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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証金融政策③ 経済の体温計は停止

2021-06-11 07:22:06 | 経済・産業・中小企業対策など
検証金融政策③ 経済の体温計は停止
東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん

日銀の金融政策の狙いは経済再生ですが、そのためには経済停滞の原因を見極める必要があります。日銀によれば経済が停滞しているのは企業収益が停滞しているからで、それは物価が停滞しているから。物価が停滞しているのは世の中にお金が流れていないためだといいます。そこで、低金利政策や量的金融緩和で世の中にお金を流し込めばいいという判断です。つまり、経済停滞は貨幣的現象だというわけです。

お金を流し込む
日銀は世の中にお金を流せば、物価がつり上がり、いくつかの経路を通じて経済を活性化させるとします。
つまり、①物価が上昇すれば国民は経済が良くなったと錯覚し消費を増やす②物価の上昇は企業収益を増やし投資を増やす。とりわけ、大企業の収益や投資を増やし、それによって中小企業も恩恵を受ける③物価が上昇すれば株価や土地などの資産価格も上昇し消費が増える④物価が上昇すれば実質金利(名目金利マイナス物価予想上昇率)が下がり(預金の目減りが起き、借り入れが有利になり投資意欲が高まる)、投資を拡大する効果があるーなど。そのため、日銀は物価のつり上げに執着し、消費者物価が2%程度上昇するまで世の中にお金を大量に流し込もうとしたのです。
日銀がとった方法は主に低金利で金融機関にお金を流し込むとともに、金融機関が保有する国債などを大量に購入して金融機関にお金を流し、そこから世の中にお金を流し込むというもの。それで物価が上昇し経済を活性化できるといいます。人工的にインフレを引き起こそうというわけです。大量の国債購入で国債価格をつり上げ、長期金利を低下させようとしました。長期金利の低下は、住宅ローン金利や企業の資金調達コストを引き下げ、国の国債利払い負担の軽減にも寄与します。



東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区

効果なく弊害が
しかし、各種経済指標は日銀の金融政策が効果を発揮していないことを示しています。それどころか、金融政策は数々の弊害をもたらしています。実質国内総生産(GDP)は、2014年度に消費税率引き上げで0・4%減と落ち込み、その後も1%を挟んだ低成長です。19年度は0・5%減、20年度にはコロナ禍の影響もあり4・6%減と戦後最大の落ち込みを記録しました。失業率も00年代の5%台から13年には3%台に、17年には2%台に低下しましたが、中身は非正規労働者の増大によるもの。実質賃金も12年から15年まで4年連続で減少。16年にわずか0・4%上昇した後、20年までマイナスで低迷しています。
当然ながら、消費支出も低迷し、14年度5・1%減と落ち込んだ後も17年度0・3%増、18年度0・0%増を除き今日まで大幅な減少を続けています。消費支出の低迷は物価にも反映。消費者物価は16年度0・2%減、20年度0・4%減とマイナスを記録。それ以外の年も0%台の低い伸びで、日銀目標の2%に遠く及びません。
円相場も徐々に円安に向かいましたが、これは日本の貿易赤字を背景にしたもので、日銀の金融緩和策によるものとは言えません。
日銀の金融緩和策は国債購入を通じて長期金利を引き下げました。しかし、長期金利は長い間ゼロ%水準に抑え込まれたままで、経済の体温計としての機能を停止。住宅ローン増大にも結び付いていません。さらに、金融緩和策は株価をつり上げたとはいえ、株式市場を「官製相場」に変えてしまい、長期金利同様、経済実態を図る尺度として使えなくなってしまいました。
結局、日銀が大量のお金を流し込んでも、世の中に流れず銀行などにたまり続け、物価も上昇せず、先進国の中で唯一、一度も緩和策からの出口に向かうこともできずにいます。
揚げ句、低金利、低インフレ、低成長を続ける日本経済に対して、世界の金融当局から「日本化現象」と言われるありさまです。日本のようになりたくないというわけです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙  2021年6月10日付掲載


日銀は世の中にお金を流せば、物価がつり上がり、いくつかの経路を通じて経済を活性化させるとします。
しかし、風が吹いても桶屋は儲からなかった。
長期金利は長い間ゼロ%水準に抑え込まれたままで、経済の体温計としての機能を停止。株式市場を「官製相場」に変えてしまい、長期金利同様、経済実態を図る尺度として使えなくなった。
いくら日銀が金融政策しても実体経済は温まらない。

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