資本主義の病巣 日本をカットした日産⑤ 株価上昇「唯一の使命」
日産自動車の工場閉鎖で、労働者の人生は狂い、地域経済、日本経済は大打撃を受けました。それは、カルロス・ゴーン被告にとって大成功を意味しました。日産の株価が上がったからです。ゴーン被告自身が述べています。
「上場企業の唯一の使命は、長期にわたり持続的に企業価値を創造することです。日産も企業価値創造を使命としており、当社の時価総額は、1999年度末のおよそ1兆2000億円から2005年度末には6兆3000億円に増加しました」(日産「アニュアルレポート2005 CEOメッセージ」)
ゴーン被告が考える「上場企業の唯一の使命」は、自社株式の時価総額を増加させることだったのです。
日産自動車の村山工場跡地=東京都武蔵村山市
「株主資本主義」
「ゴーン流経営の本質である『株主資本主義』を露骨に言い表した言葉です」と、下関市立大学の関野秀明教授は指摘します。
「日産は株価をつり上げ株式時価総額を増大させるために、増配(株主配当金の増大)や自社株買いを繰り返してきました」
ゴーン被告が「リバイバルプラン」に着手した1999年度以降、日産は株主配当金を増やし続けます。2008年度のリーマン・ショックでいったん減らしたものの、10年度以降は再び連続増配に転じました。連動して株式時価総額も増大してきました。(図)
日産の株主配当金(年額)は、1997年度以降の20年間で1822億円も増えて、8倍になりました。派遣切りにした年収300万円程度の社員を数万人規模で雇える額です。
こうしたゴーン流経営から利益を得てきた株主の多くが外国人です。日産の株式の62%を外国人が支配しています。筆頭株主である仏自動車大手ルノーが日産株式の43・7%(17年度)を保有しています。
ゴーン被告自身も日産の株主です。17年度には313万9千株を保有し、1億6637万円の配当金を得ました。ゴーン被告が日産、ルノー三菱自動車から得た配当金と役員報酬の総額は6年間で約113億円にのぼります。(表)
2012年~17年 ゴーン被告の役員報酬と受取配当金額(円)
1ユーロ=123.7円で計算
国内生産弱める
日産が株主配当金の増加にあてた利益は、人件費を中心とする「コスト」の削減で生み出したものでした。関野さんは話します。
「株主の利益を最優先にした結果、日産は目先の利益拡大を求めて海外への生産移転を進め、国内生産体制を弱めました。国内での技術革新力、生産管理能力、市場販売力を後退させる結果を招きました。ゴーン流経営の矛盾は、日産の経営と相いれない次元にまで高まっていたといえます」
会社と労働者を、株主の私利私欲を満たすための道具としか見ない強欲資本主義。その哲学のとりことなり反社会的なリストラを強行したゴーン被告は、結局、違法行為にまで手を染めた疑いで逮捕、起訴されたのでした。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月24日付掲載
人件費削減によるコストの削減で生み出した利益。
当然のことながら、労働者の賃金には還元されず、株価や役員報酬に還元された。
日産自動車の工場閉鎖で、労働者の人生は狂い、地域経済、日本経済は大打撃を受けました。それは、カルロス・ゴーン被告にとって大成功を意味しました。日産の株価が上がったからです。ゴーン被告自身が述べています。
「上場企業の唯一の使命は、長期にわたり持続的に企業価値を創造することです。日産も企業価値創造を使命としており、当社の時価総額は、1999年度末のおよそ1兆2000億円から2005年度末には6兆3000億円に増加しました」(日産「アニュアルレポート2005 CEOメッセージ」)
ゴーン被告が考える「上場企業の唯一の使命」は、自社株式の時価総額を増加させることだったのです。
日産自動車の村山工場跡地=東京都武蔵村山市
「株主資本主義」
「ゴーン流経営の本質である『株主資本主義』を露骨に言い表した言葉です」と、下関市立大学の関野秀明教授は指摘します。
「日産は株価をつり上げ株式時価総額を増大させるために、増配(株主配当金の増大)や自社株買いを繰り返してきました」
ゴーン被告が「リバイバルプラン」に着手した1999年度以降、日産は株主配当金を増やし続けます。2008年度のリーマン・ショックでいったん減らしたものの、10年度以降は再び連続増配に転じました。連動して株式時価総額も増大してきました。(図)
日産の株主配当金(年額)は、1997年度以降の20年間で1822億円も増えて、8倍になりました。派遣切りにした年収300万円程度の社員を数万人規模で雇える額です。
こうしたゴーン流経営から利益を得てきた株主の多くが外国人です。日産の株式の62%を外国人が支配しています。筆頭株主である仏自動車大手ルノーが日産株式の43・7%(17年度)を保有しています。
ゴーン被告自身も日産の株主です。17年度には313万9千株を保有し、1億6637万円の配当金を得ました。ゴーン被告が日産、ルノー三菱自動車から得た配当金と役員報酬の総額は6年間で約113億円にのぼります。(表)
2012年~17年 ゴーン被告の役員報酬と受取配当金額(円)
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 合計 | |
日産報酬 | 9億8800万 | 9億9500万 | 10億3500万 | 10億7100万 | 10億9800万 | 7億3500万 | 59億2200万 |
ルノー報酬 | 4億5008万 | 2億8346万 | 7億1101万 | 7億3253万 | 7億5335万 | 7億7665万 | 37億708万 |
三菱自報酬 | ― | ― | ― | ― | ― | 2億2700万 | 2億2700万 |
日産配当 | 7778万 | 9351万 | 1億303万 | 1億3138万 | 1億5038万 | 1億6637万 | 7億2245万 |
ルノー配当 | 4366万 | 5430万 | 5998万 | 9061万 | 2億960万 | 2億3622万 | 6億9437万 |
三菱自配当 | ― | ― | ― | ― | 0.4万 | 20万 | 20万 |
合計 | 15億5952万 | 14億2627万 | 19億902万 | 20億2552万 | 22億1133万 | 21億4144万 | 112億7310万 |
国内生産弱める
日産が株主配当金の増加にあてた利益は、人件費を中心とする「コスト」の削減で生み出したものでした。関野さんは話します。
「株主の利益を最優先にした結果、日産は目先の利益拡大を求めて海外への生産移転を進め、国内生産体制を弱めました。国内での技術革新力、生産管理能力、市場販売力を後退させる結果を招きました。ゴーン流経営の矛盾は、日産の経営と相いれない次元にまで高まっていたといえます」
会社と労働者を、株主の私利私欲を満たすための道具としか見ない強欲資本主義。その哲学のとりことなり反社会的なリストラを強行したゴーン被告は、結局、違法行為にまで手を染めた疑いで逮捕、起訴されたのでした。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月24日付掲載
人件費削減によるコストの削減で生み出した利益。
当然のことながら、労働者の賃金には還元されず、株価や役員報酬に還元された。
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