GAFAと新自由主義② アテンション経済の害
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん
―米バイデン政権がGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)への規制強化に乗り出していることをどのようにみますか。
バイデン政権の規制当局はGAFA4社のプラットフォーム(基盤技術)を利用する人々の個人情報を保護することを主要な目標にしています。なぜかといえば、利用者の個人情報を収集して活用するGAFAのビジネスのやり方が大きな社会問題を引き起こしてきたからです。
GAFAが収集しているのは、利用者の位置情報、知人との通信履歴、インターネットの閲覧履歴、ネット通販の購買履歴などのデータ記録です。人工知能(AI)を使ってGAFAはそれらのデータを分析し、利用者の趣味嗜好(しこう)や思想信条、交友関係を把握しています。そうした膨大な個人情報をビジネスに活用し、ばく大な収益を生んでいるのです。自分の個人情報がどのように活用されているか、利用者にはほとんど分かりません。
米ニューヨーク市マンハッタンにあるグーグルの事業所(ロイター)
収入を増やす
個人情報の主な活用方法はターゲット(標的型)広告です。利用者の関心や好みに応じて、関連する広告をピンポイントで表示し、広告効果を高めています。ターゲット広告の収入を増やすためには、自らのプラットフォームに多くの利用者を呼び込む必要があります。この目的のためには、注目を集める情報ならなんでも役立ちます。大事なのは真実か虚偽かではなく、情報が注目されることです。これを「アテンション(注目)経済圏」といいます。
この「アテンション経済圏」がフェイクニュースや偽情報を社会に広げる原因となり、大問題になりました。2020年の米大統領選のとき、トランプ大統領がツイッターで呼びかけて暴力的な議会占拠が起こりました。フェイスブックとツイッターが危険な情報と知りながらたれ流し続けた結果です。
このような危険性をもつアテンション経済圏の仕組みを、ショシャナ・ズポフ氏(米ハーバード・ビジネススクール名誉教授)は「監視資本主義」と名付けました。バイデン政権はこの仕組みを規制しようとしています。
―グーグルやフェイスブックは検索や交流サイト(SNS)を無料で提供し、膨大な数の利用者を抱え込んでいます。利用者から収集した個人情報をターゲット広告と結びつけ、事業者から広告料をとって稼いでいます。
パソコンやスマートフォンの画面上で利用者の注目をネット広告市場と結びつけて収益化するわけです。このビジネス・モデルが規制対象となります。
米国のネット広告の市場では、1位がグーグルで28・9%を占めています。2位のフェイスブックが25・2%、3位のアマゾンが10・3%です(「日経」21年11月10日付)。この3社で60%以上となり、ネット広告市場を牛耳っています。グーグルもフェイスブックも、広告事業の収入で企業収益の8割から9割を稼いでいるのです。
意図的に無視
偽情報であれ、児童の健康にとって危険だとわかっている情報であれ、注目を集めれば利益につながるので、危険を承知のうえでその情報を流すー。そうしたフェイスブックの内情を元従業員が米議会の証言で暴露して、問題になりました。
フェイスブック創業者ザッカーバーグ氏の精神的支柱でもあった投資家のロジャー・マクナミー氏は、フェイスブックやグーグルが「注目」の収益化のために人びとや社会に害悪をもたらしていると指摘し、規制を呼びかけました。利用者の精神的健康への悪影響や、誤情報・偽情報の流布による民主主義への危害といった問題を、これらの企業は意図的に無視していると批判したのです。
このような理由で、バイデン政権によるGAFA規制の中でも主要な規制対象はグーグルとフェイスブック、アマゾンのネット広告となっています。特にグーグルとフェイスブックにとってはネット広告こそが事業収入の独占的な基盤です。ネット広告規制は両社の経営に大きな影響を与えることになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月13日付掲載
個人情報の主な活用方法はターゲット(標的型)広告。利用者の関心や好みに応じて、関連する広告をピンポイントで表示し、広告効果を高めている。
大事なのは真実か虚偽かではなく、情報が注目されることです。これを「アテンション(注目)経済圏」。
偽情報であれ、児童の健康にとって危険だとわかっている情報であれ、注目を集めれば利益につながるので、危険を承知のうえでその情報を流すー。ネット広告もその一部。
バイデン政権によるGAFA規制の中でも主要な規制対象はグーグルとフェイスブック、アマゾンのネット広告。特にグーグルとフェイスブックにとってはネット広告こそが事業収入の独占的な基盤。ネット広告規制は両社の経営に大きな影響を与えることに。
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん
―米バイデン政権がGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)への規制強化に乗り出していることをどのようにみますか。
バイデン政権の規制当局はGAFA4社のプラットフォーム(基盤技術)を利用する人々の個人情報を保護することを主要な目標にしています。なぜかといえば、利用者の個人情報を収集して活用するGAFAのビジネスのやり方が大きな社会問題を引き起こしてきたからです。
GAFAが収集しているのは、利用者の位置情報、知人との通信履歴、インターネットの閲覧履歴、ネット通販の購買履歴などのデータ記録です。人工知能(AI)を使ってGAFAはそれらのデータを分析し、利用者の趣味嗜好(しこう)や思想信条、交友関係を把握しています。そうした膨大な個人情報をビジネスに活用し、ばく大な収益を生んでいるのです。自分の個人情報がどのように活用されているか、利用者にはほとんど分かりません。
米ニューヨーク市マンハッタンにあるグーグルの事業所(ロイター)
収入を増やす
個人情報の主な活用方法はターゲット(標的型)広告です。利用者の関心や好みに応じて、関連する広告をピンポイントで表示し、広告効果を高めています。ターゲット広告の収入を増やすためには、自らのプラットフォームに多くの利用者を呼び込む必要があります。この目的のためには、注目を集める情報ならなんでも役立ちます。大事なのは真実か虚偽かではなく、情報が注目されることです。これを「アテンション(注目)経済圏」といいます。
この「アテンション経済圏」がフェイクニュースや偽情報を社会に広げる原因となり、大問題になりました。2020年の米大統領選のとき、トランプ大統領がツイッターで呼びかけて暴力的な議会占拠が起こりました。フェイスブックとツイッターが危険な情報と知りながらたれ流し続けた結果です。
このような危険性をもつアテンション経済圏の仕組みを、ショシャナ・ズポフ氏(米ハーバード・ビジネススクール名誉教授)は「監視資本主義」と名付けました。バイデン政権はこの仕組みを規制しようとしています。
―グーグルやフェイスブックは検索や交流サイト(SNS)を無料で提供し、膨大な数の利用者を抱え込んでいます。利用者から収集した個人情報をターゲット広告と結びつけ、事業者から広告料をとって稼いでいます。
パソコンやスマートフォンの画面上で利用者の注目をネット広告市場と結びつけて収益化するわけです。このビジネス・モデルが規制対象となります。
米国のネット広告の市場では、1位がグーグルで28・9%を占めています。2位のフェイスブックが25・2%、3位のアマゾンが10・3%です(「日経」21年11月10日付)。この3社で60%以上となり、ネット広告市場を牛耳っています。グーグルもフェイスブックも、広告事業の収入で企業収益の8割から9割を稼いでいるのです。
意図的に無視
偽情報であれ、児童の健康にとって危険だとわかっている情報であれ、注目を集めれば利益につながるので、危険を承知のうえでその情報を流すー。そうしたフェイスブックの内情を元従業員が米議会の証言で暴露して、問題になりました。
フェイスブック創業者ザッカーバーグ氏の精神的支柱でもあった投資家のロジャー・マクナミー氏は、フェイスブックやグーグルが「注目」の収益化のために人びとや社会に害悪をもたらしていると指摘し、規制を呼びかけました。利用者の精神的健康への悪影響や、誤情報・偽情報の流布による民主主義への危害といった問題を、これらの企業は意図的に無視していると批判したのです。
このような理由で、バイデン政権によるGAFA規制の中でも主要な規制対象はグーグルとフェイスブック、アマゾンのネット広告となっています。特にグーグルとフェイスブックにとってはネット広告こそが事業収入の独占的な基盤です。ネット広告規制は両社の経営に大きな影響を与えることになります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月13日付掲載
個人情報の主な活用方法はターゲット(標的型)広告。利用者の関心や好みに応じて、関連する広告をピンポイントで表示し、広告効果を高めている。
大事なのは真実か虚偽かではなく、情報が注目されることです。これを「アテンション(注目)経済圏」。
偽情報であれ、児童の健康にとって危険だとわかっている情報であれ、注目を集めれば利益につながるので、危険を承知のうえでその情報を流すー。ネット広告もその一部。
バイデン政権によるGAFA規制の中でも主要な規制対象はグーグルとフェイスブック、アマゾンのネット広告。特にグーグルとフェイスブックにとってはネット広告こそが事業収入の独占的な基盤。ネット広告規制は両社の経営に大きな影響を与えることに。
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