デジタル化の落とし穴④ 日雇い労働が拡大
経済のデジタル化が、雇用のあり方を大きく変えています。
インターネットの普及に伴い急増しているのが、個人で仕事をして報酬を得るクラウドワーカーです。インターネットの職業仲介サイトを通じて、仕事を受注・納品します。高度な専門スキルをもった専業者から、隙間時間に単発で仕事を請け負う兼業者まで、その規模は多種多様です。
脆弱な法体制
特に事業主(企業)と直接仕事を取引する「雇用類似就業者」は、約170万人いるとされ、「雇用関係によらない」新たな労働形態として、政府・財界がさらなる拡大を狙っています。
典型的な働き方が食品の宅配代行サービス・ウーバーイーツの配達員です。都心では、コロナ危機の下、日々の生活費を稼ぐための「緊急避難」として配達員になる人が増えています。
ウーバーイーツの配達業は時間や空間に縛られない自由な働き方といわれますが、労働者を保護するための法制度は極めて脆弱(ぜいじゃく)です。
日本共産党の笠井亮議員は、2月の衆院予算委員会で配達員の過酷な労働実態を取り上げ、働き手の権利を保障するよう迫りました。ウーバーイーツの配達員は運営会社と雇用関係のない個人事業主で、配達員が事故にあっても労災保険が適用されません。最低賃金の規定もなく、配達待ち時間は無報酬です。配達員の大学生が自転車で配送中に交通事故で死亡するという痛ましい事故も発生しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/fd/9ccc3d78d3bd03de13cfc9b0aac71328.jpg)
自転車で走るウーバーイーツの配達員=東京都渋谷区
19世紀型労働
しかし、日本の財界はコロナ危機をテコに、雇用形態をより柔軟にするという口実で、労働者保護を強化しないよう政府に圧力をかけています。経団連は、今年1月に発表した「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)で、「雇用類似の働き方は、多様な就労ニーズをもった働き手が自由な意思に基づき選択するものであり、過度な規制とならないような配慮が求められる」として、報酬額の適正化や労災保険の適用に否定的な考えを示しました。
政府も今年の「骨太の方針」で、「多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備」するとして、財界の意向に沿った方針を打ち出しています。
国際労働機関(ILO)はクラウドワーカーのような働き方を「デジタル日雇い労働者」と呼び、その在り方に懸念を表明。「デジタル経済」の普及により、労働者へのむき出しの搾取が横行していた19世紀型の「労働慣行を再現」する恐れがあると警鐘を鳴らしています。
ILOによると、デジタル労働の賃金は時に最低賃金を下回るほど「劣悪」な上、「不正な処遇を是正する仕組み」は設けられていません。「デジタル経済」が、地域格差およびジェンダー格差を拡大する恐れがあると警告しています。
雇用のデジタル化は働き方を「進化」させるものではなく、「退化」させ得る危険性をはらんでいるのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月9日付掲載
エンゲルスが19世紀に、イギリスの労働者の劣悪な労働条件を告発した『イギリスにおける労働者階級の状態』
50年にもわたる闘いで勝ち取った「10時間労働制」
それが、「時間に縛られない、自由な働き方」という美辞麗句で、いとも簡単に崩されようとしている。
経済のデジタル化が、雇用のあり方を大きく変えています。
インターネットの普及に伴い急増しているのが、個人で仕事をして報酬を得るクラウドワーカーです。インターネットの職業仲介サイトを通じて、仕事を受注・納品します。高度な専門スキルをもった専業者から、隙間時間に単発で仕事を請け負う兼業者まで、その規模は多種多様です。
脆弱な法体制
特に事業主(企業)と直接仕事を取引する「雇用類似就業者」は、約170万人いるとされ、「雇用関係によらない」新たな労働形態として、政府・財界がさらなる拡大を狙っています。
典型的な働き方が食品の宅配代行サービス・ウーバーイーツの配達員です。都心では、コロナ危機の下、日々の生活費を稼ぐための「緊急避難」として配達員になる人が増えています。
ウーバーイーツの配達業は時間や空間に縛られない自由な働き方といわれますが、労働者を保護するための法制度は極めて脆弱(ぜいじゃく)です。
日本共産党の笠井亮議員は、2月の衆院予算委員会で配達員の過酷な労働実態を取り上げ、働き手の権利を保障するよう迫りました。ウーバーイーツの配達員は運営会社と雇用関係のない個人事業主で、配達員が事故にあっても労災保険が適用されません。最低賃金の規定もなく、配達待ち時間は無報酬です。配達員の大学生が自転車で配送中に交通事故で死亡するという痛ましい事故も発生しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/fd/9ccc3d78d3bd03de13cfc9b0aac71328.jpg)
自転車で走るウーバーイーツの配達員=東京都渋谷区
19世紀型労働
しかし、日本の財界はコロナ危機をテコに、雇用形態をより柔軟にするという口実で、労働者保護を強化しないよう政府に圧力をかけています。経団連は、今年1月に発表した「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)で、「雇用類似の働き方は、多様な就労ニーズをもった働き手が自由な意思に基づき選択するものであり、過度な規制とならないような配慮が求められる」として、報酬額の適正化や労災保険の適用に否定的な考えを示しました。
政府も今年の「骨太の方針」で、「多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備」するとして、財界の意向に沿った方針を打ち出しています。
国際労働機関(ILO)はクラウドワーカーのような働き方を「デジタル日雇い労働者」と呼び、その在り方に懸念を表明。「デジタル経済」の普及により、労働者へのむき出しの搾取が横行していた19世紀型の「労働慣行を再現」する恐れがあると警鐘を鳴らしています。
ILOによると、デジタル労働の賃金は時に最低賃金を下回るほど「劣悪」な上、「不正な処遇を是正する仕組み」は設けられていません。「デジタル経済」が、地域格差およびジェンダー格差を拡大する恐れがあると警告しています。
雇用のデジタル化は働き方を「進化」させるものではなく、「退化」させ得る危険性をはらんでいるのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月9日付掲載
エンゲルスが19世紀に、イギリスの労働者の劣悪な労働条件を告発した『イギリスにおける労働者階級の状態』
50年にもわたる闘いで勝ち取った「10時間労働制」
それが、「時間に縛られない、自由な働き方」という美辞麗句で、いとも簡単に崩されようとしている。
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