検証金融政策④ 物価上昇「的外れ」
東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん
日銀の金融政策が、想定目標に対して効果が見られなかったのには理由があります。
その第1は物価つり上げ目標自体が誤りだったということです。物価が上昇したからといって人々は経済が好転したと錯覚し消費を拡大するわけがありません。消費は所得環境や将来見通しに左右されます。物価上昇が企業収益を増やすという考えにも論拠はありません。企業収益を左右するのは売り上げであって物価ではないからです。しかも大企業の収益増大がそのまま中小企業の利益につながるわけでもありません。
物価上昇は資産価格を引き上げ消費につながるといいますが、消費基盤が崩れている状況では資産価格も上昇しません。物価上昇は実質金利を引き下げ、投資を拡大させるといいますが、投資を大きく左右するのは売り上げや将来見通しです。っまり、物価つり上げ策は初めから的外れだったのです。
そもそも、物価上昇は経済拡大を意味しません。逆に物価上昇は消費を抑え込み、生産コストの上昇を通じて企業経営にも打撃を与えます。消費税率の引き上げによる経済の沈み込みがそれを示しています。

日本銀行本店=東京都中央区
お金を流しても
第2に物価つり上げの道筋にも誤りがあります。日銀から金融機関にいくらお金を流しても、個人や企業の資金需要が弱い中では、目詰まりを起こすだけです。そもそも、金融を緩和したからといって世の中にお金が流れるわけではありません。日銀がお金を供給しても、それが金融機関の日銀当座預金や個人の預貯金や企業の内部留保としてためこまれれば意味はありません。15年3月末、日銀当座預金残高が初めて200兆円台、銀行預金も600兆円台に達しました。
問題はなぜ世の中にお金が流れないのかということです。これについて日銀は一切言及しません。お金の流れは需要動向に大きく左右され、需要が停滞している中ではお金も流れにくくなります。
さらに、以上のような誤った目標や道筋を設定した背景には、金融政策の効果に対する「信奉」があります。.中央銀行がお金を供給すれば、世の中のお金の流れを調整できるといった考えです。この単純な理屈は、経済が停滞し需要が減少している下では通用しません。金融政策は何らかの効果を発揮してもわずかな期間だけです。緩和が「常態」になると市場は反応しなくなります。しかも、緩和を止めようとすると混乱を引き起こします。そのため効果が期待できない政策を続けざるを得なくなるのです。
金融政策には、通貨の供給量の調節を通じて、一時的に消費を促したり抑えたりする効果は期待できても、財政支出のように需要を直接作り出す力はありません。日銀の金融緩和策では経済停滞の主因である需要不足を解決できないということです。したがって、経済再生策を日銀に背負わせることには無理がありました。日銀への過剰な期待は、やがて市場の失望と混乱をもたらすことになります。
国民軽視の姿勢
第3に、以上の誤りの背景には経済実態に対する誤った認識があります。経済停滞の原因は企業収益が上がらないためであり、それは物価が停滞しているためであるという認識です。実際には企業収益は増大し続けています。ここで抜け落ちているのは、経済停滞の起点が所得環境の悪化や国民負担の増大、将来不安の高まりによる消費需要の停滞など国民生活の劣化にあるという視点です。その根底には国民軽視の姿勢があります。このような誤った認識が、誤った再生シナリオ、誤った金融政策を引き出したのです。結局、政府・日銀は一体となって、金融政策で経済が活性化するような幻想を振りまいてきたことになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月11日付掲載
物価つり上げ目標自体が誤り。物価が上昇したからといって人々は経済が好転したと錯覚し消費を拡大するわけがありません。消費は所得環境や将来見通しに左右されます。物価上昇が企業収益を増やすという考えにも論拠はありません。企業収益を左右するのは売り上げであって物価ではないから。
日々の暮しにきゅうきゅうの庶民の暮しが分かっていない人が考えた机上の理論だよね。
経済停滞の原因は企業収益が上がらないためであり、それは物価が停滞しているためであるという認識。実際には企業収益は増大し続けています。ここで抜け落ちているのは、経済停滞の起点が所得環境の悪化や国民負担の増大、将来不安の高まりによる消費需要の停滞など国民生活の劣化にあるという視点。
東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん
日銀の金融政策が、想定目標に対して効果が見られなかったのには理由があります。
その第1は物価つり上げ目標自体が誤りだったということです。物価が上昇したからといって人々は経済が好転したと錯覚し消費を拡大するわけがありません。消費は所得環境や将来見通しに左右されます。物価上昇が企業収益を増やすという考えにも論拠はありません。企業収益を左右するのは売り上げであって物価ではないからです。しかも大企業の収益増大がそのまま中小企業の利益につながるわけでもありません。
物価上昇は資産価格を引き上げ消費につながるといいますが、消費基盤が崩れている状況では資産価格も上昇しません。物価上昇は実質金利を引き下げ、投資を拡大させるといいますが、投資を大きく左右するのは売り上げや将来見通しです。っまり、物価つり上げ策は初めから的外れだったのです。
そもそも、物価上昇は経済拡大を意味しません。逆に物価上昇は消費を抑え込み、生産コストの上昇を通じて企業経営にも打撃を与えます。消費税率の引き上げによる経済の沈み込みがそれを示しています。

日本銀行本店=東京都中央区
お金を流しても
第2に物価つり上げの道筋にも誤りがあります。日銀から金融機関にいくらお金を流しても、個人や企業の資金需要が弱い中では、目詰まりを起こすだけです。そもそも、金融を緩和したからといって世の中にお金が流れるわけではありません。日銀がお金を供給しても、それが金融機関の日銀当座預金や個人の預貯金や企業の内部留保としてためこまれれば意味はありません。15年3月末、日銀当座預金残高が初めて200兆円台、銀行預金も600兆円台に達しました。
問題はなぜ世の中にお金が流れないのかということです。これについて日銀は一切言及しません。お金の流れは需要動向に大きく左右され、需要が停滞している中ではお金も流れにくくなります。
さらに、以上のような誤った目標や道筋を設定した背景には、金融政策の効果に対する「信奉」があります。.中央銀行がお金を供給すれば、世の中のお金の流れを調整できるといった考えです。この単純な理屈は、経済が停滞し需要が減少している下では通用しません。金融政策は何らかの効果を発揮してもわずかな期間だけです。緩和が「常態」になると市場は反応しなくなります。しかも、緩和を止めようとすると混乱を引き起こします。そのため効果が期待できない政策を続けざるを得なくなるのです。
金融政策には、通貨の供給量の調節を通じて、一時的に消費を促したり抑えたりする効果は期待できても、財政支出のように需要を直接作り出す力はありません。日銀の金融緩和策では経済停滞の主因である需要不足を解決できないということです。したがって、経済再生策を日銀に背負わせることには無理がありました。日銀への過剰な期待は、やがて市場の失望と混乱をもたらすことになります。
国民軽視の姿勢
第3に、以上の誤りの背景には経済実態に対する誤った認識があります。経済停滞の原因は企業収益が上がらないためであり、それは物価が停滞しているためであるという認識です。実際には企業収益は増大し続けています。ここで抜け落ちているのは、経済停滞の起点が所得環境の悪化や国民負担の増大、将来不安の高まりによる消費需要の停滞など国民生活の劣化にあるという視点です。その根底には国民軽視の姿勢があります。このような誤った認識が、誤った再生シナリオ、誤った金融政策を引き出したのです。結局、政府・日銀は一体となって、金融政策で経済が活性化するような幻想を振りまいてきたことになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月11日付掲載
物価つり上げ目標自体が誤り。物価が上昇したからといって人々は経済が好転したと錯覚し消費を拡大するわけがありません。消費は所得環境や将来見通しに左右されます。物価上昇が企業収益を増やすという考えにも論拠はありません。企業収益を左右するのは売り上げであって物価ではないから。
日々の暮しにきゅうきゅうの庶民の暮しが分かっていない人が考えた机上の理論だよね。
経済停滞の原因は企業収益が上がらないためであり、それは物価が停滞しているためであるという認識。実際には企業収益は増大し続けています。ここで抜け落ちているのは、経済停滞の起点が所得環境の悪化や国民負担の増大、将来不安の高まりによる消費需要の停滞など国民生活の劣化にあるという視点。
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