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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資本主義の現在と未来 気候変動⑥ 市民・地域の主導でこそ 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

2024-09-14 08:20:45 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
資本主義の現在と未来 気候変動⑥ 市民・地域の主導でこそ 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く

―日本では自然や地域に悪影響を与える一部の大規模太陽光発電所などが、再生可能エネルギーの印象を悪くしています。
問題を起こしているのは大企業や地域外の企業による利益優先の再エネ事業です。一方、市民や地域主導で再エネを普及してきたデンマークやドイツでは、再エネに世論の高い支持があります。
デンマークは世界で最も早く風力発電を導入した国ですが、けん引したのは市民と農民でした。1970年代の石油危機を受け政府が北海油田の開発に乗り出すなか、市民や農民は風車の伝統に着目し、風力発電に取り組みだします。
風力発電機の開発を農業機械メーカーのベスタス社に依頼し、小規模な風力発電から出発。ベスタス社は、いまでは世界トップの風力発電機メーカーです。さらに風力発電機所有者協会を78年に立ち上げ、風力発電の設置補助金や電力買い取り制度の創設を政府に働きかけ、実現していきます。



ミドルグルン風力発電所(同発電所ホームページから)

ドイツにも波及
こうした取り組みが隣国ドイツにも広がり、2000年には電力買い取り制度を発展させた、再エネを一定価格で一定期間買い取る固定価格買い取り制度が誕生します。
再エネ普及における市民と地域主導の重要性は、再エネの特性自体にあります。石炭や石油などの地下資源は有限かつ特定の場所に集中して存在します。日本など資源のない国は輸入に依存せざるを得ません。
一方、再エネはほぼ無限にあり、世界中どこにでも存在します。ただしエネルギー密度は低く少量ずつ分散して存在します。地域資源を活用する小規模分散型の生産手段だからこそ、市民や自治体などの地域主導の普及に適しているのです。
実は、デンマークでも風力発電で収益性が見込めるようになると企業が参入してきます。ところが地域住民の意見が反映されない企業主導の事業には、やはり住民から反対運動が起こるのです。所有者協会も企業主導の風力発電所建設は不適切だと主張し、その結果、風力発電所の設備容量の20%以上は地域住民所有を義務づける法律が08年に制定されます。
デンマークは電力の半分以上を風力発電で賄っていますが、現在でも陸上風力発電所の約4分の3は市民所有です。
洋上風力発電でも、首都コペンハーゲンの沖合に並ぶミドルグルン風力発電所の20基のうち10基は電力会社が、後の10基は沿岸住民8650人が出資し、所有しています。風力発電への出資は銀行の定期預金より有利なので、市民は出資を自分たちの権利だと考えています。

住民に利益還元
21年には、出資の有無に関係なく再エネ発電所から一定の距離内の全居住者に売電収入の一部を支給する仕組みができました。出資できない住民にも利益を還元する仕組みです。支給額は平均すると風力発電で年間13万円程度、太陽光発電で5万円程度になるとされています。

―再エネが低所得者のくらしを底上げする福祉的機能まで担っているのですね。
このように市民と地域主導の再エネ普及では、再エネを通じて地域に利益が還元され、社会や経済にも好影響が生まれてきます。エネルギーの自給率向上や化石燃料の輸入減少による社会負担の軽減にもつながります。国内総生産(GDP)でみても日本は1990年比で約1・3倍と横ばいですが、デンマークは約2・9倍に伸び、1人当たりGDPは日本の2倍以上です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月10日付掲載


問題を起こしているのは大企業や地域外の企業による利益優先の再エネ事業。一方、市民や地域主導で再エネを普及してきたデンマークやドイツでは、再エネに世論の高い支持が。
デンマークは世界で最も早く風力発電を導入した国ですが、けん引したのは市民と農民。
一方、再エネはほぼ無限にあり、世界中どこにでも存在します。ただしエネルギー密度は低く少量ずつ分散して存在します。地域資源を活用する小規模分散型の生産手段だからこそ、市民や自治体などの地域主導の普及に適している。
市民と地域主導の再エネ普及では、再エネを通じて地域に利益が還元され、社会や経済にも好影響が生まれます。
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