きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

デジタル化の落とし穴⑤ 究極の新自由主義

2020-10-12 12:49:25 | 経済・産業・中小企業対策など
デジタル化の落とし穴⑤ 究極の新自由主義
「デジタル社会に不可欠」
菅義偉首相がこう位置づけて普及を促そうとしているのがマイナンバーカードです。来年3月から健康保険証としての利用を始め、2年半後にほぼ国民全員に行き渡らせたいと表明しています。

裏にある思惑
利便性の向上を前面に押し出していますが、裏には危うい思惑があります。行政のもとに集まる大量の個人情報を一括して把握し、大企業の利益のために活用することです。
マイナンバーは日本に住民票を持つすべての人に割りふられる12桁の番号です。社会保障、税、災害対策の3分野で複数の行政機関が持つ個人情報を名寄せし、同一人物の情報であることを確認するために使われています。分野横断的な共通番号の導入により、行政は「個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能」(総務省)になりました。
政府はマイナンバー制度の利用範囲のとめどない拡大をもくろんでいます。預貯金口座とのひもづけや、児童生徒の健診情報・学習履歴の蓄積まで検討しています。個人の生涯を丸ごと記録した膨大な情報を政府が握ることになります。
こうした個人情報のビジネス利用をたくらむのが大企業です。経団連は「デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わる」と主張。医療分野では「マイナポータル(行政機関が持つ個人情報を確認できる政府のオンラインサービス)に蓄積される医療データ、事業主健診データ等のデータを、民間PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を通じて活用できる仕組みを早急に整備する」よう政府に求めています。
PHRは個人の健康・医療情報を蓄積し、本人と医療従事者が活用する仕組みで、政府と民間企業の双方が整備を進めています。
公的PHRはマイナンバーカードの健康保険証利用と一体で進められ、①生活習慣病予防のための特定健診②医師の処方を受けた薬剤③手術・移植④透析―などの情報が蓄積される計画です。学校健診や事業主健診、電子カルテの情報の蓄積も検討されています。



経団連会館=東京都千代田区

医療抑制狙う
経団連は、国民がマイナポータルなどから得る健康・医療情報を、「本人の意思」に基づいて民間PHR事業者のもとに集め、「新たなサービスや医薬品の開発」に利用する考えを示しています。一例としてあげている中国の「健康スコア」は、個人の病歴や生活習慣を100点満点で評価するシステムです。健康の自己責任論を強めて医療費を抑制する意図が透けています。
政府も公的PHRの情報を民間PHR事業者に「利活用」させる仕組みを検討中です。民間企業が膨大な個人情報を収集して利益のために使えば、深刻な差別や排除を引き起こす恐れがあります。
もともと経団連が税と社会保障に共通する番号制度の導入を求めたのは、社会保障給付を縮小して企業の負担を減らすためでした。個人ごとの給付と負担の情報を総合的に把握し、「社会保障個人会計」を導入することを提唱してきました。
「社会保障の各制度から同じような趣旨で行われている給付を合理化する」「個人ごとに給付と負担を把握して、運営上、こうした重複給付をチェックし、効率的な給付を行おう」「社会保障受給額(特に年金給付)のうち本人以外が負担した社会保険料相当分と相続財産との間で調整を行なう仕組みも検討すべきである」(2004年「社会保障制度等の一体的改革に向けて」)
必要に応じて給付するという社会保障の原理を否定し、負担と給付の等価交換という市場原理に置き換える狙いです。菅政権がめざすマイナンバー制度の拡大は、社会保障全体を「自助」の制度に変質させる、究極の新自由主義と結びついているのです。(おわり)
(この連載は金子豊弘、小村優、清水渡、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年10月10日付掲載


マイナンバーカードの普及は、国民の利便性や社会保障や教育などの給付のためではなく、逆に「給付と負担のバランス」と称して、負担を増やす方向に使われる。

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