米軍展開のフィリピン③ 解決策は平和的交渉
フィリピンは1月、中国を相手に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所への提訴に踏み切りました。中国が主張する南シナ海のほぼ全域での管轄権が無効なことを確認し、フィリピンの海洋活動に対する妨害活動を中止させるよう求めています。オランダのハーグで進行中の裁判は、判決までに3~4年かかる見通しです。
提訴に踏み切った理由は「平和的な交渉で中国と海洋問題で合意するためのほとんどの政治的・外交的手段を使い果たした」(デルロサリオ外相)。
南シナ海の島しょの領有権を主張している国のうち、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイは東南アジア諸国連合(ASEAN)の構成国。ASEANと中国は2002年に「南シナ海行動宣言(DOC)」を署名し、南シナ海の平和維持に努力すること、領有権・管轄権の紛争は直接の当事国同士の交渉で平和的に解決することに合意しました。
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「南シナ海行動規範」策定に向けた初協議後、記者会見する中国の劉振民外務次官(右)とタイのシーハサック外務次官=15日、中国江蘇省蘇州(小林拓也撮影)
公式協議を開く
今月14、15の両日にはDOCを格上げして法的拘束力のある文書にするために、ASEANと中国が初めての公式協議を中国の江蘇省蘇州で開きました。
この協議でフィリピンのガルシア外務次官は「とりわけ武力と強制の不行使という行動宣言の原則を尊重すべきだ」と強調しました。
行動規範の策定協議のように、ASEANとして団結すれば「政治的・外交的手段」はあるのではないか。中国を念頭に置いた米軍増強計画はASEANの努力に否定的な影響を与えるのではないか―。
こうした疑問をカランダン比大統領秘書官に尋ねると、「米軍増強は、あくまでも自国を守る『最低限の信頼できる防衛力』という基本概念に基づくものだ」と強調した上で、こう付け加えました
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リム教授(面川誠撮影)
友好関係深める
「南シナ海の問題だけがフィリピンと中国の関係を決めるのではない。他の多くの分野では良好な関係だ。友好関係を深めたいという方針に変わりない」
ASEANについては、「われわれはASEANの中心的役割を重視する。団結したASEANが中国に対応できる。中国もベトナムもフィリピンも、誰も紛争が武力衝突になることを望んでいない。外交的努力を続ける」と言明しました。
中国研究者として知られるアテネオ・デ・マニラ大学のリム教授は、「フィリピンは米国の『アジア回帰』政策を後ろ盾にして、中国に強い態度に出るようになった。岩礁のために戦争も辞さないという誤解を中国にも、フィリピン国民にも与えかねない」と懸念します。
リム氏は「解決策は戦争ではなく平和的交渉だ。外国の軍事力への依存は、交渉に臨む戦略を練る力すら奪ってしまう」と警告しました。
(マニラ=面川誠)(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年9月20日付掲載
一方で裁判に訴えても、やはり一方では外交交渉をしているんですね。「紛争を戦争に発展させない」というASEANの原則はASEANの国同士の間だけで有効と言われます。しかし、その当事国の一方にASEANの国が含まれている場合は、片方がASEANの国でなくてもASEAN原則を尊重するとも言われます。
リム氏の警告は当然だと思います。
フィリピンは1月、中国を相手に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所への提訴に踏み切りました。中国が主張する南シナ海のほぼ全域での管轄権が無効なことを確認し、フィリピンの海洋活動に対する妨害活動を中止させるよう求めています。オランダのハーグで進行中の裁判は、判決までに3~4年かかる見通しです。
提訴に踏み切った理由は「平和的な交渉で中国と海洋問題で合意するためのほとんどの政治的・外交的手段を使い果たした」(デルロサリオ外相)。
南シナ海の島しょの領有権を主張している国のうち、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイは東南アジア諸国連合(ASEAN)の構成国。ASEANと中国は2002年に「南シナ海行動宣言(DOC)」を署名し、南シナ海の平和維持に努力すること、領有権・管轄権の紛争は直接の当事国同士の交渉で平和的に解決することに合意しました。
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「南シナ海行動規範」策定に向けた初協議後、記者会見する中国の劉振民外務次官(右)とタイのシーハサック外務次官=15日、中国江蘇省蘇州(小林拓也撮影)
公式協議を開く
今月14、15の両日にはDOCを格上げして法的拘束力のある文書にするために、ASEANと中国が初めての公式協議を中国の江蘇省蘇州で開きました。
この協議でフィリピンのガルシア外務次官は「とりわけ武力と強制の不行使という行動宣言の原則を尊重すべきだ」と強調しました。
行動規範の策定協議のように、ASEANとして団結すれば「政治的・外交的手段」はあるのではないか。中国を念頭に置いた米軍増強計画はASEANの努力に否定的な影響を与えるのではないか―。
こうした疑問をカランダン比大統領秘書官に尋ねると、「米軍増強は、あくまでも自国を守る『最低限の信頼できる防衛力』という基本概念に基づくものだ」と強調した上で、こう付け加えました
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リム教授(面川誠撮影)
友好関係深める
「南シナ海の問題だけがフィリピンと中国の関係を決めるのではない。他の多くの分野では良好な関係だ。友好関係を深めたいという方針に変わりない」
ASEANについては、「われわれはASEANの中心的役割を重視する。団結したASEANが中国に対応できる。中国もベトナムもフィリピンも、誰も紛争が武力衝突になることを望んでいない。外交的努力を続ける」と言明しました。
中国研究者として知られるアテネオ・デ・マニラ大学のリム教授は、「フィリピンは米国の『アジア回帰』政策を後ろ盾にして、中国に強い態度に出るようになった。岩礁のために戦争も辞さないという誤解を中国にも、フィリピン国民にも与えかねない」と懸念します。
リム氏は「解決策は戦争ではなく平和的交渉だ。外国の軍事力への依存は、交渉に臨む戦略を練る力すら奪ってしまう」と警告しました。
(マニラ=面川誠)(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年9月20日付掲載
一方で裁判に訴えても、やはり一方では外交交渉をしているんですね。「紛争を戦争に発展させない」というASEANの原則はASEANの国同士の間だけで有効と言われます。しかし、その当事国の一方にASEANの国が含まれている場合は、片方がASEANの国でなくてもASEAN原則を尊重するとも言われます。
リム氏の警告は当然だと思います。