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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日本経済を読む 誤った経済政策強行の危険②

2013-09-01 12:36:57 | 経済・産業・中小企業対策など
日本経済を読む 誤った経済政策強行の危険②
停滞の根底に構造変化


東京工科大学教授 工藤昌宏さん

日本経済は、2013年4~6月期で3期連続のプラス成長を記録したものの、内実は、米国市場の拡大や消費税増税前の駆け込み、さらには政府による緊急経済対策で一時的にかさ上げされたものでしかなく、自立的な構造とは程遠い状態にあります。

悪化傾向を示す
そのため、これらの状況が一変すると、日本経済はただちに深刻な状態に陥ります。すでに足元では、いくつかの経済指標が悪化傾向を示しています。
鉱工業生産指数は、6月には5カ月ぶりにマイナス3・3%を示しました。自動車や電子部品といった基幹産業の落ち込みが原因です。その他、最近では、半導体工場の閉鎖、電子産業での事業撤退、化学工業部門での生産設備縮小などが相次いでいます。いずれも人員削減を伴うものです。
設備投資も、海外での積極的な姿とは裏腹に、国内では減少し続けています。設備投資の減少は、雇用問題に直結します。6月の完全失業率は、3・9%と若干低下していますが、これは円安を背景に輸出産業での求人数が増大しているためです。しかし、中身は派遣労働者、期間労働者など非正規労働者数の増大によるもので、決して雇用環境が好転しているわけではありません。4~6月期の非正規労働者数は1881万人と過去最多を記録し、雇用労働者数に占める非正規労働者の比率は36・2%に達しています(総務省)。



新たに国内工場を閉鎖する計画を発表したルネサスエレクトロニクスの本社が入る日本ビル=東京都千代田区

13カ月連続減少
また所定内賃金(基本給)も6月まで13カ月連続で減少しています。当然ながら、家計の消費支出も6月には前年同月比でマイナス0・4%となり、2カ月連続で悪化しました(内閣府)。さらに、消費者物価も、6月には前年同月比で0・4%上昇しましたが、円安によるエネルギー価格の高騰分を除くと低迷しています。物価動向を示すGDPデフレーターも、円安で輸入物価が上昇しているにもかかわらず、4~6月期には前年同期比でマイナス0・3%となり、15四半期連続のマイナスです。株価の乱高下が一向に収まらないのも、突きつめればこのような日本の経済実態の悪さが関係しています。
しかもこのような停滞状況は、一時的なものではなく構造的なものと考えられます。歴代内閣が脱デフレを掲げながら失敗し続けているのは、デフレ経済が定着し続ける経済構造に目を向けずに、的外れの政策をとり続けているためです。
つまり、企業のリストラと政府の国民いじめによる内需の停滞が、生産、投資、雇用、消費の連鎖的な縮小をもたらしており、これが製造業などの海外逃避とそれによる国内の産業構造や雇用構造の変化を伴って、日本経済を停滞に導いているということです。
また、長期の停滞は、生産、投資、雇用の連鎖自体を弱めることで、停滞をいっそう長引かせることになります。さらに、その結果、従来の経済政策も効きにくくなり、このことも停滞を長期化させる原因となっています。
このような、経済構造の変化に目を向けずに、さらに国民に負担を強制し、需要の停滞を引き起こすような誤った政策をとり続ければ、政府の思惑とは裏腹に日本経済はさらに深刻な事態に陥ることになると思います。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年8月28日付掲載


GDPの主要な部分を占める個人消費。その下支えとなる、労働者の賃金が減り続け、雇用状態が不安定化しているものでは、額面の上でGDPが上昇しても、先行きが不安です。