安倍「雇用改革」 労働現場を見る③ 心身壊すブラック企業
若者を異常な働かせ方で使いつぶし、夢や希望を奪う「ブラック企業」が横行しています。20代の中西和志さん=仮名=も過酷な労働を強いられ、体と心を壊されてしまった一人です。
大手ファストフード店でパート勤務をしていた中西さんは、契約社員として副店長になるよう要請されました。当時、複数のアルバイトを掛け持ちして働いていました。将来に不安を抱いていた中西さんは「次は正社員になれるかもしれない」と期待して要請を受けたといいます。
しかし労働条件は劣悪でした。副店長の研修はなく、管理者手当もありません。仕事を覚えるため就業時間より4時間前に出勤しました。でも、その時間は無給。月収は手取りでわずか12万円。年収は200万円に届きませんでした。
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ファストフード店などが軒を連ねる繁華街=東京都内
“言葉の暴力”
仕事でミスをしても、「おまえ副店長だろ、しっかりやれ」と責任と負担だけが押し付けられました。店が混み、忙しくて手が回らなくても「能力不足」と責められました。
数年前のことです。年末の3日間のセール期間では、前年販売実績を上回るよう要求されました。声を張り上げ商品を売り続けました。1日の労働時間は15時間に及びました。
休憩はなく食事も取れません。あいまに飲んだ水がものすごくおいしく感じました。
中西さんを精神的に追い詰めたのが“言葉の暴力”です。「やる気がない」「責任感がない」と浴びせられる言葉を、中西さんは「心がえぐられる」と表現します。それでも売り上げは前年比130%を超えました。帰り道、自然と涙があふれ、ずっと泣いていました。
副店長になってから1年3カ月。血尿が出て急性腎炎も患いました。身も心もぼろぼろになり、仕事を辞めました。「俺はなんのために生きているのか」。つらく悲しい思いがこみ上げました。
「でもやっぱり正社員は魅力的」と中西さん。「非正規では出世も見込めないし、将来像も描けない。後がないので正社員になるためにがんばってしまうんです」
この中西さんの思いに安倍「雇用改革」は、どのような答えを用意しているのでしょうか。安倍政権が狙う限定正社員制度は、労働者間に格差をつけ競争をさらに激化させ、企業の都合どおりに働ける者だけを正社員として残すものです。
声あげる恐怖
「これではもっとうつ病や自殺者が増えますよ」。中西さんの体験からの実感です。「声をあげるのは怖い。情報が流されて将来就職できなくなる不安がある。でも、大本の法律を正さない限りブラック企業はなくならない。一人ひとりの声は小さいけれど、集まれば大きくなると思う」
現在、中西さんは職業訓練校に通い介護福祉士をめざしています。社会保険労務士の資格も取って自分の経験を生かしたいとも。
「仕事に誇りを持ちたい。利益を出すためだけの歯車じゃなく、個人として尊重されるのが人間らしい働き方なんじゃないか」と静かに話しました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年9月7日付掲載
和民(ワタミ)などがブラック事業として指摘されていますが、そのほかの外食産業なども同様の状況があるのですね。マクドナルドなどのファストフード店に食べに来るのは、多くはワーキングプアや仕事に追われる労働者。そしてそこで働く人もワーキングプア。
どこか間違っていませんか?
もっと人間らしい働き方、暮らしていける賃金が求められます。
若者を異常な働かせ方で使いつぶし、夢や希望を奪う「ブラック企業」が横行しています。20代の中西和志さん=仮名=も過酷な労働を強いられ、体と心を壊されてしまった一人です。
大手ファストフード店でパート勤務をしていた中西さんは、契約社員として副店長になるよう要請されました。当時、複数のアルバイトを掛け持ちして働いていました。将来に不安を抱いていた中西さんは「次は正社員になれるかもしれない」と期待して要請を受けたといいます。
しかし労働条件は劣悪でした。副店長の研修はなく、管理者手当もありません。仕事を覚えるため就業時間より4時間前に出勤しました。でも、その時間は無給。月収は手取りでわずか12万円。年収は200万円に届きませんでした。
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ファストフード店などが軒を連ねる繁華街=東京都内
“言葉の暴力”
仕事でミスをしても、「おまえ副店長だろ、しっかりやれ」と責任と負担だけが押し付けられました。店が混み、忙しくて手が回らなくても「能力不足」と責められました。
数年前のことです。年末の3日間のセール期間では、前年販売実績を上回るよう要求されました。声を張り上げ商品を売り続けました。1日の労働時間は15時間に及びました。
休憩はなく食事も取れません。あいまに飲んだ水がものすごくおいしく感じました。
中西さんを精神的に追い詰めたのが“言葉の暴力”です。「やる気がない」「責任感がない」と浴びせられる言葉を、中西さんは「心がえぐられる」と表現します。それでも売り上げは前年比130%を超えました。帰り道、自然と涙があふれ、ずっと泣いていました。
副店長になってから1年3カ月。血尿が出て急性腎炎も患いました。身も心もぼろぼろになり、仕事を辞めました。「俺はなんのために生きているのか」。つらく悲しい思いがこみ上げました。
「でもやっぱり正社員は魅力的」と中西さん。「非正規では出世も見込めないし、将来像も描けない。後がないので正社員になるためにがんばってしまうんです」
この中西さんの思いに安倍「雇用改革」は、どのような答えを用意しているのでしょうか。安倍政権が狙う限定正社員制度は、労働者間に格差をつけ競争をさらに激化させ、企業の都合どおりに働ける者だけを正社員として残すものです。
声あげる恐怖
「これではもっとうつ病や自殺者が増えますよ」。中西さんの体験からの実感です。「声をあげるのは怖い。情報が流されて将来就職できなくなる不安がある。でも、大本の法律を正さない限りブラック企業はなくならない。一人ひとりの声は小さいけれど、集まれば大きくなると思う」
現在、中西さんは職業訓練校に通い介護福祉士をめざしています。社会保険労務士の資格も取って自分の経験を生かしたいとも。
「仕事に誇りを持ちたい。利益を出すためだけの歯車じゃなく、個人として尊重されるのが人間らしい働き方なんじゃないか」と静かに話しました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年9月7日付掲載
和民(ワタミ)などがブラック事業として指摘されていますが、そのほかの外食産業なども同様の状況があるのですね。マクドナルドなどのファストフード店に食べに来るのは、多くはワーキングプアや仕事に追われる労働者。そしてそこで働く人もワーキングプア。
どこか間違っていませんか?
もっと人間らしい働き方、暮らしていける賃金が求められます。