「資産所得倍増」を考える② 金利収入奪ったのは誰?
岸田文雄政権の「新しい資本主義実行計画」は、日本の個人金融資産2000兆円の半分以上が預金や現金で保有されていることを指摘しています。資産に占める株式などの比率が日本より高いアメリカでは20年間で家計金融資産が3倍に、イギリスでは2・3倍になっているのに対して、日本では1・4倍にしかなっていないと書いています。
あたかも、日本の家計が豊かにならないのは、日本の国民が株式投資に熱心でないからだと言わんばかりです。とんでもない言いがかりです。
そもそも、金融資産は実体経済が成長してこそ増えるものです。経済が成長しないのに金融資産だけが増えたら、それこそバブルにほかなりません。過去20年をとってみると、日本の国内総生産(GDP)がほぼ横ばいなのに対して、アメリカは2倍強、イギリスも2倍近くにGDPが増えています。アメリカやイギリスで家計金融資産が日本より増えているのは、ある意味で当たり前のことです。新自由主義の経済政策で日本を「成長しない国」にしてしまった自民党政治の責任が問われます。
日本銀行本店=東京都中央区
格差広がる米国
アメリカでは、GDPの増加以上に金融資産が増えているのは事実です。しかし、それは超富裕層の資産が急増したことが影響しています。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が発表したアメリカの富の分配状況に関するデータによれば、アメリカの家計部門の純資産は過去20年で98兆ドルも増えていますが、そのうち72兆ドルは収入上位20%の層、うち30兆ドルは上位1%の人が占めています。下位80%の層の純資産は2・6倍にしか増えていませんが、上位1%は4・8倍に増えています。アメリカのように金融資産を増やせという岸田氏は、日本でもアメリカのように格差が拡大した方がいいというのでしょうか。
実は、日本の家計の資産所得は、昔は今よりずっと多かったのです。国民経済計算の統計データによれば、家計部門(個人事業を含む)の「財産所得」は、直近の2020年には26・3兆円しかありませんが、1991年には62・6兆円でした。そのころも株式投資の比重は小さく、家計資産の多くは預貯金でした。それにもかかわらず資産所得が多かったのは、預貯金の利子が今よりずっと高かったからです。
異常な金融緩和
90年代には、定期預金なら年5%以上の利子がつくこともありました。今は、普通預金では0・001%、定期預金でも0・002%しかつきません。1000万円を定期預金にしても利子は年200円(税引き後160円)です。時間外に他行のATMを使って引き出せば、利子より手数料の方が多くなってしまいます。
こんなに金利が低くなったのは、長期にわたって「成長しない国」になってしまったことに加えて、アベノミクスのもとでの「異次元金融緩和」で異常な超低金利政策が続けられてきたからです。低金利で企業は金利負担が減り、株価が上がって富裕層は恩恵を受けました。その一方で、家計は金利収入がほとんど消え去り、所得が大きく奪われたのです。
「新しい資本主義実行計画」の最後には、「経済財政運営の枠組みについては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢の枠組みを堅持する」と、アベノミクスの「3本の矢」を堅持することが明記されています。超低金利で家計から資産所得を奪ってきた政策路線の「堅持」をうたいながら、どうして「資産所得倍増」などと恥ずかしげもなく語れるのでしょうか。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月16日付掲載
そもそも、金融資産は実体経済が成長してこそ増えるもの。経済が成長しないのに金融資産だけが増えたら、それこそバブルにほかなりません。過去20年をとってみると、日本の国内総生産(GDP)がほぼ横ばいなのに対して、アメリカは2倍強、イギリスも2倍近くにGDPが増えています。アメリカやイギリスで家計金融資産が日本より増えているのは、ある意味で当たり前のこと。
実は、日本の家計の資産所得は、昔は今よりずっと多かった。国民経済計算の統計データによれば、家計部門(個人事業を含む)の「財産所得」は、直近の2020年には26・3兆円しかありませんが、1991年には62・6兆円。そのころも株式投資の比重は小さく、家計資産の多くは預貯金。それにもかかわらず資産所得が多かったのは、預貯金の利子が今よりずっと高かったから。
僕も、1990年代初頭に200万円定額預金しました。それが満期になった2000年代初頭。地区委員会の「しんぶん赤旗」業務を管理する機関紙ソフトが導入されたころ。
地区委員会でパソコンを購入するとともに、プライベートでもノートPCを購入。満期になった定額預金の金利がなんと、120万円余りなっていてビックリ。
300万円を引き続き定額預金するとともに、20万円でノートパソコンを購入しました。
岸田文雄政権の「新しい資本主義実行計画」は、日本の個人金融資産2000兆円の半分以上が預金や現金で保有されていることを指摘しています。資産に占める株式などの比率が日本より高いアメリカでは20年間で家計金融資産が3倍に、イギリスでは2・3倍になっているのに対して、日本では1・4倍にしかなっていないと書いています。
あたかも、日本の家計が豊かにならないのは、日本の国民が株式投資に熱心でないからだと言わんばかりです。とんでもない言いがかりです。
そもそも、金融資産は実体経済が成長してこそ増えるものです。経済が成長しないのに金融資産だけが増えたら、それこそバブルにほかなりません。過去20年をとってみると、日本の国内総生産(GDP)がほぼ横ばいなのに対して、アメリカは2倍強、イギリスも2倍近くにGDPが増えています。アメリカやイギリスで家計金融資産が日本より増えているのは、ある意味で当たり前のことです。新自由主義の経済政策で日本を「成長しない国」にしてしまった自民党政治の責任が問われます。
日本銀行本店=東京都中央区
格差広がる米国
アメリカでは、GDPの増加以上に金融資産が増えているのは事実です。しかし、それは超富裕層の資産が急増したことが影響しています。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が発表したアメリカの富の分配状況に関するデータによれば、アメリカの家計部門の純資産は過去20年で98兆ドルも増えていますが、そのうち72兆ドルは収入上位20%の層、うち30兆ドルは上位1%の人が占めています。下位80%の層の純資産は2・6倍にしか増えていませんが、上位1%は4・8倍に増えています。アメリカのように金融資産を増やせという岸田氏は、日本でもアメリカのように格差が拡大した方がいいというのでしょうか。
実は、日本の家計の資産所得は、昔は今よりずっと多かったのです。国民経済計算の統計データによれば、家計部門(個人事業を含む)の「財産所得」は、直近の2020年には26・3兆円しかありませんが、1991年には62・6兆円でした。そのころも株式投資の比重は小さく、家計資産の多くは預貯金でした。それにもかかわらず資産所得が多かったのは、預貯金の利子が今よりずっと高かったからです。
異常な金融緩和
90年代には、定期預金なら年5%以上の利子がつくこともありました。今は、普通預金では0・001%、定期預金でも0・002%しかつきません。1000万円を定期預金にしても利子は年200円(税引き後160円)です。時間外に他行のATMを使って引き出せば、利子より手数料の方が多くなってしまいます。
こんなに金利が低くなったのは、長期にわたって「成長しない国」になってしまったことに加えて、アベノミクスのもとでの「異次元金融緩和」で異常な超低金利政策が続けられてきたからです。低金利で企業は金利負担が減り、株価が上がって富裕層は恩恵を受けました。その一方で、家計は金利収入がほとんど消え去り、所得が大きく奪われたのです。
「新しい資本主義実行計画」の最後には、「経済財政運営の枠組みについては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢の枠組みを堅持する」と、アベノミクスの「3本の矢」を堅持することが明記されています。超低金利で家計から資産所得を奪ってきた政策路線の「堅持」をうたいながら、どうして「資産所得倍増」などと恥ずかしげもなく語れるのでしょうか。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年6月16日付掲載
そもそも、金融資産は実体経済が成長してこそ増えるもの。経済が成長しないのに金融資産だけが増えたら、それこそバブルにほかなりません。過去20年をとってみると、日本の国内総生産(GDP)がほぼ横ばいなのに対して、アメリカは2倍強、イギリスも2倍近くにGDPが増えています。アメリカやイギリスで家計金融資産が日本より増えているのは、ある意味で当たり前のこと。
実は、日本の家計の資産所得は、昔は今よりずっと多かった。国民経済計算の統計データによれば、家計部門(個人事業を含む)の「財産所得」は、直近の2020年には26・3兆円しかありませんが、1991年には62・6兆円。そのころも株式投資の比重は小さく、家計資産の多くは預貯金。それにもかかわらず資産所得が多かったのは、預貯金の利子が今よりずっと高かったから。
僕も、1990年代初頭に200万円定額預金しました。それが満期になった2000年代初頭。地区委員会の「しんぶん赤旗」業務を管理する機関紙ソフトが導入されたころ。
地区委員会でパソコンを購入するとともに、プライベートでもノートPCを購入。満期になった定額預金の金利がなんと、120万円余りなっていてビックリ。
300万円を引き続き定額預金するとともに、20万円でノートパソコンを購入しました。
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