「経労委報告」を読む③ 最賃上げ 全国一律制に
労働総研事務局長 藤田実さん
2000年代に入ってから非正規労働者が急増し、21年には2064万人、雇用者の36・6%を占めるようになっています。そのうち年収が200万円未満の非正規労働者は1489万人(7~9月期)を占め、非正規労働者の7割以上になっています。低賃金の非正規労働者は雇用者総数の26・5%(7~9月期)に上ります。
非正規労働者の賃金を底上げし、生活を安定させるために、最低賃金の引き上げが重要となります。それも現在のような地域ごとに分断された最低賃金ではなく、全国一律の最低賃金制度の導入が必要です。全労連の生計費調査で明らかになったように、地方も首都圏も生計費に大きな違いはないからです。最低賃金は労働者の最低生活を保障する水準でなければならないという観点からは、生計費に見合った金額にするのは当然だからです。
生計費見合わず
しかし、現在の最低賃金額は生計費に見合っていません。
例えば東京都の最低賃金1041円(時間額)では、月収16万314円(1041円×1日7時間×月22日)ですが、家計調査の単身勤労者世帯の消費支出は17万1593円ですから、消費支出以下です。
家計調査の実支出は23万5812円ですから、ここに到達するためには時給1531円(23万5812円÷22日÷7時間)となります。全労連などが主張する最低賃金1500円というのは、根拠のある数字なのです。
ところが、『経労委報告』は、最低賃金の引き上げに反対の姿勢をとっています。『経労委報告』は、改定後の最低賃金を下回る賃金で働いている労働者の割合を示す影響率を上げ、「最低賃金額で働いている労働者が多く、最低賃金引き上げが企業経営にダイレクトに影響を与える」と問題視しています。
しかし、影響率が高いということは、逆に最低賃金引き上げの効果が大きいということであり、最低賃金水準で働いている労働者の賃金を着実に引き上げることになります。
最低賃金を1500円に、と訴える全労連・国民春闘共闘の人たち=2021年7月8日、厚労省前
中小に支援必要
もちろん中小零細企業にとって最低賃金引き上げはコスト増となり、企業経営を圧迫することはありえます。したがって中小零細企業が最低賃金引き上げに伴うコスト増を製品・サービス価格に転嫁できるようにする必要があるし、政府による直接支援が必要です。
経団連に求められるのは、中小零細企業が最低賃金を引き上げられる環境整備に積極的に協力することです。
また『経労委報告』は、毎年のように特定最低賃金が地域別最低賃金を下回るという事実をあげて、その廃止を主張しています。特定最賃は、賃金が企業別で決められている日本で、産業別に賃金を決めるという点で大きな意義があります。特定最賃はその地域の産業別最賃となるので、同一産業で働く労働者の最低水準を決めることになるからです。
それは、地域の同一産業における公平な競争条件を決めることにもなります。
特定最賃は、企業別の労働条件を産業別で同一にするという産業別労働条件の平準化の突破口になりえるので、労働組合は特定最賃の引き上げにも力を入れる必要があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年2月19日付掲載
現在の最低賃金額は生計費に見合ってない。
例えば東京都の最低賃金1041円(時間額)では、月収16万314円(1041円×1日7時間×月22日)ですが、家計調査の単身勤労者世帯の消費支出は17万1593円ですから、消費支出以下。
家計調査の実支出は23万5812円ですから、ここに到達するためには時給1531円(23万5812円÷22日÷7時間)となります。全労連などが主張する最低賃金1500円というのは、根拠のある数字。
中小零細企業が最低賃金引き上げに伴うコスト増を製品・サービス価格に転嫁できるようにする必要があるし、政府による直接支援が必要。
政府としては、社会保険料の企業負担分への支援が求められます。
労働総研事務局長 藤田実さん
2000年代に入ってから非正規労働者が急増し、21年には2064万人、雇用者の36・6%を占めるようになっています。そのうち年収が200万円未満の非正規労働者は1489万人(7~9月期)を占め、非正規労働者の7割以上になっています。低賃金の非正規労働者は雇用者総数の26・5%(7~9月期)に上ります。
非正規労働者の賃金を底上げし、生活を安定させるために、最低賃金の引き上げが重要となります。それも現在のような地域ごとに分断された最低賃金ではなく、全国一律の最低賃金制度の導入が必要です。全労連の生計費調査で明らかになったように、地方も首都圏も生計費に大きな違いはないからです。最低賃金は労働者の最低生活を保障する水準でなければならないという観点からは、生計費に見合った金額にするのは当然だからです。
生計費見合わず
しかし、現在の最低賃金額は生計費に見合っていません。
例えば東京都の最低賃金1041円(時間額)では、月収16万314円(1041円×1日7時間×月22日)ですが、家計調査の単身勤労者世帯の消費支出は17万1593円ですから、消費支出以下です。
家計調査の実支出は23万5812円ですから、ここに到達するためには時給1531円(23万5812円÷22日÷7時間)となります。全労連などが主張する最低賃金1500円というのは、根拠のある数字なのです。
ところが、『経労委報告』は、最低賃金の引き上げに反対の姿勢をとっています。『経労委報告』は、改定後の最低賃金を下回る賃金で働いている労働者の割合を示す影響率を上げ、「最低賃金額で働いている労働者が多く、最低賃金引き上げが企業経営にダイレクトに影響を与える」と問題視しています。
しかし、影響率が高いということは、逆に最低賃金引き上げの効果が大きいということであり、最低賃金水準で働いている労働者の賃金を着実に引き上げることになります。
最低賃金を1500円に、と訴える全労連・国民春闘共闘の人たち=2021年7月8日、厚労省前
中小に支援必要
もちろん中小零細企業にとって最低賃金引き上げはコスト増となり、企業経営を圧迫することはありえます。したがって中小零細企業が最低賃金引き上げに伴うコスト増を製品・サービス価格に転嫁できるようにする必要があるし、政府による直接支援が必要です。
経団連に求められるのは、中小零細企業が最低賃金を引き上げられる環境整備に積極的に協力することです。
また『経労委報告』は、毎年のように特定最低賃金が地域別最低賃金を下回るという事実をあげて、その廃止を主張しています。特定最賃は、賃金が企業別で決められている日本で、産業別に賃金を決めるという点で大きな意義があります。特定最賃はその地域の産業別最賃となるので、同一産業で働く労働者の最低水準を決めることになるからです。
それは、地域の同一産業における公平な競争条件を決めることにもなります。
特定最賃は、企業別の労働条件を産業別で同一にするという産業別労働条件の平準化の突破口になりえるので、労働組合は特定最賃の引き上げにも力を入れる必要があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年2月19日付掲載
現在の最低賃金額は生計費に見合ってない。
例えば東京都の最低賃金1041円(時間額)では、月収16万314円(1041円×1日7時間×月22日)ですが、家計調査の単身勤労者世帯の消費支出は17万1593円ですから、消費支出以下。
家計調査の実支出は23万5812円ですから、ここに到達するためには時給1531円(23万5812円÷22日÷7時間)となります。全労連などが主張する最低賃金1500円というのは、根拠のある数字。
中小零細企業が最低賃金引き上げに伴うコスト増を製品・サービス価格に転嫁できるようにする必要があるし、政府による直接支援が必要。
政府としては、社会保険料の企業負担分への支援が求められます。
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