安保改定60年 第3部⑤ グアム移転 既に2300億円提供
日本国民の税金を使った米軍基地整備は、2006年の在日米軍再編計画に基づく在沖縄海兵隊のグアム移転で新たな段階に入りました。
前代未聞の負担
日本政府は「沖縄の負担軽減」を口実に、米領グアムに最新鋭の海兵隊基地の提供を約束。これは総額86億ドルのうち上限28億ドルを負担するものとなります。
日本政府は既に2298億円を米政府に提供しました。今年度は404億円を提供する計画で、これを加えれば2702億円に達します。将来的な返還がありうる在日米軍基地とは違い、グアムの基地インフラは米国の資産になります。米領内の基地建設のための資金提供は前代未聞です。
日本が提供した資金に基づくグアムの基地建設事業は、海軍コンピューター・通信基地(フィネガヤン地区)内の司令部塔や庁舎、下士官用隊舎、生活関連施設などに加え、南アンダーセン地区やテニアン島での戦闘・射撃訓練場なども含まれています。(地図)
日米両政府は06年5月に米軍普天間基地(沖縄県)の名護市辺野古への「移設完了」を条件に、米海兵隊のグアム移転で合意。しかし、沖縄県民のたたかいで辺野古新基地建設が進まず、12年4月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、新基地建設の進展にかかわらずグアム移転を進める方針に転換しました。在沖縄海兵隊の定数1万9千人のうち9千人を国外移転。うち4千人をグアムに、5千人をハワイなどに移転するとしています。ただ、これらは机上の配分にすぎず、実際の駐留規模は流動的です。
本質は拠点強化
グアムへの海兵隊移転の本質は「沖縄の負担軽減」ではなく、アジア太平洋地域における出撃拠点としての基地強化です。12年の2プラス2共同発表は、アジア太平洋地域において米軍を地理的に分散させて抑止力を強化し、「戦略的な拠点としてのグアムの発展を促進する」と明記。米軍は中国の弾道ミサイル能力の向上や海洋進出を念頭に、兵力を西太平洋に分散配備する戦略を進めており、その一つ灘がグアムの基地強化です。ーそのために国民の税金を漁使うことは、日本の主権を撒揺るがす行為です。
米国の不正義こそ問題
グアム基地強化に反対する住民団体 モネッカ・フローレスさんに聞く
西太平洋の戦略的要衝であるグアムは、米軍基地が面積の3分の1を占める「基地の島」です。住民の間には、沖縄からの海兵隊移転による「経済効果」への期待の一方、生活環境の悪化への懸念も強まっています。グアムの基地強化に賢驚反対する住民団体「プルテヒ・リテクザン(リテクザンを守れ)」のモネッカ・フローレスさんに思いを聞きました。
◇
水、森、歴史壊す
最も懸念されるのが水源への影響です。米軍が新しい井戸を建設し、島の主な水源である帯水層から毎日約4540トンの水をくみ上げようとしています。その帯水層の真上に実弾射撃訓練場も造られ、実弾の鉛や発射火薬、消火剤などで汚染される危険があります。きれいな水は基本的人権であり、帯水層の破壊は私たちの人権の侵害です。
また、数千人の海兵隊員が押し寄せることで、犯罪の増加や家賃上昇、インフラの負担増など数多くの社会的影響も懸念されます。
基地や訓練場の建設のために約493ヘクタールの森林が伐採されています。建設作業中にグアムの先住民族チャモロ人の遺跡や埋葬地が新たに発見されました。今回初めて発見された歴史的価値のある貴重な遺物も見つかっています。(グアム先住民の)私たちチャモロ人にとって祖先が眠る場所は神聖な土地です。しかし、米軍は遺跡を破壊し、祖先の遺骨を紙袋に入れて保管していました。
グアム北西部に建設が予定されている射撃訓練場(グアム・米軍移転に関する環境影響評価書から)
「ラッテストーン」という石柱などのチャモロ人の遺跡が残るリテクザン(提供写真)
沖縄の人と連携
アンダーセン空軍基地の北西部に隣接するリテクザンでは、絶滅危惧種を含む多くの動植物が生息し、祖先の暮らしを伝える遺跡や埋葬所、壁画が残っている聖地です。そこに射撃訓練場が建設されようとしています。
グアムの住民は政治的な権利や自治を制限され、米国の植民地とされています。
「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動にみられるように、米国の白人至上主義と資本主義が大きな問題です。米国で起きている警察による暴力、人種差別主義、白人至上主義は全て植民地化・軍事化とつながっており、資本主義がこの抑圧をささえています。
「沖縄の海兵隊をどこに移すか」ではなく、この体制を解体させ、米国の不正義をやめさせなければなりません。海兵隊の行くべき場所はありません。
日本政府にはご自身の国民の声を聴いてほしい。沖縄の方々は米軍基地による暴力や戦争リスクに反対して声を上げてきました。私たちは高江「ヘリパッドいらない」住民の会など沖縄の方々と連携し、今後も活動していきます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月19日付掲載
沖縄の基地をグアムに移転するのに日本の税金が使われるだけではない。
基地が作られる地域に先住民の遺跡がある。絶滅危惧種を含む動植物が生息する。
日本の税金でそれらを破壊することになるんです。
日本国民の税金を使った米軍基地整備は、2006年の在日米軍再編計画に基づく在沖縄海兵隊のグアム移転で新たな段階に入りました。
前代未聞の負担
日本政府は「沖縄の負担軽減」を口実に、米領グアムに最新鋭の海兵隊基地の提供を約束。これは総額86億ドルのうち上限28億ドルを負担するものとなります。
日本政府は既に2298億円を米政府に提供しました。今年度は404億円を提供する計画で、これを加えれば2702億円に達します。将来的な返還がありうる在日米軍基地とは違い、グアムの基地インフラは米国の資産になります。米領内の基地建設のための資金提供は前代未聞です。
日本が提供した資金に基づくグアムの基地建設事業は、海軍コンピューター・通信基地(フィネガヤン地区)内の司令部塔や庁舎、下士官用隊舎、生活関連施設などに加え、南アンダーセン地区やテニアン島での戦闘・射撃訓練場なども含まれています。(地図)
日米両政府は06年5月に米軍普天間基地(沖縄県)の名護市辺野古への「移設完了」を条件に、米海兵隊のグアム移転で合意。しかし、沖縄県民のたたかいで辺野古新基地建設が進まず、12年4月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、新基地建設の進展にかかわらずグアム移転を進める方針に転換しました。在沖縄海兵隊の定数1万9千人のうち9千人を国外移転。うち4千人をグアムに、5千人をハワイなどに移転するとしています。ただ、これらは机上の配分にすぎず、実際の駐留規模は流動的です。
本質は拠点強化
グアムへの海兵隊移転の本質は「沖縄の負担軽減」ではなく、アジア太平洋地域における出撃拠点としての基地強化です。12年の2プラス2共同発表は、アジア太平洋地域において米軍を地理的に分散させて抑止力を強化し、「戦略的な拠点としてのグアムの発展を促進する」と明記。米軍は中国の弾道ミサイル能力の向上や海洋進出を念頭に、兵力を西太平洋に分散配備する戦略を進めており、その一つ灘がグアムの基地強化です。ーそのために国民の税金を漁使うことは、日本の主権を撒揺るがす行為です。
米国の不正義こそ問題
グアム基地強化に反対する住民団体 モネッカ・フローレスさんに聞く
西太平洋の戦略的要衝であるグアムは、米軍基地が面積の3分の1を占める「基地の島」です。住民の間には、沖縄からの海兵隊移転による「経済効果」への期待の一方、生活環境の悪化への懸念も強まっています。グアムの基地強化に賢驚反対する住民団体「プルテヒ・リテクザン(リテクザンを守れ)」のモネッカ・フローレスさんに思いを聞きました。
◇
水、森、歴史壊す
最も懸念されるのが水源への影響です。米軍が新しい井戸を建設し、島の主な水源である帯水層から毎日約4540トンの水をくみ上げようとしています。その帯水層の真上に実弾射撃訓練場も造られ、実弾の鉛や発射火薬、消火剤などで汚染される危険があります。きれいな水は基本的人権であり、帯水層の破壊は私たちの人権の侵害です。
また、数千人の海兵隊員が押し寄せることで、犯罪の増加や家賃上昇、インフラの負担増など数多くの社会的影響も懸念されます。
基地や訓練場の建設のために約493ヘクタールの森林が伐採されています。建設作業中にグアムの先住民族チャモロ人の遺跡や埋葬地が新たに発見されました。今回初めて発見された歴史的価値のある貴重な遺物も見つかっています。(グアム先住民の)私たちチャモロ人にとって祖先が眠る場所は神聖な土地です。しかし、米軍は遺跡を破壊し、祖先の遺骨を紙袋に入れて保管していました。
グアム北西部に建設が予定されている射撃訓練場(グアム・米軍移転に関する環境影響評価書から)
「ラッテストーン」という石柱などのチャモロ人の遺跡が残るリテクザン(提供写真)
沖縄の人と連携
アンダーセン空軍基地の北西部に隣接するリテクザンでは、絶滅危惧種を含む多くの動植物が生息し、祖先の暮らしを伝える遺跡や埋葬所、壁画が残っている聖地です。そこに射撃訓練場が建設されようとしています。
グアムの住民は政治的な権利や自治を制限され、米国の植民地とされています。
「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動にみられるように、米国の白人至上主義と資本主義が大きな問題です。米国で起きている警察による暴力、人種差別主義、白人至上主義は全て植民地化・軍事化とつながっており、資本主義がこの抑圧をささえています。
「沖縄の海兵隊をどこに移すか」ではなく、この体制を解体させ、米国の不正義をやめさせなければなりません。海兵隊の行くべき場所はありません。
日本政府にはご自身の国民の声を聴いてほしい。沖縄の方々は米軍基地による暴力や戦争リスクに反対して声を上げてきました。私たちは高江「ヘリパッドいらない」住民の会など沖縄の方々と連携し、今後も活動していきます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年8月19日付掲載
沖縄の基地をグアムに移転するのに日本の税金が使われるだけではない。
基地が作られる地域に先住民の遺跡がある。絶滅危惧種を含む動植物が生息する。
日本の税金でそれらを破壊することになるんです。
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