資本主義の現在と未来 気候変動⑦ 日本で再エネ100%は可能 日本環境学会元会長 和田武さんに聞く
―日本と同じものづくり国家、ドイツの再生可能エネルギーの所有形態はどうなっていますか。
世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有です。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有しています。
全国各地にエネルギー協同組合やエネルギー市民会社といった市民組織が900ほどあり、自治体の再エネ専門の部署と連携して再エネ普及に取り組んでいます。
デンマーク国境沿いの北海の干拓地につくられた、人口わずか170人ほどの小さな農村があります。1990年代初頭に有志が市民会社を設立して風力発電に取り組み、いまでは全村民参加で10万世帯分の電力を供給しています。以前は貧しい村でしたが、農業収入と同程度の売電収入で豊かになり、後継者難も解消しています。このように再エネで自立発展する地域が全国に数多くあります。
市民が取り組み
―ドイツやデンマークに比べ、日本では再工ネ普及が大きく遅れています。
日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富です。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展します。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2016年、再エネを倍増した場合の各国の国内総生産の伸びを試算し、日本は世界でトップクラスの伸び率だとしています。
実は日本は04年まで太陽光発電の導入量が世界トップで、その7~8割は住宅用でした。採算が取れないころでも市民が中心となって再エネ普及に取り組んできたのです。
1997年に私たち17人が20万円ずつ出し、4キロワットの小さな市民共同太陽光発電所を滋賀県石部町(現・湖南市)につくりました。同年末に京都市で第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が開かれ、地球温暖化に注目が集まったこともあり、取り組みがメディアで紹介されると、各地で市民が資金や労力を負担しながら共同発電所をつくり始めました。
2002年には第1回市民共同発電所全国フォーラムを滋賀県で開催。その後も各地で開催して、互いの実践から学び合い、共同発電所の普及とともに、固定価格買い取り制度(FIT)の創設などを求めました。民主党政権下の12年にFITが実現し、16年に市民共同発電所は全国で1000基以上になりました。その後、市民地域共同発電所全国フォーラムと改称して、昨年、通算11回目を京都で開催しました。
自治体にも動き
全国1112自治体が50年までの二酸化炭素排出実質ゼロを表明するなど、自治体にも注目すべき動きが出ています。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそうです。長野県飯田市は13年、地域資源を再エネとして利用することを市民の権利とする条例を策定。市が再エネ普及を積極的に支援し、400以上の市民共同発電所が誕生しています。
使用電力の再エネ100%化を目指す企業や団体も増えています。太陽光発電コストが大幅に下がったことで、自ら発電設備を持ち、電力自給した方が経済的になり、企業も、教育、医療、福祉などのあらゆる団体も再エネ100%を目指せる時代になっているのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月11日付掲載
世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有。
日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそう。
―日本と同じものづくり国家、ドイツの再生可能エネルギーの所有形態はどうなっていますか。
世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有です。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有しています。
全国各地にエネルギー協同組合やエネルギー市民会社といった市民組織が900ほどあり、自治体の再エネ専門の部署と連携して再エネ普及に取り組んでいます。
デンマーク国境沿いの北海の干拓地につくられた、人口わずか170人ほどの小さな農村があります。1990年代初頭に有志が市民会社を設立して風力発電に取り組み、いまでは全村民参加で10万世帯分の電力を供給しています。以前は貧しい村でしたが、農業収入と同程度の売電収入で豊かになり、後継者難も解消しています。このように再エネで自立発展する地域が全国に数多くあります。
市民が取り組み
―ドイツやデンマークに比べ、日本では再工ネ普及が大きく遅れています。
日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富です。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展します。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2016年、再エネを倍増した場合の各国の国内総生産の伸びを試算し、日本は世界でトップクラスの伸び率だとしています。
実は日本は04年まで太陽光発電の導入量が世界トップで、その7~8割は住宅用でした。採算が取れないころでも市民が中心となって再エネ普及に取り組んできたのです。
1997年に私たち17人が20万円ずつ出し、4キロワットの小さな市民共同太陽光発電所を滋賀県石部町(現・湖南市)につくりました。同年末に京都市で第3回気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)が開かれ、地球温暖化に注目が集まったこともあり、取り組みがメディアで紹介されると、各地で市民が資金や労力を負担しながら共同発電所をつくり始めました。
2002年には第1回市民共同発電所全国フォーラムを滋賀県で開催。その後も各地で開催して、互いの実践から学び合い、共同発電所の普及とともに、固定価格買い取り制度(FIT)の創設などを求めました。民主党政権下の12年にFITが実現し、16年に市民共同発電所は全国で1000基以上になりました。その後、市民地域共同発電所全国フォーラムと改称して、昨年、通算11回目を京都で開催しました。
自治体にも動き
全国1112自治体が50年までの二酸化炭素排出実質ゼロを表明するなど、自治体にも注目すべき動きが出ています。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそうです。長野県飯田市は13年、地域資源を再エネとして利用することを市民の権利とする条例を策定。市が再エネ普及を積極的に支援し、400以上の市民共同発電所が誕生しています。
使用電力の再エネ100%化を目指す企業や団体も増えています。太陽光発電コストが大幅に下がったことで、自ら発電設備を持ち、電力自給した方が経済的になり、企業も、教育、医療、福祉などのあらゆる団体も再エネ100%を目指せる時代になっているのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月11日付掲載
世界有数の工業国ドイツでも、再エネ発電容量の4割以上は市民が所有し、自治体や中小企業などを含めると6割以上が地域所有。家畜の糞尿(ふんにょう)や農業廃棄物を利用したバイオガスプラントが約1万基もあり、そのうち4分の3を農民が所有。
日本は再エネ資源の種類も量も、両国と比べてはるかに豊富。政府のエネルギー政策を原発優先から再エネ優先に切り替え、市民と地域の取り組みを推進すれば再エネ100%も実現可能で、どの地域も発展。
福島県は原発事故を契機に県内の全エネルギーを40年(電力は25年)までに再エネで賄う計画を立て、電力については前倒しで達成しそう。