納税者の権利② 憲章の制定は急務
立命館大学教授 望月爾さんに聞く
―日本で納税者権利憲章制定の動きはなかったのですか。
2010年、民主党政権の時代に国税通則法の見直しに伴い、納税者権利憲章の制定に向けてその機運が盛り上がったことがありました。11年度「税制改正大綱」で、憲章の策定を含む通則法の見直しによる納税者の権利保護が強調されました。
進む国際的調和
ところが、その後の与野党協議により納税者の権利保護に関する一連の改正が見送られました。それ以来、憲章制定の動きはありません。
―日本政府は納税者の権利を認めようとしません。
与党の政治家や官僚、専門家の一部に、「納税者の権利」に“アレルギー”があるようです。
しかし世界の流れは、イデオロギーや政治的党派や立場の違いを超えて、税務行政は納税者サービスに移行しており、納税者権利憲章があることが当然となってきました。さらに納税者の権利保護の国際的調和・標準化が進みつつあります。
多国籍企業による脱税や行き過ぎた租税回避に対して、国際的な税務行政の協力が求められるようになっています。そのような中で、各国が納税者の権利をどの程度保護しているかは、国際的な協力の重要な判断基準になっています。
例えば、相手国と情報交換をする際、その国がデータ保護やプライバシー権、徴収手続きにおける納税者の権利を守らないと、自国の国民が権利を侵害される可能性があります。そうならないように、一定の納税者の権利保護の国際的な標準化、調和が進みつつあります。
納税者の権利保護・民主的な税務行政を求めてデモ行進する重税反対統一行動=3月13日、宮崎市
置いていかれる
一方、日本は納税者の権利を規定する法律や納税者権利憲章を持っていません。それでは今後、国際的な税務行政の協調路線から置いていかれる可能性があります。
データ保護やプライバシー権の法整備もまだ途上です。各国の状況から、インボイス(適格請求書)制度の導入は、デジタル・インボイスへの移行につながり、税務当局が個別取引を把握できるようになります。インポイスデータによる納税者の集中管理や申告納税制度の空洞化が懸念されます。
世界の税務行政の潮流は、税金を少しでも多く徴収することから、「お客様」である納税者の自発的協力に基づく「サービス」を提供する方向へ移っています。ここで日本が変わらなければ、納税者に信頼される新たな税務行政は実現できません。
―遅れている日本の税務行政をどう変えるべきですか。
納税者権利憲章の制定は急務です。権力的な税務行政を前提とする国税通則法や国税徴収法を改正し、納税者の権利を明記する必要があります。
今国会で成立した「税務相談停止命令制度」は、納税者の自発的協力を支援する世界の税務行政の潮流に逆行しています。規制や罰則ではなく、世界の納税者の権利保護の動向を多くの人に正しく理解してもらい、日本の税務行政を草の根から変えていくことが重要です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月28日付掲載
与党の政治家や官僚、専門家の一部に、「納税者の権利」に“アレルギー”があるよう。
しかし世界の流れは、イデオロギーや政治的党派や立場の違いを超えて、税務行政は納税者サービスに移行しており、納税者権利憲章があることが当然と。
多国籍企業による脱税や行き過ぎた租税回避は問題で、摘発が必要です。相手国との情報交換する際、普通の業者や納税者の情報が保護されるかが問われます。
日本の場合はお上意識が高く、いかにしてたくさん徴税するかです。世界的標準は、「お客様」である納税者の自発的協力に基づく「サービス」を提供する方向へ。
今国会で成立した「税務相談停止命令制度」は、納税者の自発的協力を支援する世界の税務行政の潮流に真逆です。
立命館大学教授 望月爾さんに聞く
―日本で納税者権利憲章制定の動きはなかったのですか。
2010年、民主党政権の時代に国税通則法の見直しに伴い、納税者権利憲章の制定に向けてその機運が盛り上がったことがありました。11年度「税制改正大綱」で、憲章の策定を含む通則法の見直しによる納税者の権利保護が強調されました。
進む国際的調和
ところが、その後の与野党協議により納税者の権利保護に関する一連の改正が見送られました。それ以来、憲章制定の動きはありません。
―日本政府は納税者の権利を認めようとしません。
与党の政治家や官僚、専門家の一部に、「納税者の権利」に“アレルギー”があるようです。
しかし世界の流れは、イデオロギーや政治的党派や立場の違いを超えて、税務行政は納税者サービスに移行しており、納税者権利憲章があることが当然となってきました。さらに納税者の権利保護の国際的調和・標準化が進みつつあります。
多国籍企業による脱税や行き過ぎた租税回避に対して、国際的な税務行政の協力が求められるようになっています。そのような中で、各国が納税者の権利をどの程度保護しているかは、国際的な協力の重要な判断基準になっています。
例えば、相手国と情報交換をする際、その国がデータ保護やプライバシー権、徴収手続きにおける納税者の権利を守らないと、自国の国民が権利を侵害される可能性があります。そうならないように、一定の納税者の権利保護の国際的な標準化、調和が進みつつあります。
納税者の権利保護・民主的な税務行政を求めてデモ行進する重税反対統一行動=3月13日、宮崎市
置いていかれる
一方、日本は納税者の権利を規定する法律や納税者権利憲章を持っていません。それでは今後、国際的な税務行政の協調路線から置いていかれる可能性があります。
データ保護やプライバシー権の法整備もまだ途上です。各国の状況から、インボイス(適格請求書)制度の導入は、デジタル・インボイスへの移行につながり、税務当局が個別取引を把握できるようになります。インポイスデータによる納税者の集中管理や申告納税制度の空洞化が懸念されます。
世界の税務行政の潮流は、税金を少しでも多く徴収することから、「お客様」である納税者の自発的協力に基づく「サービス」を提供する方向へ移っています。ここで日本が変わらなければ、納税者に信頼される新たな税務行政は実現できません。
―遅れている日本の税務行政をどう変えるべきですか。
納税者権利憲章の制定は急務です。権力的な税務行政を前提とする国税通則法や国税徴収法を改正し、納税者の権利を明記する必要があります。
今国会で成立した「税務相談停止命令制度」は、納税者の自発的協力を支援する世界の税務行政の潮流に逆行しています。規制や罰則ではなく、世界の納税者の権利保護の動向を多くの人に正しく理解してもらい、日本の税務行政を草の根から変えていくことが重要です。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月28日付掲載
与党の政治家や官僚、専門家の一部に、「納税者の権利」に“アレルギー”があるよう。
しかし世界の流れは、イデオロギーや政治的党派や立場の違いを超えて、税務行政は納税者サービスに移行しており、納税者権利憲章があることが当然と。
多国籍企業による脱税や行き過ぎた租税回避は問題で、摘発が必要です。相手国との情報交換する際、普通の業者や納税者の情報が保護されるかが問われます。
日本の場合はお上意識が高く、いかにしてたくさん徴税するかです。世界的標準は、「お客様」である納税者の自発的協力に基づく「サービス」を提供する方向へ。
今国会で成立した「税務相談停止命令制度」は、納税者の自発的協力を支援する世界の税務行政の潮流に真逆です。
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