きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

IT社会の新たな格差② 「勝者総取り」の世界

2019-12-02 08:13:55 | 経済・産業・中小企業対策など
IT社会の新たな格差② 「勝者総取り」の世界
21世紀のデジタル企業は、20世紀型のものづくり企業と異なり、巨額の設備投資や増産コストが不要な身軽な巨人です。生み出す価値は、検索サービスのように、利用者が多いほど情報が蓄積され、システムや利便性が高まる特性があります。データなど無形資産を富の源泉とする経済では、シェアを押さえた勝者が市場の果実を総取りし、地球規模で寡占が進みます。例えば、100万人の情報を持つ小さな会社が多くあるより、10億人から集めた巨大なデータベースのほうが、より有能なアルゴリズム(計算方法)を得ることになります。

55%から73%へ
世界のインターネット企業309社の売上高を調べると、フェイスブックやテンセント(騰訊控股)など上位5社のシェアは、2008年度の55%から18年度には73%へと大きく拡大しています。デジタル広告市場のシェアは、フェイスブックとグーグルで世界の6割弱に及びます。
国際通貨基金(IMF)の調査では、2000年以降、ほとんどの企業の収益が横ばいの中、上位1割の特定企業は収益を3割以上伸ばしています。まさに、デジタルエコノミーは「勝者総取り」の世界です。



アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルのロゴ(ロイター)

個人情報が丸裸
一方、個人デーダの適切な取り扱い、データの囲い込みによる市場支配力の強化など、懸念も大きくなっています。
キャッシュレス決済では、スマホが財布になります。便利さを享受する一方で、私たち利用者は年齢、性別、どこで何をいくらで買ったかなどのデータを企業に渡しています。財布の中身だけではありません。スマホの地図機能を使えば、移動経緯が、写真を撮れば位置と行動が、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では自分の思想信条が企業に流れてしまいます。あらゆる個人情報が結びつけられ、いつの間にか個人が「丸裸」にされるのです。
中国ではキャッシュレスでの支払い状況に加えて、AI(人工知能)が学歴・職歴・資産・交友関係などを評価してスコアをつける「芝麻(ゴマ)信用」(セサミ・クレジット)という社会信用システムが急速に広がり、大きな存在になっています。
スコアが高ければ、優待サービス、融資枠の拡大、金利や敷金の減免など、さまざまな恩恵にあずかれます。就職や婚活サイトにも活用され、スコアの高低が人生に決定的な影響力を持つ場合も出ています。

下がる“スコア”
信用スコアの格付けにより、就職に失敗して低賃金の仕事を転々とすれば、さらにスコアが下がってしまいます。このシステムの構造上、一度この連鎖におちいると、抜け出しにくく、社会の底辺で生きることを余儀なくされてしまいます。
日本でも、キャッシュレス化の進展と合わせて、この信用スコアを活用する企業が現れています。巨大企業の保有する個人情報やビッグデータは使い方を間違えれば、大きな破壊力となりかねません。さらに、国家権力と結合・癒着した場合には、監視社会化の危険性も指摘されています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年11月28日付掲載


IT企業は、ますます寡占化がすすんでいる。そしてそのIT企業に、個人の情報がビックデータとして集積される。年齢や性別はもとより、どこで何を買ったか、どのような情報を検索したか、何時何処を移動したか…。その中で、顧客も選別されていく。