安保改定60年 第3部④ 「思いやり予算」使い 米軍は少人数学級
少人数学級の実現は、教職員や父母の長年の願いです。とりわけ、新型コロナウイルスの感染拡大のなか、感染予防と豊かな学びを保障するために、少人数学級実現を求める声が大きく広がっています。一方、米軍「思いやり予算」で建設された在日米軍基地内の学校は少人数学級が実現されています。日本の子どもたちには感染リスクと背中合わせの過密な教室を押し付けながら、米軍には日本の税金で快適な学校を提供する―。その不当性がコロナ禍で問われています。
日本が資金提供
米軍基地内の学校を運営する米国防教育局(DODEA)によれば、小学校1~3年の1クラスあたりの定員は18人、小学校4年~中学生までは24人とされています。一方、日本では小1でも35人、小2以降は40人です。教室の面積基準も79平方メートルで、63~64平方メートルとされる日本の平均的な教室より広くなっています。
DODEAによれば、現在、在日米軍基地に存在する学校(小中高)は33。一方、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によれば、「思いやり予算」の一部である「提供施設整備」(FIP)に基づいて日本が資金提供した学校数は36です。
建設費は時期や規模によって異なりますが、米軍関係者の子どもたちの通学の負担を減らすためとして、2014年に完成した池子住宅地区(神奈川県)内の小学校の場合、予算額は約67億円にのぼっています。
池子住宅地区(神奈川県横浜市、逗子市)内の馬小学校(日本共産党の岩室年治逗子市議撮影)
■在日米軍基地内の学校数
※近隣の住宅地区を含む
■小中学校の定員・教室面積
国民の税金で戦争拠点整備
米国防総省の「基地構造報告」2018年度版によれば、在日米軍基地は資産評価額上位10基地のうち、7基地を占めます。地球規模での出撃を支えるための滑走路や格納庫、桟橋から住宅、学校、娯楽施設にいたるまで、「思いやり予算」などによって、日本政府が米軍への大盤振る舞いを続けてきた結果です。
防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によると、米軍「思いやり予算」に基づく提供施設整備費は1979年度から2020年度までで総額2兆3791億円に達しています。全国67の米軍基地で計1万3057件の施設を整備しました。
項目をみると家族住宅や学校、育児所、病院、郵便局、スポーツ施設、ガソリンスタンド、消防署、教会、隊舎、工場、管理棟など多岐にわたり、71項目に及びます。
米軍基地施設整備(1979年~2020年度)
※は日本側に返還済み(日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した防衛省資料に基づき作成)
住宅に資金提供
特に巨額の資金を提供しているのは家族住宅です。整備数は1万1461件、約5577億円に達します。さらに滑走路(2件、約68億円)、桟橋(9件、約297億円)、整備施設(7件、約268億円)、訓練施設(11件、67億円)など、出撃や訓練、修理といった作戦行動に関わる施設まで整備してきました。
こうした「思いやり予算」で10万人を超える人員、(軍属や家族を含む)の常時駐留を可能にするとともに、日本政府がインフラを整備した基地で核攻撃態勢を維持し、さらにイラクやアフガニスタンなどに出撃して罪のない多くの住民を殺りくしてきました。日本国民はこうした税金の使われ方を望んでいません。
思いやり予算で整備された横須賀基地(神奈川県横須賀市)の米原子力空母専用の12号バース(ふ頭、手前)
米軍「思いやり予算」による主な施設
最新鋭の基地に
「思いやり予算」に基づく施設整備は基本的に、既存の基地にインフラを建設するものでしたが、1996年度から始まったSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)、2006年度から始まった在日米軍再編は、基地の「移設」を口実に、最新鋭の基地を丸ごと建設するものに変容しました。
特に沖縄県名護市辺野古の新基地建設は軟弱地盤の改良のために工事が長期化し、経費が膨張します。沖縄県は総額2兆5500億円に上ると試算しており、これだけで「思いやり予算」の施設整備費総額を上回ります。再編計画全体で数兆円に達します。
さらに、SACO経費として、日本政府は1996年度から2020年度までに沖縄県の北部訓練場「過半返還」の条件として、東村高江の米軍ヘリパッド6カ所の建設費計115億円を計上。日米両政府は16年12月に「完成」を表明しましたが、その後も工事が続きました。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月13日付掲載
軍需施設の補修だけでなく、少人数学級の学校、家族住宅の建設など、本当に至れり尽くせりなんですね。
少人数学級の実現は、教職員や父母の長年の願いです。とりわけ、新型コロナウイルスの感染拡大のなか、感染予防と豊かな学びを保障するために、少人数学級実現を求める声が大きく広がっています。一方、米軍「思いやり予算」で建設された在日米軍基地内の学校は少人数学級が実現されています。日本の子どもたちには感染リスクと背中合わせの過密な教室を押し付けながら、米軍には日本の税金で快適な学校を提供する―。その不当性がコロナ禍で問われています。
日本が資金提供
米軍基地内の学校を運営する米国防教育局(DODEA)によれば、小学校1~3年の1クラスあたりの定員は18人、小学校4年~中学生までは24人とされています。一方、日本では小1でも35人、小2以降は40人です。教室の面積基準も79平方メートルで、63~64平方メートルとされる日本の平均的な教室より広くなっています。
DODEAによれば、現在、在日米軍基地に存在する学校(小中高)は33。一方、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によれば、「思いやり予算」の一部である「提供施設整備」(FIP)に基づいて日本が資金提供した学校数は36です。
建設費は時期や規模によって異なりますが、米軍関係者の子どもたちの通学の負担を減らすためとして、2014年に完成した池子住宅地区(神奈川県)内の小学校の場合、予算額は約67億円にのぼっています。
池子住宅地区(神奈川県横浜市、逗子市)内の馬小学校(日本共産党の岩室年治逗子市議撮影)
■在日米軍基地内の学校数
本土 | 三沢(2) |
横田(4) | |
横須賀(4)※ | |
座間(2)※ | |
厚木(1) | |
岩国(4) | |
佐世保(3) | |
沖縄 | 嘉手納(7) |
マクトリアス(1) | |
桑江(1) | |
瑞慶覧(3) | |
牧港(1) | |
合計 33 |
■小中学校の定員・教室面積
日本 | 米軍基地内の学校 | |
定員 | 小1 35 | 小1~小3 18 |
小2~ 40 | 小4~ 24 | |
面積 | 63~64㎡ | 79㎡ |
国民の税金で戦争拠点整備
米国防総省の「基地構造報告」2018年度版によれば、在日米軍基地は資産評価額上位10基地のうち、7基地を占めます。地球規模での出撃を支えるための滑走路や格納庫、桟橋から住宅、学校、娯楽施設にいたるまで、「思いやり予算」などによって、日本政府が米軍への大盤振る舞いを続けてきた結果です。
防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によると、米軍「思いやり予算」に基づく提供施設整備費は1979年度から2020年度までで総額2兆3791億円に達しています。全国67の米軍基地で計1万3057件の施設を整備しました。
項目をみると家族住宅や学校、育児所、病院、郵便局、スポーツ施設、ガソリンスタンド、消防署、教会、隊舎、工場、管理棟など多岐にわたり、71項目に及びます。
米軍基地施設整備(1979年~2020年度)
県名 | 基地名 | 整備数 | 金額(単位:百万円) |
青森 | 三沢飛行場 | 2221 | 275719 |
八戸貯油施設 | 1 | 5733 | |
三沢対地射爆撃場 | 7 | 842 | |
東京 | 横田飛行場 | 1436 | 197347 |
赤坂プレス・センター | 1 | 1475 | |
多摩サービス補助施設 | 3 | 819 | |
硫黄島通信所 | 38 | 26354 | |
南鳥島通信所※ | 1 | 1138 | |
埼玉 | キャンプ朝霞(一部東京都) | 2 | 277 |
所沢通信施設 | 1 | 106 | |
大和田通信所 | 1 | 894 | |
神奈川 | 根岸住宅地区 | 3 | 2154 |
横浜ノース・ドック | 9 | 11317 | |
キャンプ座間 | 484 | 82153 | |
厚木海軍飛行場 | 929 | 115352 | |
相模総合補給廠 | 39 | 33462 | |
池子住宅地区 | 868 | 93727 | |
吾妻倉庫地区 | 8 | 18023 | |
横須賀海軍施設 | 957 | 249242 | |
相模原住宅地区 | 150 | 14148 | |
浦郷倉庫地区 | 9 | 2358 | |
鶴見貯油施設 | 3 | 5774 | |
上瀬谷通信施設※ | 11 | 5034 | |
深谷通信所※ | 3 | 795 | |
小柴貯油施設※ | 3 | 3073 | |
静岡 | 富士営舎地区 | 46 | 21974 |
沼津海浜訓練場 | 11 | ||
愛知 | 依佐美通信所※ | 2 | 527 |
広島 | 秋月弾薬庫 | 15 | 4947 |
川上弾薬庫 | 15 | 6698 | |
広弾薬庫 | 10 | 5704 | |
呉第6突堤 | 9 | 1395 | |
山口 | 岩国飛行場 | 844 | 392960 |
長崎 | 佐世保海軍施設 | 197 | 64762 |
佐世保ドライ・ドック地区 | 2 | 217 | |
赤崎貯油所 | 22 | 22868 | |
佐世保弾薬補給所 | 1 | 65 | |
庵崎貯油所 | 6 | 9485 | |
横瀬貯油所 | 12 | 44133 | |
針尾島弾薬集積所 | 4 | 1378 | |
立神港区 | 11 | 13371 | |
針尾住宅地区 | 551 | 32659 | |
沖縄 | 北部訓練場 | 6 | 3348 |
奥間レスト・センター | 5 | 1690 | |
伊江島補助飛行場 | 4 | 1778 | |
慶佐次通信所※ | 1 | 42 | |
キャンプ・シュワブ | 37 | 27723 | |
辺野古弾薬庫 | 2 | 1974 | |
キャンプ・ハンセン | 106 | 80705 | |
ギンバル訓練場※ | 1 | 93 | |
金武ブルー・ビーチ訓練場 | 1 | 105 | |
瀬名波通信施設※ | 4 | ||
嘉手納弾薬庫地区 | 236 | 16802 | |
楚辺通信所※ | 1 | 69 | |
読谷補助飛行場※ | 3 | 338 | |
キャンプ・コートニー | 465 | 38199 | |
キャンプ・マクトリアス | 455 | 19532 | |
キャンプ・シールズ | 366 | 19220 | |
トリイ通信施設 | 12 | 11644 | |
嘉手納飛行場 | 834 | 157850 | |
キャンプ桑江 | 8 | 5579 | |
キャンプ瑞慶覧 | 478 | 78499 | |
ホワイト・ビーチ地区 | 16 | 16047 | |
普天間飛行場 | 37 | 34502 | |
牧港補給地区 | 1030 | 72765 | |
那覇港湾施設 | 4 | 4918 | |
陸軍貯油施設 | 14 | 15218 | |
合計 | 13057 | 約2兆3791億円 |
住宅に資金提供
特に巨額の資金を提供しているのは家族住宅です。整備数は1万1461件、約5577億円に達します。さらに滑走路(2件、約68億円)、桟橋(9件、約297億円)、整備施設(7件、約268億円)、訓練施設(11件、67億円)など、出撃や訓練、修理といった作戦行動に関わる施設まで整備してきました。
こうした「思いやり予算」で10万人を超える人員、(軍属や家族を含む)の常時駐留を可能にするとともに、日本政府がインフラを整備した基地で核攻撃態勢を維持し、さらにイラクやアフガニスタンなどに出撃して罪のない多くの住民を殺りくしてきました。日本国民はこうした税金の使われ方を望んでいません。
思いやり予算で整備された横須賀基地(神奈川県横須賀市)の米原子力空母専用の12号バース(ふ頭、手前)
米軍「思いやり予算」による主な施設
施設名 | 整備数 | 予算額(単位:百万円) |
家族住宅 | 11461 | 557665 |
学校 | 36 | 53163 |
育児所 | 22 | 11975 |
病院・診療所 | 20 | 29677 |
販売所・郵便局・銀行・ガソリンスタンド・放送施設 | 46 | 24384 |
青少年センター・コミュニディセンター・教会 | 14 | 7497 |
運動施設 | 49 | 34840 |
消防署・消火施設、防火施設 | 47 | 28992 |
隊舎(単身者用宿舎) | 213 | 208733 |
管理棟 | 201 | 165803 |
倉庫 | 184 | 119580 |
教育施設・訓練施設 | 33 | 22623 |
工場・整備施設 | 170 | 151636 |
桟橋 | 9 | 29658 |
護岸 | 6 | 6147 |
滑走路 | 2 | 6761 |
整備用格納庫 | 20 | 39491 |
駐機場 | 6 | 17450 |
航空機えん体(シェルター) | 46 | 41087 |
最新鋭の基地に
「思いやり予算」に基づく施設整備は基本的に、既存の基地にインフラを建設するものでしたが、1996年度から始まったSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)、2006年度から始まった在日米軍再編は、基地の「移設」を口実に、最新鋭の基地を丸ごと建設するものに変容しました。
特に沖縄県名護市辺野古の新基地建設は軟弱地盤の改良のために工事が長期化し、経費が膨張します。沖縄県は総額2兆5500億円に上ると試算しており、これだけで「思いやり予算」の施設整備費総額を上回ります。再編計画全体で数兆円に達します。
さらに、SACO経費として、日本政府は1996年度から2020年度までに沖縄県の北部訓練場「過半返還」の条件として、東村高江の米軍ヘリパッド6カ所の建設費計115億円を計上。日米両政府は16年12月に「完成」を表明しましたが、その後も工事が続きました。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月13日付掲載
軍需施設の補修だけでなく、少人数学級の学校、家族住宅の建設など、本当に至れり尽くせりなんですね。
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