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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証金融政策⑤ 独占支配かSDGsか

2021-06-20 07:27:48 | 経済・産業・中小企業対策など
検証金融政策⑤ 独占支配かSDGsか
群馬大学名誉教授・山田博文さん

新型コロナウイルス禍で人命が失われ、失業と倒産の大波の中で、株価が記録的に上昇し、貧困と資産格差が拡大しています。主要国政府と中央銀行が昨年供給した資金は、世界の国内総生産(GDP)の3割強の約27兆ドル(2880兆円)に達し、世界の株価も85%ほど上昇したからでした。
アメリカ主導の日本版金融ビッグバン(大改革)は、日本の金融システムを貯蓄から投資のシステムに変換し、アメリカの金融大資本による日本支配が強まりました。金融ビジネスのあり方も変わりました。生産や投資のためでなく、手持ちのマネーを効率的に増やすため、価格・金利・為替の変動を利用し、その売買差益を狙う寄生的な投機活動が広がりました。

上位10社だけで
現代の金融ビジネス、特に債券や株式などの証券ビジネスは、グローバルに一体化し、世界のトップ10社(表)が市場の半分を支配するグローバルな金融寡頭制下で営まれています。ゴールドマン・サックスなど、米ウォール街の五大金融機関は世界の金融証券市場を独占的に支配しています。
インターネットや人工知能(AI)などの情報通信技術(ICT)を利用し、1秒間に数千回から1万回の売買を実行する超高速取引(HFT)は、時間と空間の制限を突破した地球的規模の金融ビジネスを可能にしました。このような体制を整備できる資金・技術・スタッフを持つごく少数の金融機関や投資家たちが、あっという間に巨万の利益を独り占めする時代です。わずか数十人のスーパーリッチの金融資産は低所得層に属する世界人口の半分の人々の金融資産に匹敵します。


巨大金融機関のグローバル市場支配(2020年度)
順位:金融機関名利益
(億ドル)
シエア(%)
1.JPモルガン(米)859.1
2.ゴールドマン・サックス(米)778.2
3.バンク・オブ・アメリカ証券(米)636.7
4.モルガン・スタンレー(米)626.6
5.シティ(米)475.1
トップ5位の小計33435.7
6.クレディ・スイス(スイス)404.3
7.バークレイズ(英)333.6
8.ドイツ銀行(独)232.5
9.ジェフェリーズ・グループ(米)222.3
10.UBS(スイス)181.9
トップ10位の小計47050.2
金融機関の合計936100.0
WSJ「Global Investment Banking Bank Ranking FY2020」から筆者作成。利益の内訳は、世界の株式市場、債券市場、M&A市場、IPOs市場、投資適格債やジャンク債市場からの利益

各国政府やグローバル企業相手の金融ビジネスは、閉鎖的なデジタル空間で行われるため金融犯罪の温床になっています。ギリシャの財政破綻の背後に米ウォール街の国債ビジネスがあり、これらの五大金融機関は、各国の政府に莫大(ばくだい)な賠償金を払いながらビジネスを続けています。米欧の中央銀行役員には、ゴールドマン・サックスの経営経験者が就任し、世界最大の年金積立金を運用する日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のトップにも就任しています。
主要国の財政金融当局は、世界のトップ30大銀行が破綻すると、世界経済が大混乱するので、「Too big to fail」(大き過ぎてつぶせない)措置を事実上採っていますが、これはグローバルな金融寡頭制を擁護する措置といえます。勝者独り占めで貧困と格差を拡大する「カジノ型金融独占資本主義」に貢献する金融政策から脱却するべきでしょう。



東京都中央区にある日銀本店の中庭

大きな転換必要
現代のような深刻な貧困と格差拡大の一端は金融政策のあり方にも起因しています。もうからないという理由で、人類の生存に直結する物やサービスの生産に直接関わる産業や地域の金融ニーズに応えず、目先の金銭的利益を追求する金融ビジネスや、国民経済・暮らし・地球環境を悪化させるような経済活動への資金供給は制限し、ペナルティーをかける金融政策が求められています。
貨幣経済から脱却しない限り、近未来にわたって金融政策は世界の経済社会や地球環境にも大きな影響を与えつづけます。国連が決定した2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」、すなわち、貧困と格差の解消、健康と福祉の増進、地球環境保全と平和な社会に向かう17のゴールと169のターゲットを実現するための金融政策や環境・社会・ガバナンス(ESG)を基準にした金融政策への大転換が求められているようです。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月19日付掲載


アメリカ主導の日本版金融ビッグバン(大改革)は、日本の金融システムを貯蓄から投資のシステムに変換し、アメリカの金融大資本による日本支配へ。
金融ビジネスのあり方も変わりました。生産や投資のためでなく、手持ちのマネーを効率的に増やすため、価格・金利・為替の変動を利用し、その売買差益を狙う寄生的な投機活動へ。
もうからないという理由で、人類の生存に直結する物やサービスの生産に直接関わる産業や地域の金融ニーズに応えず、目先の金銭的利益を追求する金融ビジネスや、国民経済・暮らし・地球環境を悪化させるような経済活動への資金供給は制限し、ペナルティーをかける金融政策が必要。

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