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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証金融政策① 逆立ちしている日銀

2021-06-16 07:23:39 | 経済・産業・中小企業対策など
検証金融政策① 逆立ちしている日銀
日銀が掲げる2%の物価上昇率目標を黒田東彦総裁の任期中(2023年4月まで)に実現することは絶望的となりました。何が間違っていたのか。金融政策はどうあるべきか。群馬大学名誉教授の山田博文さんに寄稿してもらいました。

群馬大学名誉教授・山田博文さん

私たちは財布を持ち歩き、銀行の預貯金を利用し、マネーに囲まれて暮らしているのに、マネーのあり方に影響を与える金融政策となると、あまりなじみがありません。
でも、歴史的な金融緩和政策が続き、金融経済が膨張して、実体経済の数倍になり、バブル崩壊やリーマン・ショックなどで世界中が振り回されています。
適切な金融政策が実施されることは、安定した暮らしや経済にとって不可欠です。

物価目標は破綻
通貨および金融の調節を行う金融政策は、中央銀行(日本銀行)が担当します。その本来の目的や機能などは表の通りです。
一見して気づくのは、物価を2%引き上げるという日銀の金融政策は、本来の政策とは逆立ちしていることです。というのも「物価の安定」とは、国民生活を破壊し、経済を混乱させるインフレ・物価高を防止することでした。2%も物価を上げようとする日銀の政策は逆立ちしており、生活目線にも反しています。
日銀の言い分は、持続的に物価が下がる「デフレ不況からの脱却」を図ることでした。日銀は13年4月以来、大量のマネーを供給する異次元金融緩和政策を続けてきました。でも「2%物価目標」は実現せず、経済も成長せず、日銀と政府の経済目標はことごとく破綻しています。
そもそも、日本で持続的に物価が下がるのは金融政策のせいではありません。賃金の削減、消費税率の引き上げなどで、国民の所得が抑え込まれ、消費が冷え込んで、消費不況が発生しているからです。国民の所得を増やし、消費需要を大きくすることが「デフレ不況からの脱却」の道です。これは、日銀でなく企業や政府のやることです。
実体経済の動向を無視し、日銀が供給する貨幣量の増減が物価の上昇や下落の原因と考える「貨幣数量説」は、学説でも実証でも誤りであることが検証されています。



東京都中央区の日銀本店

日本銀行の目的・機能と金融政策
二つの目的
日銀法第1条、2条
「物価の安定」=生活を破壊するインフレ・物価高の防止
「金融システムの維持」=金融恐慌を招く銀行倒産の防止
三つの機能「発券銀行」=千円札など日本銀行券を発行し、民間銀行と日本銀行券を受け払いして企業や家計の現金需要に応える
「銀行の銀行」=民間銀行から日銀内に当座預金口座を受け入れ、口座振替によって銀行間の資金決済を行う。国債取引に伴う受け渡しを帳簿上の口座振替などで処理する。銀行倒産を防止する最後の貸し手となる
「政府の銀行」=政府の歳出入などで使用される国庫金(国の資金)の出納・計理・管理の事務処理を担当する
金融政策のあり方―
その手段と効果
金融緩和政策vs金融引き締め政策
公開市場操作民間銀行の当座預金口座から国債や手形を買い入れて資金を供給し金融を緩和民間銀行に国債や手形を売却し当座預金口座から資金を引き揚げて金融を引き締め
政策金利操作引き下げ=預金・貸出金利が低下し、借り入れや投資が活発化引き上げ=預金・貸出金利が上昇し、借り入れや投資が停滞化
想定する経済効果(実体経済の動向に影響される)低利なマネーが供給され、インフレ、円安、景気刺激、バブル経済などが活発化マネーが引き揚げられるので過熱した景気、インフレ、バブル経済などが沈静化する
日本銀行ホームページなどから筆者作成


別物の「マネー」
異次元金融緩和政策は、日銀が民間銀行から年間100兆円前後という巨額の国債を買い入れ、その代金を日銀内に置かれた民間銀行当座預金口座に入金するやり方で実施されます。
でも、日銀から民間銀行に供給されたマネー(マネタリーベース=民間銀行の日銀当座預金と紙幣・貨幣の発行高)と、生産と消費を担う実体経済の現場で使用されるマネー(マネーストック=企業や家計が保有する現金と銀行預金)とは別物です。
マネタリーベースが市中に流入してマネーストックになるためには、企業や家計が事業拡張や住宅建設や消費のために銀行から借り入れたりしてマネーを引き出さなければなりません。景気の過熱や物価の上昇をもたらすのはマネーストックです。その動向は、日銀でなく、実体経済の担い手である企業と家計の行動で決まります。
米国では、企業と家計が借金をしてでも投資や消費に走ります。しかし、日本では増税や賃金カットやリストラの不安で、消費が萎縮し、企業が利益すら投資に向けずに内部留保金としてため込んでいます。これでは、マネーストックは増えようがなく、「デフレ不況」が続かざるをえません。
その上、日銀は民間銀行の日銀当座預金残高の一部に0・1%の利子をつけ、年間約2000億円も支払っています。民間銀行は、不良債権化するリスクのある企業や家計に貸し出すより、日銀当座預金に積んで利子をもらう選択をしますから、マネーストックは増えません。日銀は一方で金融を緩和し、他方で引き締めるダブルスタンダード(二律背反)の政策を実施しています。(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月15日付掲載


そもそも、日本で持続的に物価が下がるのは金融政策のせいではありません。賃金の削減、消費税率の引き上げなどで、国民の所得が抑え込まれ、消費が冷え込んで、消費不況が発生しているから。
景気の過熱や物価の上昇をもたらすのはマネーストックです。その動向は、日銀でなく、実体経済の担い手である企業と家計の行動。
日銀政策はボタンの掛け違え。

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