資本主義の現在と未来 気候変動⑤ 大手電力が価格つり上げ 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く
―原発や石炭火発に固執する大手電力会社が、日本の卸電力市場をゆがめていることも問題になっています。
日本の電力市場の約7割の電力は、東京電力や関西電力など従来の大手電力が供給しています。発電会社と小売り会社が取引する卸電力市場で、大手電力会社が圧倒的な市場支配力を背景に不当な価格操作を行っていた疑いが出ています。
2020年12月~21年1月には、卸電力市場の電力が急激に減少して市場価格が10倍に暴騰し、大問題になりました。新電力会社の契約者の電気料金が跳ね上がるとともに、多くの新電力会社も電力の調達価格が販売価格を上回る逆ザヤに陥り、撤退・倒産が相次ぎました。一方、価格相場が上がったことで大手電力会社は大もうけし、1兆5千億円以上が新電力から大手電力に流れたと言われています。
カルテルを結ぶ
この問題をみるうえで、日本の大手電力会社の発電部門と送配電部門の経営分離の不徹底さを見ておく必要があります。
他の国では、送配電会社は法的にも経営的にも発電会社から独立しています。日本も法的には分離していますが、かつての大手電力管内ごとに送配電会社が置かれ、経営分離が不十分な実態も見られます。
関電、中部電力、中国電力、九州電力が17~18年にかけて電力カルテルを結んでいたとして、23年3月に公正取引委員会は関電を除く3社に合計1010億円の課徴金納付命令を行いました。関電は、公取委の立ち入り検査前に自己申告したため、課徴金を免れました。公取委はこのなかで、卸電力市場への供給量を絞り込むことで市場価格を引き上げ、新電力の競争力を低下させることを企図した者がいたと批判しています。
関電など少なくとも大手電力6社が、送配電会社などが保有する新電力と契約している顧客情報を違法に入手し閲覧していたことも明らかになっています。
わたしは新電力会社から再エネ100%電力を購入する契約を結んでいますが、関電から何回も営業の電話がかかってきました。関電は関西電力送配電会社が漏えいした名簿を使って、先述のような新電力会社の電気料金高騰も利用し、関電の方が電力料金が安いなどと営業をかけ、新電力から顧客を奪っていたのです。
過剰に買い取り
関電は、23年12月には、市場価格の高騰を招いたとして経済産業省から業務改善勧告を受けています。22~23年に複数回にわたり卸電力市場で過剰に電力を買い取っていたのです。過剰買い取りについて関電は発注ミスと言い訳していますが、到底信じられません。
―帝国データバンクの調査によれば24年3月までに撤退・倒産した新電力会社は累計119社に上り、21年4月に登録のあった706社の2割弱に相当するといいます。
新電力会社の経営を弱めるために大手電力会社が市場価格を操作していることについて、監督官庁はもっと監視を強化すべきですし、送配電会社は全国で東西2社程度に統合し、不正の温床となっている発電会社と送配電会社の癒着を断ち切るための経営分離を徹底すべきです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月7日付掲載
公取委は、卸電力市場への供給量を絞り込むことで市場価格を引き上げ、新電力の競争力を低下させることを企図した者がいたと批判。
関電など少なくとも大手電力6社が、送配電会社などが保有する新電力と契約している顧客情報を違法に入手し閲覧していたことも明らかに。
新電力会社の経営を弱めるために大手電力会社が市場価格を操作していることについて、監督官庁はもっと監視を強化すべきですし、送配電会社は全国で東西2社程度に統合し、不正の温床となっている発電会社と送配電会社の癒着を断ち切るための経営分離を徹底すべき。
―原発や石炭火発に固執する大手電力会社が、日本の卸電力市場をゆがめていることも問題になっています。
日本の電力市場の約7割の電力は、東京電力や関西電力など従来の大手電力が供給しています。発電会社と小売り会社が取引する卸電力市場で、大手電力会社が圧倒的な市場支配力を背景に不当な価格操作を行っていた疑いが出ています。
2020年12月~21年1月には、卸電力市場の電力が急激に減少して市場価格が10倍に暴騰し、大問題になりました。新電力会社の契約者の電気料金が跳ね上がるとともに、多くの新電力会社も電力の調達価格が販売価格を上回る逆ザヤに陥り、撤退・倒産が相次ぎました。一方、価格相場が上がったことで大手電力会社は大もうけし、1兆5千億円以上が新電力から大手電力に流れたと言われています。
カルテルを結ぶ
この問題をみるうえで、日本の大手電力会社の発電部門と送配電部門の経営分離の不徹底さを見ておく必要があります。
他の国では、送配電会社は法的にも経営的にも発電会社から独立しています。日本も法的には分離していますが、かつての大手電力管内ごとに送配電会社が置かれ、経営分離が不十分な実態も見られます。
関電、中部電力、中国電力、九州電力が17~18年にかけて電力カルテルを結んでいたとして、23年3月に公正取引委員会は関電を除く3社に合計1010億円の課徴金納付命令を行いました。関電は、公取委の立ち入り検査前に自己申告したため、課徴金を免れました。公取委はこのなかで、卸電力市場への供給量を絞り込むことで市場価格を引き上げ、新電力の競争力を低下させることを企図した者がいたと批判しています。
関電など少なくとも大手電力6社が、送配電会社などが保有する新電力と契約している顧客情報を違法に入手し閲覧していたことも明らかになっています。
わたしは新電力会社から再エネ100%電力を購入する契約を結んでいますが、関電から何回も営業の電話がかかってきました。関電は関西電力送配電会社が漏えいした名簿を使って、先述のような新電力会社の電気料金高騰も利用し、関電の方が電力料金が安いなどと営業をかけ、新電力から顧客を奪っていたのです。
過剰に買い取り
関電は、23年12月には、市場価格の高騰を招いたとして経済産業省から業務改善勧告を受けています。22~23年に複数回にわたり卸電力市場で過剰に電力を買い取っていたのです。過剰買い取りについて関電は発注ミスと言い訳していますが、到底信じられません。
―帝国データバンクの調査によれば24年3月までに撤退・倒産した新電力会社は累計119社に上り、21年4月に登録のあった706社の2割弱に相当するといいます。
新電力会社の経営を弱めるために大手電力会社が市場価格を操作していることについて、監督官庁はもっと監視を強化すべきですし、送配電会社は全国で東西2社程度に統合し、不正の温床となっている発電会社と送配電会社の癒着を断ち切るための経営分離を徹底すべきです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月7日付掲載
公取委は、卸電力市場への供給量を絞り込むことで市場価格を引き上げ、新電力の競争力を低下させることを企図した者がいたと批判。
関電など少なくとも大手電力6社が、送配電会社などが保有する新電力と契約している顧客情報を違法に入手し閲覧していたことも明らかに。
新電力会社の経営を弱めるために大手電力会社が市場価格を操作していることについて、監督官庁はもっと監視を強化すべきですし、送配電会社は全国で東西2社程度に統合し、不正の温床となっている発電会社と送配電会社の癒着を断ち切るための経営分離を徹底すべき。