環境先進 ドイツの自治体(上) 利益追求しない共同体
ドイツで全原発停止から1年が経過したのを機に、原子力ではなく再生エネルギーの活用など環境分野で先進的なとりくみを進めて注目されている南西部の二つの自治体、ザンクトペーターとフライブルクを訪ねました。
ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州のザンクトペーターは、住民の消費電力と熱エネルギーの多くを自村の再生可能エネルギーでまかなう「バイオエネルギー村」と認定されています。標高500~1200メートルの里山の村で、環境保護と地域経済を両立させた自治体として知られています。
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置されています。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合です。住民たちの協同組合は、木質ペレットを燃料にして熱と電力を効率的に生産・供給するコージェネレーション設備を運営しています。熱エネルギーは温水として各家庭に運ばれ、給湯や室内暖房に使われます。
エネルギー協同組合のポーナート代表
地域住民の手に
協同組合のマルクス・ポーナート代表(55)は「石油や天然ガスなどの化石燃料に頼らず、環境に優しいエネルギーで暮らしたいと願う住民有志が立ち上がって今に至ります」と話します。
協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標としてきました。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。暮らしに不可欠なエネルギーを企業のようにもうけの手段にしてはいけないという思いがありました。
ザンクトペーターの主要産業は林業と農業。協同組合のエネルギー施設に隣接された倉庫には、燃料となる木材が地域の農家らから運びこまれています。ボーナートさんは「村の資源を使えばエネルギーをつくる費用も抑えられるし、提供する人の利益にもなっている」と話します。
エネルギー設備は協同組合および組合員の所有。協同組合からエネルギーを受けるための接続費用は1世帯あたり2500~5000ユーロ(42万7000~85万4000円)です。
協同組合は欧州連合や州政府からの助成金も受け、設備のローン返済と投資に充てています。自然エネルギーによる循環型社会を推進するには、公的支援の充実も不可欠だとポーナートさんは強調します。
ザンクトペーターの市民協同組合のエネルギー施設
村に新たな価値
ロシア産化石燃料輸入への依存が高まっていたドイツでは22年のロシアのウクライナ侵略を機に始まった対ロシア制裁によって、一般家庭の光熱費が高騰しました。
しかしザンクトペーターでは、組合に加入する世帯の光熱費を比較的低く抑えることができ、エネルギーを自給自足できていることへの満足度も高いといいます。協同組合が作られて以来、住民同士の連携も強くなり、村自体に新たな価値がついたとボーナートさんは語ります。
「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」
(ザンクトペーター〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合。協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。
協同組合のマルクス・ポーナート代表は、「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」と。
ドイツで全原発停止から1年が経過したのを機に、原子力ではなく再生エネルギーの活用など環境分野で先進的なとりくみを進めて注目されている南西部の二つの自治体、ザンクトペーターとフライブルクを訪ねました。
ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州のザンクトペーターは、住民の消費電力と熱エネルギーの多くを自村の再生可能エネルギーでまかなう「バイオエネルギー村」と認定されています。標高500~1200メートルの里山の村で、環境保護と地域経済を両立させた自治体として知られています。
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置されています。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合です。住民たちの協同組合は、木質ペレットを燃料にして熱と電力を効率的に生産・供給するコージェネレーション設備を運営しています。熱エネルギーは温水として各家庭に運ばれ、給湯や室内暖房に使われます。
エネルギー協同組合のポーナート代表
地域住民の手に
協同組合のマルクス・ポーナート代表(55)は「石油や天然ガスなどの化石燃料に頼らず、環境に優しいエネルギーで暮らしたいと願う住民有志が立ち上がって今に至ります」と話します。
協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標としてきました。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。暮らしに不可欠なエネルギーを企業のようにもうけの手段にしてはいけないという思いがありました。
ザンクトペーターの主要産業は林業と農業。協同組合のエネルギー施設に隣接された倉庫には、燃料となる木材が地域の農家らから運びこまれています。ボーナートさんは「村の資源を使えばエネルギーをつくる費用も抑えられるし、提供する人の利益にもなっている」と話します。
エネルギー設備は協同組合および組合員の所有。協同組合からエネルギーを受けるための接続費用は1世帯あたり2500~5000ユーロ(42万7000~85万4000円)です。
協同組合は欧州連合や州政府からの助成金も受け、設備のローン返済と投資に充てています。自然エネルギーによる循環型社会を推進するには、公的支援の充実も不可欠だとポーナートさんは強調します。
ザンクトペーターの市民協同組合のエネルギー施設
村に新たな価値
ロシア産化石燃料輸入への依存が高まっていたドイツでは22年のロシアのウクライナ侵略を機に始まった対ロシア制裁によって、一般家庭の光熱費が高騰しました。
しかしザンクトペーターでは、組合に加入する世帯の光熱費を比較的低く抑えることができ、エネルギーを自給自足できていることへの満足度も高いといいます。協同組合が作られて以来、住民同士の連携も強くなり、村自体に新たな価値がついたとボーナートさんは語ります。
「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」
(ザンクトペーター〈独南西部バーデン・ビュルテンベルク州〉=吉本博美 写真も)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載
ザンクトペーターでは太陽光などの自然エネルギーから消費量の3倍の電力が作られています。村のあちこちに大型の風力発電装置が見られ、多くの建物の屋根に太陽光パネルが設置。
村のエネルギー供給を支える柱の一つが、住民がつくる協同組合。協同組合は2009年夏に発足。エネルギーを遠くの電力大企業から買うのではなく、地域住民の手に取り戻すことを目標。協同組合という形式にしたのも、収益が出たら住民に還元でき、資金繰りで透明な運営ができるから。
協同組合のマルクス・ポーナート代表は、「環境に優しく、利益を追求しない共同体を自分たちの手でつくる。これも民主主義の実践だと思っています」と。
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