20歳のJリーグ⑥ 選手の地位と権利 サッカー発展の土台
大学サッカー部で活躍した選手の進路選びに、異変が起きています。
Jリーグの誘いを受けた一部の4年生が、アマチュアの日本フットポールリーグ(JFL)の企業チームや教員の道を選ぶといいます。元日本代表の坪井慶介(浦和)、田代有三(神戸)両選手をはじめ、ロンドン五輪代表候補の永井謙佑選手(名古屋)らを送り出した福岡大学での話です。
引退後の不安
同大学サッカー部監督の乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、卒業生の選択に理解を示します。
「いまのJリーグはプロ選手の職業として魅力に欠ける。大卒だと早ければ25歳、よくても30歳で引退する。結婚して子どももできる時期なのに、その後の人生を支える蓄えが残らない」
Jリーグには現在、40クラブに千人を超す選手たちが所属しています。しかし、プロ野球よりも選手寿命が短く、毎年約1割強が戦力外通告を受けています。
プロ野球と違い、1億円プレーヤーはほとんどなく、新人の年俸の上限は480万円。Jリーグ2部(J2)では、200万~300万円の選手も少なくありません。引退しても安定した職に就くのは容易でなく、資格や学歴を得るために大学に進学するケースも増えています。
日本プロサッカー選手会(藤田俊哉会長)は、第二の人生(セカンドキャリア)を支える保障制度の実現を重視しています。現状では資金が乏しく、わずかな退団一時金しか出せません。Jリーグがセカンドキャリア支援部門を縮小したことも、背景にあります。
イングランドは1980年から退職金制度を設け、選手の教育・職業訓練に50%から100%の教育訓練費を援助するしくみがあります。年金・退職金制度の確立と支援の充実は、Jリーグ全クラブの選手会から強い要望が出されています。
心もとない保障への不安は、本分であるプレーに及ぶおそれもあります。サッカージャーナリストの大住良之さんは、「一番問題なのは、(大けがを負った場合に)保障がないとなったら、勇気をもって飛び込むことができなくなること」と、レベルの低下を心配します。
いまのJリーグは、選手の権利が脅かされかねない事態もはらんでいます。
クラブとの契約や移籍などで問題が発生した場合、現状ではJリーグの裁定委員会が判断を下します。しかし、その委員を選ぶ権限はJリーグの側が持っています。選手会は選手側の委員も選出できるよう、公平な人選を求めています。
日本プロサッカー選手会の前身であるJリーグ選手協会の元事務局長で、国際サッカー連盟(FIFA)の紛争解決にもかかわった上田浩さんは、首をかしげます。
「FIFA紛争解決室は、選手側の委員を国際プロサッカー選手会が選び、各国・地域連盟側の委員と半々で構成していた。公平性を保てというのがFIFAの設置基準。日本の裁定委員会のあり方は明らかにおかしい」
選手会が主催した被災地支援の慈善試合で、声援に応える日本代表の香川真司(中央)、内田篤人(左端)両選手ら=2011年12月23日、仙台市
労組化を決議
選手会は昨年2月末、労働組合化を決議しました。協調路線を重んじて労組化を控えてきたこれまでの立場を転換しました。
労組化の発表文書は、「主要国の選手会は労働組合であり、各国の協会・リーグと選手会が対話し、尊重し合うことにより自国の代表チームとリーグを強化し、サッカー文化を発展させている」と紹介。日本サッカー界を向上させるパートナーとして、対等な立場で話し合う必要性を強く打ち出しています。
元プロ野球選手・古田敦也さんの代理人をつとめた辻口信良弁護士(スポーツ問題研究会代表)は、労組プロ野球選手会の例をあげて歓迎します。
「プロ野球は労組化によって選手の権利意識が高まっただけでなく、球界の利益に対する自覚と主体性が高まった。労組化がいい意味の緊張感をもたらし、サッカー界もさらにリスペクト(尊敬)される存在になるのではないか」
(おわり)
(勝又秀人、呉紗穂が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月16日付掲載
プロサッカーもやっと労組ができたのですね。歓迎です。
野球と違ってプロサッカーの場合は選手寿命が短いんですね。その分、引退後は後進の養成のためにその技量を発揮していただく機会を増やして欲しいですね。
大学サッカー部で活躍した選手の進路選びに、異変が起きています。
Jリーグの誘いを受けた一部の4年生が、アマチュアの日本フットポールリーグ(JFL)の企業チームや教員の道を選ぶといいます。元日本代表の坪井慶介(浦和)、田代有三(神戸)両選手をはじめ、ロンドン五輪代表候補の永井謙佑選手(名古屋)らを送り出した福岡大学での話です。
引退後の不安
同大学サッカー部監督の乾真寛(いぬい・まさひろ)さんは、卒業生の選択に理解を示します。
「いまのJリーグはプロ選手の職業として魅力に欠ける。大卒だと早ければ25歳、よくても30歳で引退する。結婚して子どももできる時期なのに、その後の人生を支える蓄えが残らない」
Jリーグには現在、40クラブに千人を超す選手たちが所属しています。しかし、プロ野球よりも選手寿命が短く、毎年約1割強が戦力外通告を受けています。
プロ野球と違い、1億円プレーヤーはほとんどなく、新人の年俸の上限は480万円。Jリーグ2部(J2)では、200万~300万円の選手も少なくありません。引退しても安定した職に就くのは容易でなく、資格や学歴を得るために大学に進学するケースも増えています。
日本プロサッカー選手会(藤田俊哉会長)は、第二の人生(セカンドキャリア)を支える保障制度の実現を重視しています。現状では資金が乏しく、わずかな退団一時金しか出せません。Jリーグがセカンドキャリア支援部門を縮小したことも、背景にあります。
イングランドは1980年から退職金制度を設け、選手の教育・職業訓練に50%から100%の教育訓練費を援助するしくみがあります。年金・退職金制度の確立と支援の充実は、Jリーグ全クラブの選手会から強い要望が出されています。
心もとない保障への不安は、本分であるプレーに及ぶおそれもあります。サッカージャーナリストの大住良之さんは、「一番問題なのは、(大けがを負った場合に)保障がないとなったら、勇気をもって飛び込むことができなくなること」と、レベルの低下を心配します。
いまのJリーグは、選手の権利が脅かされかねない事態もはらんでいます。
クラブとの契約や移籍などで問題が発生した場合、現状ではJリーグの裁定委員会が判断を下します。しかし、その委員を選ぶ権限はJリーグの側が持っています。選手会は選手側の委員も選出できるよう、公平な人選を求めています。
日本プロサッカー選手会の前身であるJリーグ選手協会の元事務局長で、国際サッカー連盟(FIFA)の紛争解決にもかかわった上田浩さんは、首をかしげます。
「FIFA紛争解決室は、選手側の委員を国際プロサッカー選手会が選び、各国・地域連盟側の委員と半々で構成していた。公平性を保てというのがFIFAの設置基準。日本の裁定委員会のあり方は明らかにおかしい」
選手会が主催した被災地支援の慈善試合で、声援に応える日本代表の香川真司(中央)、内田篤人(左端)両選手ら=2011年12月23日、仙台市
労組化を決議
選手会は昨年2月末、労働組合化を決議しました。協調路線を重んじて労組化を控えてきたこれまでの立場を転換しました。
労組化の発表文書は、「主要国の選手会は労働組合であり、各国の協会・リーグと選手会が対話し、尊重し合うことにより自国の代表チームとリーグを強化し、サッカー文化を発展させている」と紹介。日本サッカー界を向上させるパートナーとして、対等な立場で話し合う必要性を強く打ち出しています。
元プロ野球選手・古田敦也さんの代理人をつとめた辻口信良弁護士(スポーツ問題研究会代表)は、労組プロ野球選手会の例をあげて歓迎します。
「プロ野球は労組化によって選手の権利意識が高まっただけでなく、球界の利益に対する自覚と主体性が高まった。労組化がいい意味の緊張感をもたらし、サッカー界もさらにリスペクト(尊敬)される存在になるのではないか」
(おわり)
(勝又秀人、呉紗穂が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月16日付掲載
プロサッカーもやっと労組ができたのですね。歓迎です。
野球と違ってプロサッカーの場合は選手寿命が短いんですね。その分、引退後は後進の養成のためにその技量を発揮していただく機会を増やして欲しいですね。