経済キーワード 加速する経済のデジタル化と岸田文雄政権の大軍拡路線
加速する経済のデジタル化と岸田文雄政権の大軍拡路線をキーワードで読み解きます
デュアルユース
■民生技術の軍事転用
両用という意味の英語「dual-use」の日本語読み。民生と軍事の双方に利用できる「軍民両用」技術のことです。
無人航空機ドローンや人工知能(AI)などの先端技術は日々の生活を便利にする一方、使う側の意図によって兵器にも活用され得る側面をもちます。
政府・自民党は、大学や研究機関で開発されている民生利用のための基礎研究を軍事開発へ転用しょうとしてきました。
岸田政権が昨年12月に改定した「国家防衛戦略」は、軍事体制の強化のため「府省横断的な仕組みの下、防衛省・自衛隊のニーズを踏まえ、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的に活用していく」と宣言しました。
軍産学複合体
■科学・技術を奉仕させる
軍事的組織と兵器産業が一体化した「軍産複合体」に学術界を巻き込んだ体制のこと。特定の国家や軍事のために科学・技術を奉仕させる仕組みです。
軍産複合体の中核である軍需産業は、地域紛争や国家間対立によって武器市場を広げます。武器の生産・輸出を進めるにあたり、他国より軍事的能力のある技術を有することが条件の一つです。その上で、高度な科学・技術を取り込むことは欠かせません。武器生産に携わる企業の科学者だけでなく、大学や研究機関の研究者を動員することでその目標を達成しようとします。
現在の戦闘領域は宇宙・サイバー・電磁波まで拡大しています。学術界に加え情報通信産業も軍産学複合体の一員です。
スタンド・オフ・ミサイル
■「敵基地攻撃」用の兵器
敵の射程圏外から他国の領域を攻撃できる長射程のミサイルで、憲法違反の敵基地攻撃を可能にする兵器です。
政府は「防衛力整備計画」の第1に同ミサイルの保有・配備を掲げ、運用部隊は全国に11個中隊を配備する計画です。沖縄県・宮古島などに配備中の「12式地対艦誘導弾」を射程千キロ以上に改修するとしています。
また、政府は2023年度予算案で、米長距離巡航ミサイル・トマホークの配備に2113億円を計上。同ミサイルは米軍需産業大手レイセオン社製で、オースティン米国防長官が同社役員を務めました。ミサイルの発射地点を隠すためにスタンド・オフ・ミサイルが発射可能な潜水艦の導入まで狙っています。
ハイブリッド戦争
■従来の「戦争状態」拡大
ハイブリッドは「混合」や「複合」という意味の英語「hybrid」の日本語読み。ハイブリッド戦争とは、兵器を使った物理的な戦闘に加え、インターネットの交流サイト(SNS)を利用した偽情報の流布や政治宣伝(プロパガンダ)、重要インフラを狙ったサイバー攻撃など、複数の手段を組み合わせて実行される軍事戦略のひとつです。
政府は、昨年12月に改訂された「国家安全保障戦略」でハイブリッド戦を「軍事目的遂行のために軍事的な手段と非軍事的な手段を組み合わせる」ものと定義しています。さらに同戦略は「軍事と非軍事、有事と平時の境目が曖昧にな(る)」と指摘。これは従来の「戦争状態」を拡大する概念です。
次世代半導体
■米中対立の主戦場
半導体の回路線幅でおもに「2ナノメートル(ナノは10億分の1)」「3ナノメートル」のものを指す先端半導体のこと。半導体産業では、回路線幅の微細加工技術を競うことでより多くのトランジスタ(電流増幅・切り替えの素材)を集積し、動作の高速化など性能を向上させてきました。
半導体は電化製品の制御を担い、パソコンやスマートフォンなど幅広い分野で使用されています。次世代半導体は大量破壊兵器やミサイルに転用可能で、米中対立の主戦場になっています。
日本政府は「経済安全保障法」の「特定重要物資」「特定重要技術」に位置づけ、日米共同の研究開発拠点の設立や特定企業への補助金など、開発・生産拠点の整備に巨額の資金を投じています。
インボイス
■業者に負担強いる制度
売買の際にやりとりされる書類で、適格請求書ともいいます。商品・サービスごとに金額のほか、適用税率と税額を記載。加えて税務署が課税業者に交付した登録番号を明記する必要があります。
消費税納税の際、課税業者は売り上げにかかる消費税から、仕入れにかかった消費税を控除します。10月にインボイス制度の導入が強行されると、課税業者は免税業者からの仕入れを控除できなくなります。免税業者は負担の増える課税業者になるか、取引を断られ巻かの選択が迫られます。
政府は①売上高1億円以下の業者なら1万円未満の取引をインボイス不要とする②免税業者から転換した課税業者は納税額を売り上げにかかる消費税の20%にする―の「激変緩和措置」を設けたとします。いずれも期限付きです。
サプライチェーン
■国際化により弊害噴出
「供給網」とも訳され、商品開発から原材料調達、生産、物流、販売までの供給の連鎖を指します。国境を越えた連鎖はグローバル・サプライチェーン(国際供給網)と呼ばれます。
多国籍企業は、人件費や税負担などのコストを最小化するために生産拠点を海外に移転し、国際供給網を構築しています。しかし新型コロナウイルスの大流行でその弊害が噴き出し、海外生産に依存するマスクなどの必需品の供給がひっ迫しました。多重下請け構造が海外労働者への人権侵害の温床となっていることも問題視され、国連で条約づくりの議論が進んでいます。
米国は中国に対する経済的・軍事的優位を保つために、半導体などの供給網の「脱中国依存」を図っています。
電気の規制料金
■大手5社値上げ申請
値上げ率は規制料金の平均。沖縄電力は高圧向けを含む
一般家庭向けの電気料金には、2016年4月の電力小売りの全面自由化以前から続く規制料金と、電力会社が独自に設定できる自由料金とがあります。規制料金の改定には、国の認可が必要です。
東北、北陸、中国、四国、沖縄の電力大手5社は、燃料価格の高騰を理由に、平均28~45%程度の規制料金値上げを申請。5社とも値上げ予定を23年4月としています。経済産業省は22年12月7日、電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合を開き、値上げ申請の審査を開始しました。今後、複数回の専門会合に加え、1~2月には5社の地元で公聴会を開いて利用者の意見を聴取。消費者庁の協議なども踏まえ、最終的に値上げ幅を確定します。
日銀新体制
■金融政策焦点に
2023年4月8日に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁は続投の意思を否定しています。総裁交代で新体制となる日銀が従来の金融政策をいかに修正すべきかが議論の的になっています。
黒田氏は13年3月20日に日銀総裁に就任。アベノミクスの大規模金融緩和政策を10年間続け、禁じ手を破って国債や株式などのリスク性資産を大量に買い入れました。円安と株高で大企業と富裕層の利益を増やす一方、経済の低迷を打破できず、格差を広げました。さらに異常円安と物価高騰を招きました。
日銀は12月10日時点で国債563兆円、株式投資信託36兆円を保有。価格が下がれば膨大な含み損が発生するリスクを抱え、行き詰まっています。
メタバース
■仮想空間のサービス
シーテック2022でのメタバースの展示=2022年10月18日、千葉・幕張メッセ
コンピューターの描画技術でくり出した3次元の仮想空間、またはそれを使ったサービのこと。「超(メタ)」と「宇(ユニバース)」を組み合わた造語。
利用者は、インターネット上の3次元仮想空間(メタバース)にアバターと呼ばれる自らの分身を参加させ、アバターから受け取る情報によって仮想空間を体験します。アバター同士の接触で他の利用者との意思疎通も可能です。メタバースがゲームであれば、アバターを通じて他の利用者とゲームを楽しむこともできます。メタバースが店舗であれば、ショッピングもできます。ただ、発展途上の技術であり、個人情報の保護などインターネット上の安全のルールの確立が必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年1月4日付掲載
デュアルユースという名の民生技術の軍事転用、「敵基地攻撃」用の兵器となるスタンド・オフ・ミサイルの導入など論外です。
次世代半導体の開発は必要ですが、軍事転用はやめてほしい。
免税業者を商取引から排除しかねないインボイス導入は中止を。
生産拠点を海外に移したために、サプライチェーンの寸断が危惧されています。
メタバースはまだまだ新しい技術。便利な面、安全性の確保も必要です。
加速する経済のデジタル化と岸田文雄政権の大軍拡路線をキーワードで読み解きます
デュアルユース
■民生技術の軍事転用
両用という意味の英語「dual-use」の日本語読み。民生と軍事の双方に利用できる「軍民両用」技術のことです。
無人航空機ドローンや人工知能(AI)などの先端技術は日々の生活を便利にする一方、使う側の意図によって兵器にも活用され得る側面をもちます。
政府・自民党は、大学や研究機関で開発されている民生利用のための基礎研究を軍事開発へ転用しょうとしてきました。
岸田政権が昨年12月に改定した「国家防衛戦略」は、軍事体制の強化のため「府省横断的な仕組みの下、防衛省・自衛隊のニーズを踏まえ、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的に活用していく」と宣言しました。
軍産学複合体
■科学・技術を奉仕させる
軍事的組織と兵器産業が一体化した「軍産複合体」に学術界を巻き込んだ体制のこと。特定の国家や軍事のために科学・技術を奉仕させる仕組みです。
軍産複合体の中核である軍需産業は、地域紛争や国家間対立によって武器市場を広げます。武器の生産・輸出を進めるにあたり、他国より軍事的能力のある技術を有することが条件の一つです。その上で、高度な科学・技術を取り込むことは欠かせません。武器生産に携わる企業の科学者だけでなく、大学や研究機関の研究者を動員することでその目標を達成しようとします。
現在の戦闘領域は宇宙・サイバー・電磁波まで拡大しています。学術界に加え情報通信産業も軍産学複合体の一員です。
スタンド・オフ・ミサイル
■「敵基地攻撃」用の兵器
敵の射程圏外から他国の領域を攻撃できる長射程のミサイルで、憲法違反の敵基地攻撃を可能にする兵器です。
政府は「防衛力整備計画」の第1に同ミサイルの保有・配備を掲げ、運用部隊は全国に11個中隊を配備する計画です。沖縄県・宮古島などに配備中の「12式地対艦誘導弾」を射程千キロ以上に改修するとしています。
また、政府は2023年度予算案で、米長距離巡航ミサイル・トマホークの配備に2113億円を計上。同ミサイルは米軍需産業大手レイセオン社製で、オースティン米国防長官が同社役員を務めました。ミサイルの発射地点を隠すためにスタンド・オフ・ミサイルが発射可能な潜水艦の導入まで狙っています。
ハイブリッド戦争
■従来の「戦争状態」拡大
ハイブリッドは「混合」や「複合」という意味の英語「hybrid」の日本語読み。ハイブリッド戦争とは、兵器を使った物理的な戦闘に加え、インターネットの交流サイト(SNS)を利用した偽情報の流布や政治宣伝(プロパガンダ)、重要インフラを狙ったサイバー攻撃など、複数の手段を組み合わせて実行される軍事戦略のひとつです。
政府は、昨年12月に改訂された「国家安全保障戦略」でハイブリッド戦を「軍事目的遂行のために軍事的な手段と非軍事的な手段を組み合わせる」ものと定義しています。さらに同戦略は「軍事と非軍事、有事と平時の境目が曖昧にな(る)」と指摘。これは従来の「戦争状態」を拡大する概念です。
次世代半導体
■米中対立の主戦場
半導体の回路線幅でおもに「2ナノメートル(ナノは10億分の1)」「3ナノメートル」のものを指す先端半導体のこと。半導体産業では、回路線幅の微細加工技術を競うことでより多くのトランジスタ(電流増幅・切り替えの素材)を集積し、動作の高速化など性能を向上させてきました。
半導体は電化製品の制御を担い、パソコンやスマートフォンなど幅広い分野で使用されています。次世代半導体は大量破壊兵器やミサイルに転用可能で、米中対立の主戦場になっています。
日本政府は「経済安全保障法」の「特定重要物資」「特定重要技術」に位置づけ、日米共同の研究開発拠点の設立や特定企業への補助金など、開発・生産拠点の整備に巨額の資金を投じています。
インボイス
■業者に負担強いる制度
売買の際にやりとりされる書類で、適格請求書ともいいます。商品・サービスごとに金額のほか、適用税率と税額を記載。加えて税務署が課税業者に交付した登録番号を明記する必要があります。
消費税納税の際、課税業者は売り上げにかかる消費税から、仕入れにかかった消費税を控除します。10月にインボイス制度の導入が強行されると、課税業者は免税業者からの仕入れを控除できなくなります。免税業者は負担の増える課税業者になるか、取引を断られ巻かの選択が迫られます。
政府は①売上高1億円以下の業者なら1万円未満の取引をインボイス不要とする②免税業者から転換した課税業者は納税額を売り上げにかかる消費税の20%にする―の「激変緩和措置」を設けたとします。いずれも期限付きです。
サプライチェーン
■国際化により弊害噴出
「供給網」とも訳され、商品開発から原材料調達、生産、物流、販売までの供給の連鎖を指します。国境を越えた連鎖はグローバル・サプライチェーン(国際供給網)と呼ばれます。
多国籍企業は、人件費や税負担などのコストを最小化するために生産拠点を海外に移転し、国際供給網を構築しています。しかし新型コロナウイルスの大流行でその弊害が噴き出し、海外生産に依存するマスクなどの必需品の供給がひっ迫しました。多重下請け構造が海外労働者への人権侵害の温床となっていることも問題視され、国連で条約づくりの議論が進んでいます。
米国は中国に対する経済的・軍事的優位を保つために、半導体などの供給網の「脱中国依存」を図っています。
電気の規制料金
■大手5社値上げ申請
値上げ申請率 | |
電力会社 | % |
東北電力 | 32.94 |
北陸電力 | 45.84 |
中国電力 | 31.33 |
四国電力 | 28.08 |
九州電力 | 43.81 |
一般家庭向けの電気料金には、2016年4月の電力小売りの全面自由化以前から続く規制料金と、電力会社が独自に設定できる自由料金とがあります。規制料金の改定には、国の認可が必要です。
東北、北陸、中国、四国、沖縄の電力大手5社は、燃料価格の高騰を理由に、平均28~45%程度の規制料金値上げを申請。5社とも値上げ予定を23年4月としています。経済産業省は22年12月7日、電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合を開き、値上げ申請の審査を開始しました。今後、複数回の専門会合に加え、1~2月には5社の地元で公聴会を開いて利用者の意見を聴取。消費者庁の協議なども踏まえ、最終的に値上げ幅を確定します。
日銀新体制
■金融政策焦点に
2023年4月8日に任期満了を迎える日銀の黒田東彦総裁は続投の意思を否定しています。総裁交代で新体制となる日銀が従来の金融政策をいかに修正すべきかが議論の的になっています。
黒田氏は13年3月20日に日銀総裁に就任。アベノミクスの大規模金融緩和政策を10年間続け、禁じ手を破って国債や株式などのリスク性資産を大量に買い入れました。円安と株高で大企業と富裕層の利益を増やす一方、経済の低迷を打破できず、格差を広げました。さらに異常円安と物価高騰を招きました。
日銀は12月10日時点で国債563兆円、株式投資信託36兆円を保有。価格が下がれば膨大な含み損が発生するリスクを抱え、行き詰まっています。
メタバース
■仮想空間のサービス
シーテック2022でのメタバースの展示=2022年10月18日、千葉・幕張メッセ
コンピューターの描画技術でくり出した3次元の仮想空間、またはそれを使ったサービのこと。「超(メタ)」と「宇(ユニバース)」を組み合わた造語。
利用者は、インターネット上の3次元仮想空間(メタバース)にアバターと呼ばれる自らの分身を参加させ、アバターから受け取る情報によって仮想空間を体験します。アバター同士の接触で他の利用者との意思疎通も可能です。メタバースがゲームであれば、アバターを通じて他の利用者とゲームを楽しむこともできます。メタバースが店舗であれば、ショッピングもできます。ただ、発展途上の技術であり、個人情報の保護などインターネット上の安全のルールの確立が必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年1月4日付掲載
デュアルユースという名の民生技術の軍事転用、「敵基地攻撃」用の兵器となるスタンド・オフ・ミサイルの導入など論外です。
次世代半導体の開発は必要ですが、軍事転用はやめてほしい。
免税業者を商取引から排除しかねないインボイス導入は中止を。
生産拠点を海外に移したために、サプライチェーンの寸断が危惧されています。
メタバースはまだまだ新しい技術。便利な面、安全性の確保も必要です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます