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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証金融政策④ 格差招く低金利と円安

2021-06-19 07:15:41 | 経済・産業・中小企業対策など
検証金融政策④ 格差招く低金利と円安
群馬大学名誉教授・山田博文さん

国民の多くが利用する普通預金金利は0・001%という歴史的に例のない超低金利のため、100万円を銀行に預金しても年間で受け取る利子はわずか10円です。それは、日銀が民間銀行の預金金利や貸出金利に影響を与える政策金利を操作し、バブル崩壊後の1995年に0・5%のゼロ金利水準へ、さらに2016年にマイナス0・1%というマイナス金利水準にまで引き下げてきたためです。

利子所得を削減
超低金利政策は、多くの国民の利子所得を削減(392兆円)し家計から銀行への巨額の所得移転をもたらしました。というのも、日本国民の金融資産の多くは、元本が保障され、利子がもらえる銀行預金として蓄えられているからです。他方、超低金利政策は貸出金利も下げたので、企業が調達する借入金や社債発行などの金利負担は大幅に軽減(571兆円)されました。政府は国債利払い費の引き下げを実現しました。ただ、資金運用の多くを貸し出しに依存する地域密着型の銀行は金利低下にともない経営を悪化させてきました。
超低金利政策は、株式などの金融資産価格を上昇させるので、金融資産を大量に保有する企業や富裕層などの資産増大に貢献しました。というのも、国債や株式のような価値の実体のない有価証券(架空資本)の価格は、受け取る収益(利子や配当金)を平均利子率で資本還元する計算により形成されますから、利子率が下がると価格は上昇します。例えば、1万円の収入をもたらす有価証券の価格は利子率が4%なら25万円(=1万円÷4%)ですが、利子率が1%に下がると100万円(=1万円÷1%)に上昇します。
そのようなわけで、現在のような超低金利政策は、多くの国民の利子所得を奪う一方で、企業の金利負担を軽減し、国債や株式を保有する企業や富裕層の資産を増大させる大資本・金持ち優遇政策といえます。純金融資産1億円以上の富裕層は2011年から19年の8年間で81万世帯から133万世帯へ増え、保有する純金融資産の総額は145兆円も増大しました。


円・ドルの相場の光と影
 円安
(1ドル=100円が120円へ)
円高
(1ドル=100円が80円へ)
①外国から1億ドルの商品を輸入するには、いくらの日本円が必要か円安前1億ドルの商品は100億円。円安で120億円出さないと買えなくなった(1億ドル×120)。この為替差損は輸入品の値上げで償うので物価高へ円高前1億ドルの商品は100億円。円高で80億円で買えた(1億ドル×80)。この為替差益は消費者にはほとんど還元されず輸入業者の利益へ
②外国への商品輸出で1億ドルを受け取り、国内で円に換金すると何円になるか円安前1億ドルは100億円。円安で120億円に増大した(1億ドル×120)。この為替差益はトヨタなど輸出大企業の利益に円高前1億ドルは100億円。円高で80億円へ減額した(1億ドル×80)。大企業は為替差損回避のため海外移転=国内産業の空洞化
③大資本や富裕層が保有する1億ドルの金融資産を日本円に換金すると、何円になるか1億ドルを円に換金すると円安以前は100億円。円安で120億円に増大(1億ドル×120)。対外投資で巨額の金融資産を持つ大資本や富裕層は大もうけ1億ドルを国内に持ち込むと円高以前は100億円。円高で80億円に減額(1億ドル×80)。対外資産を円に転換すると大損。海外からの対日投資も減る
(注)円・ドル相場とは円とドルとの交換比率のこと。日本の対外取引はほとんどがドル建て


日銀の地下金庫の扉(日銀ホームページから)

国民生活に打撃
異次元金融緩和政策は、日銀による大量国債の買い入れで国債金利(長期金利)をゼロ近傍に張り付け、日米長期金利格差を拡大し、投資マネーの円からドルへのシフトを加速させました。このため円とドルとの交換比率(為替相場)も、1ドル=86円から106円へ、大幅な円安となりました。この円安の意味は、86円で買えた1ドルの外国製品が今では106円も払わなければ買えなくなった、ということです。(表)
食料や原材料・資源を輸入する日本にとって、円安は輸入物価の上昇となって石油・ガス・食料品などの大幅値上げを招き、国民生活に打撃を与えています。他方で、外国は安くなった日本の製品や不動産をこの時とばかりに購入するので、トヨタ自動車など輸出産業の対外輸出は増大し、大幅な利益をもたらします。日本株や都心の不動産なども、円安による外国マネーの流入によって値上がりします。国内で株式や不動産を保有している大資本や富裕層の資産価格は上昇します。
それだけでなく、日本の対外資産のほとんどはドル建てで保有されていますから、円安は巨額の為替差益をもたらします。1億ドルの対外資産を円に換金すると、この間の円安で86億円から106億円に増大するからです。
このように、異次元金融緩和政策によって誘導された円安は、大資本と富裕層の利益を増大させる一方で、輸入物価高を招き、国民生活に困難をもたらしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月18日付掲載


円安になっても円高になっても、大企業や資産家は損しない仕組みになっている!?
円でしか生活できない一般庶民は、この間の円安で輸入物価高で生活苦。ゼロ金利でなけなしの貯金も目減りです。



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