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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資本主義の病巣 君臨するアマゾン⑦ 出版文化脅かす無法

2018-08-13 06:37:35 | 経済・産業・中小企業対策など
資本主義の病巣 君臨するアマゾン⑦ 出版文化脅かす無法
街の書店が消えつつあります。
全国の書店数は2017年5月時点で1万2526店。2000年5月の2万1654店から42%も減りました(株式会社アルメディア調べ)。
書籍・雑誌の推定販売額は、ピークの2兆6564億円(1996年)から1兆3701億円(2017年)へ、ほぼ半減しました。(全国出版協会・出版科学研究所調べ)
「インターネットの普及で情報の取り方が変わり、書籍・雑誌の市場が縮小する中で、アマゾン独り勝ちの状況が生まれています」



日本出版協議会(出版協)の水野久会長(写真、晩成書房社長)は「世界最大のオンライン書店」アマゾンの隆盛を複雑な思いで見ています。アマゾンが日本に上陸したのは2000年。いまや紙の本の市場の1割を握り、「日本最大の書店」になったといわれます。
「アマゾンのシステムが便利なのは確かです。公平な競争で売り上げを伸ばしたのなら文句はないのですが」

ルールに違反
水野さんが懸念するのは、アマゾンが不公平な実質値下げを続けていることです。大学生などを対象に本の価格の10%をポイントで還元する有料会員サービス「プライム・スチューデント」です。
有料といっても会費は6カ月間無料。6カ月経過後も通常のプライム会員の半額(年1900円)です。インターネットで映画が見放題。当日や翌日に商品を配送する「お急ぎ便」が無料で使い放題。その上、本の10%還元という学生限定の特典が付くのです。破格の優遇は学生を常連客に育てて囲い込む思惑の表れです。しかし、10%もの実質値引きは出版業界のルールに違反しています。
本は出版社が決めた定価で売るというルールで流通しています。再販制(再販売価格維持制度)と呼ばれ、出版社と取次(卸売業者)、取次と書店が個別に契約を結んでいます。
定価販売を義務付けるのは出版文化の多様性を維持するためです。日用品と違い、読者は同じ本を何度も買いません。重要なのは多様な本が世に出ることです。市場任せにすると、売れ筋でない本の価格が暴落して出版されにくくなります。
定価販売というルールの下で競争しているのに、抜け駆けの廉売で顧客を奪う大型店があれば、ルールを守る店の売り上げが落ちるのは自明です。
出版協は12年10月に10%還元の即時中止をアマゾンジャパンへ申し入れました。しかしアマゾンの対応は「回答そのものを拒否するという、門前払いの内容で不誠実きわまりないもの」(出版協)でした。アマゾンはその後、最大10%還元を一般消費者に広げ、学生には最大20%値引きしました。出版協は声明で批判しました。
「再販契約に違反したポイントサービスは、リアル書店を大量に廃業に追い込み、中小取次の危機を加速している」(15年12月)

再販制を崩す
いまアマゾンは「取次外し」という究極の「再販制崩し」の挙に出て、出版業界に衝撃を与えています。17年4月以降、取次を介さない直接取引を出版社に呼び掛け、35回以上の説明会を開きました。その際、取次に在庫のない本を出版社から取り寄せる従来の取引の停止を発表。出版社を兵糧攻めしています。水野さんはいいます。
「再販契約のない直接取引では定価販売が守られません。再販契約の下で販売する書店は圧倒的に不利な状況に置かれます。アマゾンは定価の66%で買い取るという特別条件で出版社を誘惑していますが、後日変更される可能性があります。アマゾン依存が強まり、買い取り条件を引き下げられれば、出版社は定価を上げるしかない。本の価格が高くなる恐れもあります」
平然とルールを破る多国籍企業によって、日本の書店と出版文化はかつてない危機に追い込まれています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月4日付掲載


独占的な取引で、有利に販売を進めるアマゾン。せめて、「再販制度」という出版界のルールを守るべきです。


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