法人税減税の実態① 穴埋めに消えた消費税
日本では大企業ほど税負担が減る傾向があります。そのからくりについて、不公平な税制をただす会共同代表を務める税理士の菅隆徳さんが解説します。(寄稿)
不公平税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
1989年に消費税が導入されてから35年になります。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入されました。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというものです。消費税が導入された後も、財界は法人税減税と消費税増税を繰り返し要求してきました。その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税されています。これによって、大企業と富裕層は潤い、中小企業と庶民は消費税の重みに苦しんできた―。これがよく言われる「失われた30年」の実態ではないでしょうか。
国の税収の推移(兆円)
国税庁ホームページ「一般会計税収の推移」等をもとに、菅隆徳税理士が作成
「減税は失敗」
最近この法人税減税というのは失敗だったのではないかということが話題になっています。昨年12月に発表された2024年度の「与党税制改正大綱」は、法人税の引き下げで前向きな投資や継続的・積極的な賃上げを目指してきたものの賃金や国内投資は低迷し、企業の内部留保や現預金が大幅に増える結果となったとして、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」「法人税の税収力が低下している」と失敗を認めています。
この法人税減税の実態について一目でわかるグラフを作りました。消費税が導入されてから30年間で、法人税率、法人所得、法人税収はどう変わったかを示したものです。
法人税というのは法人所得に課税されるものなので、法人所得が増えれば法人税収も必ず増えるはずです。ところが法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っているのです。なぜこういうことが起こるのでしょうか。
応分の負担を
第一に、法人税率を大幅に引き下げてきたことです。第二に、大企業優遇税制で、大企業が多額の減税となっていることです。第三に、法人税率が累進税率ではなく、一律23・2%の税率なので、大きな利益を上げている大企業には応分の負担となっていないということです。
消費税導入30年の国の税収の税目別明細を比べると1990年度と2020年度で税収合計は約60兆円と、ほとんど変わらないのに、所得税収は6・8兆円減、法人税収は7・2兆円減、消費税収は16・4兆円増でした(表)。消費税収は法人税と所得税の減税の穴埋めに使われてしまったのです。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月6日付掲載
1989年に消費税が導入されてから35年に。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというもの。
その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税。
法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っている。
日本では大企業ほど税負担が減る傾向があります。そのからくりについて、不公平な税制をただす会共同代表を務める税理士の菅隆徳さんが解説します。(寄稿)
不公平税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
1989年に消費税が導入されてから35年になります。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入されました。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというものです。消費税が導入された後も、財界は法人税減税と消費税増税を繰り返し要求してきました。その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税されています。これによって、大企業と富裕層は潤い、中小企業と庶民は消費税の重みに苦しんできた―。これがよく言われる「失われた30年」の実態ではないでしょうか。
国の税収の推移(兆円)
税目 | 1990年度① | 2020年度② | 増減(②-①) |
所得税 | 26.0 | 19.2 | △6.8 |
法人税 | 18.4 | 11.2 | △7.2 |
小計 | 44.4 | 30.4 | △14.0 |
消費税 | 4.6 | 21.0 | 16.4 |
その他 | 11.1 | 9.4 | △1.7 |
税収合計 | 60.1 | 60.8 | 0.7 |
「減税は失敗」
最近この法人税減税というのは失敗だったのではないかということが話題になっています。昨年12月に発表された2024年度の「与党税制改正大綱」は、法人税の引き下げで前向きな投資や継続的・積極的な賃上げを目指してきたものの賃金や国内投資は低迷し、企業の内部留保や現預金が大幅に増える結果となったとして、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」「法人税の税収力が低下している」と失敗を認めています。
この法人税減税の実態について一目でわかるグラフを作りました。消費税が導入されてから30年間で、法人税率、法人所得、法人税収はどう変わったかを示したものです。
法人税というのは法人所得に課税されるものなので、法人所得が増えれば法人税収も必ず増えるはずです。ところが法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っているのです。なぜこういうことが起こるのでしょうか。
応分の負担を
第一に、法人税率を大幅に引き下げてきたことです。第二に、大企業優遇税制で、大企業が多額の減税となっていることです。第三に、法人税率が累進税率ではなく、一律23・2%の税率なので、大きな利益を上げている大企業には応分の負担となっていないということです。
消費税導入30年の国の税収の税目別明細を比べると1990年度と2020年度で税収合計は約60兆円と、ほとんど変わらないのに、所得税収は6・8兆円減、法人税収は7・2兆円減、消費税収は16・4兆円増でした(表)。消費税収は法人税と所得税の減税の穴埋めに使われてしまったのです。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月6日付掲載
1989年に消費税が導入されてから35年に。消費税は「直間比率の是正」を口実に、国民の反対を押し切って導入。福祉社会を確実なものとして維持するため、国民に広く薄く負担してもらう消費税を導入して、直接税である法人税、所得税を引き下げるというもの。
その結果、消費税が導入されてから35年で、法人税率は当時の40%から現在では23・2%へ半減、消費税は3%で導入されたものが10%まで増税。
法人所得は1989年に46兆円だったものが2021年には99兆円と倍増しているのに、法人税収は19兆円から14兆円へと逆に減っている。
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