います。
「移籍による獲得や大卒選手のスカウトばかりに強化費を注いでいるクラブもある。ユースなどの下部組織を生命線として位置づけ、5年後を見越した育成をしないといけない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月12日付掲載
チームが即戦力を望むのもわかりますが・・・。高卒やユース出身など「いわゆる金の卵」を育て上げるのもJリーグならではの魅力ではないでしょうかね。
広いサッカー層を作ってこそJリーグの未来はあるのではないでしょうか。
野球の場合はセ・パ合わせて12チームですが、サッカーの場合はJ1・J2で40チームにもなります。その下支えをするためにも、発想の転換が求められます。