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納税者の権利 世界と日本① “客”として保護 最低基準

2023-04-28 07:11:34 | 予算・税金・消費税・社会保障など
納税者の権利 世界と日本① “客”として保護 最低基準
日本には納税者の権利を保障する法律や制度がなく、人権を無視した強権的な税務調査や徴収が問題となっています。さらに今国会で、納税者が椙互に行う税務相談に国が介入できる「税務相談停止命令制度」創設を盛り込んだ税理士法の改悪が自民、公明などの賛成多数で強行成立されました。納税者の権利保護をどう実現すべきか、世界の事情に詳しい、立命館大学法学部の望月爾(もちつき・ちか)教授(税法)に聞きました。
(大串昌義)

立命館大学教授 望月爾さんに聞く


(本人提供)
もちつき・ちか 静岡県生まれ。1989年慶応大学法学部卒。97年静岡大学大学院法学研究科修了。静岡産業大学講師、立命館大学助教授、准教授を経て2011年から現職。著作に、湖東京至編『世界の納税者権利憲章』(共著・中小商工業研究所)、上村雄彦編『グローバル・タックスの理論と実践-主権国家体制の限界を超えて』(共著・日本評論社)。

―世界各国の税務行政は、日本のように強権的な税務調査や徴収を行っているのでしょうか。
以前はそうでした。1970年代オイルショックなどで経済状況が悪化する中、各国の財政がひっ迫し、徴税が強化されました。欧米でも強権的な税務調査や財産の差し押さえが社会問題になりました。米国では、ロジェスキー事件のような税務職員の職権乱用が議会で取り上げられました。

「サービス」提供
それをふまえて80年代後半以降、欧米各国を中心に税務調査や徴収における納税者の権利を保護する納税者権利憲章の制定が進みました。憲章制定の動きは2000年代にかけて、アジア、中南米、アフリカ諸国に広がりました。
それを受けて、税務行政は、権力的な作用から、納税者の自発的協力に基づき、納税者を「お客さま」と位置づけ、税に関する専門的な支援など「サービス」を提供する方向に進んでいるのが世界の潮流です。
米国は1988~98年に第1~3次納税者権利保護章典を制定しました。税務行政を納税者サービスにするために内国歳入庁(IRS、日本の国税庁に椙当)の組織を抜本改革しました。2014年には「10の権利」からなる新たな(第4次)納税者権利章典を公表し、翌15年に内国歳入法に法定しました。英国は1986年に納税者憲章を制定し、91年にお客様サービス方針を公表、2009年に新たな憲章を制定しその後も更新しています。韓国も1997年に納税者権利憲章を導入し、台湾は2016年に納税者権利保護法を制定しています。
米国をはじめカナダや韓国などでは、税務当局から独立した納税者権利擁護官や納税者オンブズパーソンによる納税者の権利保護のための救済制度が整備されています。
主要7力国(G7)のうち日本とドイツだけが納税者権利憲章を持っていません。そのドイツも租税通則法(AO)に納税者の権利保護の諸規定がおかれています。


■主要各国の納税者権利憲章の制定状況
納税者の権利保護に着手し始めた順
フランス1975税務調蛮における憲章租税手続法(81)
納税者憲章(05)、改定(20)
ドイツ1977租税通則法(聴聞権、税務調査における事前通知などを整備。納税者のデータ保護規定も含む)
カナダ1985納税者権利宣言納税者権利章典、納税者オンブズマン(パーソン)設置(07)
イギリス1986納税者憲章納税者憲章改定(91)
お客様サービス公約(06)
財政法に基づく「あなたの憲章」(09、16)
サービス重視のHMRC(歳入関税庁)憲章に更新(20)
ベルギー1986納税者憲章
アメリカ1986アリゾナ州をはじめ各州も納税者権利章典を制定第1次納税者権利章典(88)
IRSが「納税者としてのあなたの権利」を発行(88)
第2次納税者権利章典(96)
第3次納税者権利章典、lRS再編改革法によるlRSの組織改革(98)
第4次納税者権利章典(14)
内国歳入法に「10の権利」を法定(15)
オーストラリア1989国税庁サービス方針納税者権利憲章(97)
納税者憲章(10)、改定(18)
インド1990納税者権利宣言納税者権利憲章(90)
ニュージーランド1992お客様(納税者)憲章
韓国1996国税基本法に「納税者の権利」納税者権利憲章(97)、納税者の権利意識の高揚を受けて改定(07、18)
納税者保護官の設置(10)
南アフリカ1997納税者権利憲章二つの納税者権利憲章(12、18)
スペイン1998納税者権利保護法
イタリア2000納税者権利保護法
メキシコ2005 連邦納税者権利憲章
台湾2009税務調査徴収法に「納税義務者権利の保護」納税者権利保護法(16)
納税者権利保護官の設置(16)
(望月爾立命館大学教授の講演資料を基に作成)


システムを構築
―主要国で納税者権利憲章がないのは日本だけなのですね。国際機関は納税者の権利をどう保障していますか。

経済協力開発機構(OECD)は1990年、「納税者の権利と義務」を報告書として公表しました。2003年には納税者権利憲章のモデルを含む実務指針を示し、米・英・豪・アフリカ諸国などの憲章に大きな影響を与えてきました。
欧州連合(EU)では、EU各国の憲法や租税手続法、納税者権利憲章による保護に加え、司法機関による審査、納税者の権利保護を国際標準にする「EU納税者法のためのモデルのガイドライン」(16年)の公表などによって、国際的な納税者の権利保護のシステムが構築されています。
国際学会の国際租税協会(IFA)は15年のスイス・バーゼル総会の報告で、納税者権利憲章の制定を「最低基準」としています。
15年、国際的な税務専門家3団体が共同で世界4ーカ国の調査結果に基づき、「モデル納税者権利憲章」を公表しました。
それに先立ち3団体の一つ、アジア・オセアニア・タックスコンサルタント協会(AOTCA)の大阪総会でモデル憲章の最終案が公表されました。総会を主催したのは、同団体の主要メンバーの日本税理士会連合会でしたが、その後このモデル憲章の話は一切聞きません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月27日付掲載


欧米でもかつては職権乱用による税金の徴収が行われていた。しかしそれが議会などで問題になり、欧米各国を中心に税務調査や徴収における納税者の権利を保護する納税者権利憲章の制定が進む。憲章制定の動きは2000年代にかけて、アジア、中南米、アフリカ諸国に広がる。
それを受けて、税務行政は、権力的な作用から、納税者の自発的協力に基づき、納税者を「お客さま」と位置づけ、税に関する専門的な支援など「サービス」を提供する方向に進んでいるのが世界の潮流。
国際学会の国際租税協会(IFA)は15年のスイス・バーゼル総会の報告で、納税者権利憲章の制定を「最低基準」と。
税理士にお任せするのではなくって、納税者みずからが計算して、課税されるべきものは残らず出して、控除されるべきものも残らず出す。
税務署はそれをサポートすべきですね。

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