アマゾン 宅配の闇① 過重労働がミスを誘発
インターネット通販大手のアマゾンが、個人事業主のドライバーに宅配業務を直接委託する制度「アマゾンフレックス」をめぐり、4月下旬に規約を一部改定しました。商品の破損や紛失の補償責任は原則ドライバーにあると追記。一方的に規約を改定したアマゾンに対し「ドライバーの過重労働を置き去りにしている」と反発の声があがっています。
(小村優)
アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」です。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると定められました。
アマゾンフレックス専用のアプリ画面
義務負わせる
さらに、配達後に第三者によって商品が盗まれた場合、アマゾンが納得できる説明がなければドライバーの責任になると明記。販売価格や再配達費用をアマゾンへ支払う義務を負わせました。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中です。
ユニオンは、規約改定前まで販売価格の補償も、再配達費用の支払いも原則アマゾンがしており、ドライバーに求償することはなかったと指摘。第三者による盗難についても、配達を終えた商品にまでドライバーが責任を負っていては次の配達ができないと問題視しています。
改定の背景について運送業界の関係者は、玄関前に商品を置く「置き配」の普及を挙げます。アマゾンは新型コロナウイルスの感染が本格化した2020年3月から一部の都道府県で置き配を配達指定の初期設定にするサービスを始めました。関係者は、商品の紛失・盗難が多発したことで「代品にかかるアマゾンの負担もかなりあったはずだ」と指摘。ドライバーへの求償を明確化することでコスト削減を図る狙いがあるとみられます。
一方、規約改定について「わざと商品を盗むドライバーを抑制する意図もあるのではないか」と推測するのは首都圏の運送会社社長です。同社では以前、下請けのドライバーが商品を盗みブリマアプリのメルカリで転売、警察沙汰になったことがありました。
通常、ドライバーは置き配後、商品の写真を撮り「配達完了」を通知します。通知を受けた客は商品を確認。すぐに玄関を見ても商品がなければドライバーの盗難が疑われます。しかし、ドライバーの故意か、ドライバー以外の第三者による盗難か、「配達員から事情を聞く会社も、何が真実かを判断するのは非常に難しい」(社長)のが実態です。
責任押し付け
一方社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答しました。
社長は、故意の盗難問題と、過重労働による紛失・損傷事案は別に考える必要があるとした上で、「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」と問題提起しています。
(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月9日付掲載
アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中。
運送会社の社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答。
「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」
インターネット通販大手のアマゾンが、個人事業主のドライバーに宅配業務を直接委託する制度「アマゾンフレックス」をめぐり、4月下旬に規約を一部改定しました。商品の破損や紛失の補償責任は原則ドライバーにあると追記。一方的に規約を改定したアマゾンに対し「ドライバーの過重労働を置き去りにしている」と反発の声があがっています。
(小村優)
アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」です。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると定められました。
アマゾンフレックス専用のアプリ画面
義務負わせる
さらに、配達後に第三者によって商品が盗まれた場合、アマゾンが納得できる説明がなければドライバーの責任になると明記。販売価格や再配達費用をアマゾンへ支払う義務を負わせました。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中です。
ユニオンは、規約改定前まで販売価格の補償も、再配達費用の支払いも原則アマゾンがしており、ドライバーに求償することはなかったと指摘。第三者による盗難についても、配達を終えた商品にまでドライバーが責任を負っていては次の配達ができないと問題視しています。
改定の背景について運送業界の関係者は、玄関前に商品を置く「置き配」の普及を挙げます。アマゾンは新型コロナウイルスの感染が本格化した2020年3月から一部の都道府県で置き配を配達指定の初期設定にするサービスを始めました。関係者は、商品の紛失・盗難が多発したことで「代品にかかるアマゾンの負担もかなりあったはずだ」と指摘。ドライバーへの求償を明確化することでコスト削減を図る狙いがあるとみられます。
一方、規約改定について「わざと商品を盗むドライバーを抑制する意図もあるのではないか」と推測するのは首都圏の運送会社社長です。同社では以前、下請けのドライバーが商品を盗みブリマアプリのメルカリで転売、警察沙汰になったことがありました。
通常、ドライバーは置き配後、商品の写真を撮り「配達完了」を通知します。通知を受けた客は商品を確認。すぐに玄関を見ても商品がなければドライバーの盗難が疑われます。しかし、ドライバーの故意か、ドライバー以外の第三者による盗難か、「配達員から事情を聞く会社も、何が真実かを判断するのは非常に難しい」(社長)のが実態です。
責任押し付け
一方社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答しました。
社長は、故意の盗難問題と、過重労働による紛失・損傷事案は別に考える必要があるとした上で、「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」と問題提起しています。
(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月9日付掲載
アマゾンが改定したのはアマゾンフレックスの「独立請負業務委託規約」。「補償」の項で、故意、過失または業務違反によって荷物の紛失や損傷が生じた場合に損害額をアマゾンへ支払う必要があると。
建交労軽貨物ユニオンは一方的な規約改定が、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用にあたるとして6月に公正取引委員会へ調査を依頼。公取委は現在調査中。
運送会社の社長は、余裕のない働き方がミスや破損を誘発していると現場の窮状を訴えます。
建交労軽貨物ユニオンが21年5月~22年10月にかけて実施した個人事業主へのアンケート調査によると、配達員132人のうち最多の25%が1日に平均12時間以上働き、49%が「週6日」「ほぼ毎日」働いていると回答。
「責任を押し付ける前にドライバーに人間らしい働き方を保障するのが先ではないか」
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