資本主義の現在と未来 気候変動③ 再エネが途上国の力に 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く
―途上国での再生可能エネルギー普及はどのような可能性を秘めていますか。
現在も世界人口の約1割、約6億人が未電化の地域に住んでいます。そうした地域での再エネ普及は、単なる電化にとどまらず、女性の地位向上や農村地帯の教育水準向上など、社会のさまざまな矛盾を解決する力を持っています。
わたしはインドのエネルギー事情を長く研究してきましたが、同国は非常にモデル的な再エネ国です。国際太陽エネルギー同盟の盟主として、太陽光発電や太陽熱利用で世界のリーダー的役割を果たし、現在、太陽光発電量は中米に次ぐ3位です。さらに、へき地の農村では生活に密着した独立型の再エネ利用を推進しています。
大型のソーラークッカーの半円球状反射鏡
女性の地位向上
同国の農村の従来のエネルギーは、主として台所で煮炊きをするための薪(まき)や農業廃棄物、乾燥した牛糞(ふん)といった「伝統的再エネ」でした。こうした燃料集めや水くみなどは女性の役割とされ、大変な重労働で、手伝いのため通学できない少女たちも多かったのです。
そこで手作りの小さなバイオガス発酵プラントを地域単位で500万基以上もつくり、家庭でガスを利用できる取り組みが進んでいます。太陽熱で煮炊きするソーラークッカーも広く普及し、小型の家庭用から、半円球状反射鏡の焦点部分に入れた油を数百度まで熱して千人規模のレストランの調理場で使う大規模なものまであります。こうした取り組みが女性や子どもを重労働から解放し、女性の地位向上につながっています。
ささやかな再エネ導入でも村人の人生に影響を与えた事例もあります。
送電線がきていない村で太陽光発電街灯が設置されると、どの街灯の下でも若者が集まり勉強していました。ある村でソーラー街灯の影響を尋ねたとき、最前列の若者が手を挙げ「このおかげで、僕は村で初めて国立大学に入学できた」と語りました。村の役場に太陽光発電を設置し、蓄電池付きランタンを充電して夕方子どもたちが持って帰る「ソーラーランタン」を導入した村では、「夜でも勉強できるようになったので、師範学校に入学し、夢だった教員になれました」と語る若い女性に会いました。
竹でつくった枠組みにセメントを塗り簡易型バイオガス発酵プラントを建設する人々(和田武さん提供)
村が設備を所有
再エネは化石燃料のように外から資源を持ってくる必要がありません。自らの地域にある資源を使って、地域を発展させていく可能性を持っています。
わたしが2004年に初めて訪れたある村は、当時わらぶき小屋の貧しい暮らしでしたが、再エネ導入に積極的に取り組んだことで大きく発展し、人口も1500人ほどから約1万人に増えています。
再エネ導入の際に、わたしはできれば村自身が再エネの発電設備を所有するのが望ましいと助言しました。当時の村長が賢明な方で、融資を受けて大型風力発電を建設しました。固定価格買い取り制度で大きな売電収入が入るようになり、村が豊かになりました。
ジュリフローラという雑木などを使う木質ガス化発電でポンプを動かし、谷から水をくみ上げるようにもなりました。以前は村から遠く離れた谷川の水をくみ、頭に担いで往復していたのです。現在、川水から再エネ電力で飲料水を製造する工場をつくり、多くの雇用を生む産業に発展しています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月5日付掲載
現在も世界人口の約1割、約6億人が未電化の地域に住んでいます。そうした地域での再エネ普及は、単なる電化にとどまらず、女性の地位向上や農村地帯の教育水準向上など、社会のさまざまな矛盾を解決する力を持っています。
手作りの小さなバイオガス発酵プラントを地域単位で500万基以上もつくり、家庭でガスを利用できる取り組みが。こうした取り組みが女性や子どもを重労働から解放し、女性の地位向上に。
ジュリフローラという雑木などを使う木質ガス化発電でポンプを動かし、谷から水をくみ上げるように。以前は村から遠く離れた谷川の水をくみ、頭に担いで往復していたのです。現在、川水から再エネ電力で飲料水を製造する工場をつくり、多くの雇用を生む産業に発展。
―途上国での再生可能エネルギー普及はどのような可能性を秘めていますか。
現在も世界人口の約1割、約6億人が未電化の地域に住んでいます。そうした地域での再エネ普及は、単なる電化にとどまらず、女性の地位向上や農村地帯の教育水準向上など、社会のさまざまな矛盾を解決する力を持っています。
わたしはインドのエネルギー事情を長く研究してきましたが、同国は非常にモデル的な再エネ国です。国際太陽エネルギー同盟の盟主として、太陽光発電や太陽熱利用で世界のリーダー的役割を果たし、現在、太陽光発電量は中米に次ぐ3位です。さらに、へき地の農村では生活に密着した独立型の再エネ利用を推進しています。
大型のソーラークッカーの半円球状反射鏡
女性の地位向上
同国の農村の従来のエネルギーは、主として台所で煮炊きをするための薪(まき)や農業廃棄物、乾燥した牛糞(ふん)といった「伝統的再エネ」でした。こうした燃料集めや水くみなどは女性の役割とされ、大変な重労働で、手伝いのため通学できない少女たちも多かったのです。
そこで手作りの小さなバイオガス発酵プラントを地域単位で500万基以上もつくり、家庭でガスを利用できる取り組みが進んでいます。太陽熱で煮炊きするソーラークッカーも広く普及し、小型の家庭用から、半円球状反射鏡の焦点部分に入れた油を数百度まで熱して千人規模のレストランの調理場で使う大規模なものまであります。こうした取り組みが女性や子どもを重労働から解放し、女性の地位向上につながっています。
ささやかな再エネ導入でも村人の人生に影響を与えた事例もあります。
送電線がきていない村で太陽光発電街灯が設置されると、どの街灯の下でも若者が集まり勉強していました。ある村でソーラー街灯の影響を尋ねたとき、最前列の若者が手を挙げ「このおかげで、僕は村で初めて国立大学に入学できた」と語りました。村の役場に太陽光発電を設置し、蓄電池付きランタンを充電して夕方子どもたちが持って帰る「ソーラーランタン」を導入した村では、「夜でも勉強できるようになったので、師範学校に入学し、夢だった教員になれました」と語る若い女性に会いました。
竹でつくった枠組みにセメントを塗り簡易型バイオガス発酵プラントを建設する人々(和田武さん提供)
村が設備を所有
再エネは化石燃料のように外から資源を持ってくる必要がありません。自らの地域にある資源を使って、地域を発展させていく可能性を持っています。
わたしが2004年に初めて訪れたある村は、当時わらぶき小屋の貧しい暮らしでしたが、再エネ導入に積極的に取り組んだことで大きく発展し、人口も1500人ほどから約1万人に増えています。
再エネ導入の際に、わたしはできれば村自身が再エネの発電設備を所有するのが望ましいと助言しました。当時の村長が賢明な方で、融資を受けて大型風力発電を建設しました。固定価格買い取り制度で大きな売電収入が入るようになり、村が豊かになりました。
ジュリフローラという雑木などを使う木質ガス化発電でポンプを動かし、谷から水をくみ上げるようにもなりました。以前は村から遠く離れた谷川の水をくみ、頭に担いで往復していたのです。現在、川水から再エネ電力で飲料水を製造する工場をつくり、多くの雇用を生む産業に発展しています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月5日付掲載
現在も世界人口の約1割、約6億人が未電化の地域に住んでいます。そうした地域での再エネ普及は、単なる電化にとどまらず、女性の地位向上や農村地帯の教育水準向上など、社会のさまざまな矛盾を解決する力を持っています。
手作りの小さなバイオガス発酵プラントを地域単位で500万基以上もつくり、家庭でガスを利用できる取り組みが。こうした取り組みが女性や子どもを重労働から解放し、女性の地位向上に。
ジュリフローラという雑木などを使う木質ガス化発電でポンプを動かし、谷から水をくみ上げるように。以前は村から遠く離れた谷川の水をくみ、頭に担いで往復していたのです。現在、川水から再エネ電力で飲料水を製造する工場をつくり、多くの雇用を生む産業に発展。