電気をつくる人~自然エネルギーが地域を変える~東京・多摩ニュータウン
「土地はないけど屋根がある」~都市でもできれば、ほかへも広がる
東京・新宿から電車で西へ約30分、中層・高層住宅群が目に飛び込んできます。多摩ニュータウンです。勤労者のベッドタウンとして1960年代から開発され、いまも民間マンションの建設が進みます。多摩市など4市にまたがる国内最大のニュータウンです。
2011年3月。ライター・翻訳業の高森郁哉さん(48)は大きな衝撃を受けました。何よりも事故を起こした原発の電気が首都圏向けだったことに驚きました。「これは東北の問題ではなくて自分たちの問題。のほほんとしてはいけない」
高森さんは、地元の情報をインターネットで発信するサイトを主宰しています。「原発やエネルギーのことを自分たちで勉強しませんか」と呼びかけました。「エネルギーシフトをすすめる多摩の会」の誕生です。原発事故から2カ月後でした。
中層・高層住宅が並ぶ多摩ニュータウン
思いを形に
呼びかけに応えた一人、江川美穂子さん(57)はゴミ問題に取り組んでいます。環境に関心を持ったきっかけは27年前のチェルノブイリでの原発事故でした。「あのときの脱原発の熱気は2年でしぼんでしまいました。今度こそ自分たちの思いを形にしなければ」
デザイナーの林久美子さん(49)は、こうした運動は初めてでした。「生活は維持したい。でも次の世代に核のゴミを残す原発はなくしたい。エネルギーをつくることに興味を持ちました」
脱原発の行動をしたい人、福島を支援したい人、エネルギーを考えたい人…、「会」の活動が次第にまとまらなくなってきました。そんななか、大手電機メーカーを退職していた山川陽一さん(74)が一石を投じます。「3・11後の“にわか勉強”だけど、ドイツでは屋根を活用している。ここにも土地はないけど屋根がある、自分たちでエネルギーをつくろうじゃないか」
話し合いをすすめる多摩エネ協のメンバー=東京・多摩市
地域主導で
地域主導でエネルギーをつくろう―。そんな目的を掲げた多摩市循環型エネルギー協議会(多摩エネ協)が生まれました。昨年5月の設立シンポジウムには、100人の市民のほか、市長や市議会各会派も参加しました。
ニュータウン再生に取り組む建築家、秋元孝夫さん(63)も参加し、エネルギーづくりにまちづくりの視点が加わりました。代表になった写真家の桃井和馬さん(50)は「3・11を経験し、文明の形を変えたいと真剣に思いました。都市でもエネルギーができるとわかれば、ほかの地域にも広がる」と願いを込めます。
発足から4カ月後には、地域主導の再生可能エネルギー事業化を後押しする環境省の公募事業に採択され、半年後には、発電事業を担う多摩電力合同会社(たまでん)を設立。スピードを加速させています。
たまでんの代表社員になった山川さんは「本当に地域貢献するためには、継続し発展することが大事で、そのためにはビジネスとしてやっていきたい」と語ります。高森さんも「発電というのは10年、15年と設備を維持していく必要があります。市民活動とはまた違う責任を感じます」と。
こうした“真剣さ”が若い世代も動かしています。この4月、山川勇一郎さん(37)が勤め先を退職し、多摩エネ協とたまでんに加わります。
「原発事故後、自分は3歳と5歳の子どもに何が残せるのかを考えていました。故郷の多摩ニュータウンで市民発電という新しい事業に挑戦します」(君塚陽子)
◇
「3・11」は発電のあり方も問い直しました。いま各地で風や太陽などを利用した自然エネルギーを地域主導で始める人たちがいます。そんな“電気をつくる人々”を追っていきます。
(随時掲載)
(メモ)市民出資で、公共施設や集合住宅の屋根に太陽光パネルを設置。電力買い取り制度を利用し、売電の収入は市民や地域へ還元。試験的な1号機を市内の大学に設置し、13年度は1000キロワット設置をめざす。多摩市は公共施設の「屋根貸し」実施を予定。
多摩エネ協
http://tama-enekyo.org
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月21日付掲載
「土地はないけど屋根がある」という発想で、思わず「東京キッド」の歌のフレーズが思い浮かびました。
「歌も楽しや 東京キッド、
いきで おしゃれで ほがらかで
右のポッケにゃ 夢がある
左のポッケにゃ チュウインガム
空を見たけりゃ ビルの屋根
もぐりたくなりゃ マンホール」♪♪♪
多摩団地は高度成長時期に作られた団地群。「東京キッド」も高度成長期に作られた歌。
美空ひばりさんが歌って、今、イルカが歌っています。
チェルノブイリ事故の際にはしぼんでしまった、自然エネルギーへの転換。福島原発事故が起こった日本で、本当の原発ゼロ、自然エネルギーへの転換の運動が草の根から起こっています。
頼もしいですね。
ちなみに、イルカが歌う「東京キッド」はイルカの最新アルバム「ほのぼの倶楽部」に収められています。
「土地はないけど屋根がある」~都市でもできれば、ほかへも広がる
東京・新宿から電車で西へ約30分、中層・高層住宅群が目に飛び込んできます。多摩ニュータウンです。勤労者のベッドタウンとして1960年代から開発され、いまも民間マンションの建設が進みます。多摩市など4市にまたがる国内最大のニュータウンです。
2011年3月。ライター・翻訳業の高森郁哉さん(48)は大きな衝撃を受けました。何よりも事故を起こした原発の電気が首都圏向けだったことに驚きました。「これは東北の問題ではなくて自分たちの問題。のほほんとしてはいけない」
高森さんは、地元の情報をインターネットで発信するサイトを主宰しています。「原発やエネルギーのことを自分たちで勉強しませんか」と呼びかけました。「エネルギーシフトをすすめる多摩の会」の誕生です。原発事故から2カ月後でした。
中層・高層住宅が並ぶ多摩ニュータウン
思いを形に
呼びかけに応えた一人、江川美穂子さん(57)はゴミ問題に取り組んでいます。環境に関心を持ったきっかけは27年前のチェルノブイリでの原発事故でした。「あのときの脱原発の熱気は2年でしぼんでしまいました。今度こそ自分たちの思いを形にしなければ」
デザイナーの林久美子さん(49)は、こうした運動は初めてでした。「生活は維持したい。でも次の世代に核のゴミを残す原発はなくしたい。エネルギーをつくることに興味を持ちました」
脱原発の行動をしたい人、福島を支援したい人、エネルギーを考えたい人…、「会」の活動が次第にまとまらなくなってきました。そんななか、大手電機メーカーを退職していた山川陽一さん(74)が一石を投じます。「3・11後の“にわか勉強”だけど、ドイツでは屋根を活用している。ここにも土地はないけど屋根がある、自分たちでエネルギーをつくろうじゃないか」
話し合いをすすめる多摩エネ協のメンバー=東京・多摩市
地域主導で
地域主導でエネルギーをつくろう―。そんな目的を掲げた多摩市循環型エネルギー協議会(多摩エネ協)が生まれました。昨年5月の設立シンポジウムには、100人の市民のほか、市長や市議会各会派も参加しました。
ニュータウン再生に取り組む建築家、秋元孝夫さん(63)も参加し、エネルギーづくりにまちづくりの視点が加わりました。代表になった写真家の桃井和馬さん(50)は「3・11を経験し、文明の形を変えたいと真剣に思いました。都市でもエネルギーができるとわかれば、ほかの地域にも広がる」と願いを込めます。
発足から4カ月後には、地域主導の再生可能エネルギー事業化を後押しする環境省の公募事業に採択され、半年後には、発電事業を担う多摩電力合同会社(たまでん)を設立。スピードを加速させています。
たまでんの代表社員になった山川さんは「本当に地域貢献するためには、継続し発展することが大事で、そのためにはビジネスとしてやっていきたい」と語ります。高森さんも「発電というのは10年、15年と設備を維持していく必要があります。市民活動とはまた違う責任を感じます」と。
こうした“真剣さ”が若い世代も動かしています。この4月、山川勇一郎さん(37)が勤め先を退職し、多摩エネ協とたまでんに加わります。
「原発事故後、自分は3歳と5歳の子どもに何が残せるのかを考えていました。故郷の多摩ニュータウンで市民発電という新しい事業に挑戦します」(君塚陽子)
◇
「3・11」は発電のあり方も問い直しました。いま各地で風や太陽などを利用した自然エネルギーを地域主導で始める人たちがいます。そんな“電気をつくる人々”を追っていきます。
(随時掲載)
(メモ)市民出資で、公共施設や集合住宅の屋根に太陽光パネルを設置。電力買い取り制度を利用し、売電の収入は市民や地域へ還元。試験的な1号機を市内の大学に設置し、13年度は1000キロワット設置をめざす。多摩市は公共施設の「屋根貸し」実施を予定。
多摩エネ協
http://tama-enekyo.org
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月21日付掲載
「土地はないけど屋根がある」という発想で、思わず「東京キッド」の歌のフレーズが思い浮かびました。
「歌も楽しや 東京キッド、
いきで おしゃれで ほがらかで
右のポッケにゃ 夢がある
左のポッケにゃ チュウインガム
空を見たけりゃ ビルの屋根
もぐりたくなりゃ マンホール」♪♪♪
多摩団地は高度成長時期に作られた団地群。「東京キッド」も高度成長期に作られた歌。
美空ひばりさんが歌って、今、イルカが歌っています。
チェルノブイリ事故の際にはしぼんでしまった、自然エネルギーへの転換。福島原発事故が起こった日本で、本当の原発ゼロ、自然エネルギーへの転換の運動が草の根から起こっています。
頼もしいですね。
ちなみに、イルカが歌う「東京キッド」はイルカの最新アルバム「ほのぼの倶楽部」に収められています。
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