電力はひっ迫したの? 初の注意報 報道は不安あおったが
「注意報」は第一段階 軽視しないが冷静に
大企業の節電こそ威力を発揮
京都大学大学院特任教授 安田陽さんに聞く
6月27日から30日にかけて、経済産業省資源工ネルギー庁から、初の電力需給逼迫注意報が出ました。それをきっかけに、「再工ネは不安定」「原発再稼働を」という主張も聞かれるようになりました。どう見たらいいのでしょうか。京都大学大学院特任教授の安田陽さんに聞きました。
(手島陽子)
政府が電力逼迫注意報や警報の基準を定め、今回、発令したことは、リスク管理としてよいことです。問題は、いたずらに不安を煽る報道です。大雨洪水注意報や津波注意報はしばしば発令されますが、注意報で右往左往する人はいませんよね。
電力の場合、需要に対して供給力の余裕がどの程度かを示す予備率が5%を下回る見込みなら「注意報」、3%なら「警報」を発令します。警報の時点で節電要請があり、節電しても逼迫した場合は部分的な計画停電となります。急な停電にならないために何段階もチェックポイントがあり、「注意報」は第1段階なのです。リスクを軽視してはいけませんが、不安を煽るのもよくありません。
供給増よりも需要の調整を
今回の需給逼迫の主原因は、季節外れの猛暑による需要増加と考えられます。例年、需要増は7月後半から始まるのですが、今年は梅雨明けが観測史上最も早く、8月並みの気温が1週間も続きました。
一方、供給側は、6月は需要の少なさを念頭にメンテナンスなどで休止している設備が多く、東京エリアでは、過去7年間で見ても6月中に50GW(ギガワット)を超えた年はありません。梅雨明けと猛暑の到来が、半月も前倒しで来てしまう異常気象で、需要が突発的に増えたのです。これを早めに察知し、供給を準備するというのは困難だと思います。
例年の需要を想定して、供給を準備するわけですから、今回のケースは、発電所を増やせば解決するという問題ではありません。こういう時、“供給量を増やせ”“原子力だ”という議論がすぐ出てきます。
突発的な需要の急増に対して、原発などの発電所を増やしても、急に運転できるわけではないので、確実ではありません。突発的な事態には、省エネやデマンドレスポンス(需要応答、供給量に合わせて需要を調整すること)が一番合理的です。
個人には限界 建物を断熱化
今後、夏の需要のピークが8月にくるので、そのときに注意報や警報が出る可能性はあります。その際、節電対策を個人の努力任せにするのは本末転倒です。工場や商業施設などでデマンドレスポンスを行う対策の方が優先順位が高いです。
大手企業が実行すれば、1%程度の不足を補う威力を発揮することもあります。技術的には、事前の契約に基づいて、遠隔操作や自動で温度設定を変える方法もあります。
個人でできるのは、健康を害してまで節電するなどの不適切な行動をとらないことです。むしろ、お店に入って過剰冷房であれば、やんわりとクレームするなど、企業を動かすことが先決でしょう。
冬はさらに需給が逼迫すると予想されていますが、対策はまず省エネです。建物の断熱化が不十分な日本で、供給だけを増やそうとするのは、例えると、穴だらけのバケツに、せっせと水を汲み入れるようなもの。穴をふさぐのが先です。窓を二重ガラス・樹脂サッシにするだけでも、エアコンの余計な運転を減らすことができます。企業や店舗などでも二重ガラスにするなど、冬までの数カ月間にできる対策はかなりあります。
風力発電など再エネ主体に
新築の断熱化が2025年から義務付けられますが、いまからでも、住宅業界の努力で、高断熱化した住宅を供給することだと思います。購入側にとっても、20年住めば電気代や暖房費の節約で、支出以上の便益を得られます。収入が低い人でも、補助金で断熱化できるようにすることもよいでしょう。
今回の異常気象は、気候危機の影響の可能性が高いです。火力発電に頼ってきた政府や企業の責任は大きいです。太陽光発電だけでなく、夜も供給できる風力発電を増やし、再エネ主体の社会に転換していくことが必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年7月12日付掲載
「注意報」は第一段階 軽視しないが冷静に
大企業の節電こそ威力を発揮
今回の需給逼迫の主原因は、季節外れの猛暑による需要増加と考えられます。
供給増よりも需要の調整を
突発的な事態には、省エネやデマンドレスポンス(需要応答、供給量に合わせて需要を調整すること)が一番合理的。
節電対策を個人の努力任せにするのは本末転倒。工場や商業施設などでデマンドレスポンスを行う対策の方が優先順位が高い。
太陽光発電だけでなく、夜も供給できる風力発電を増やし、再エネ主体の社会に転換していくことが必要。
「注意報」は第一段階 軽視しないが冷静に
大企業の節電こそ威力を発揮
京都大学大学院特任教授 安田陽さんに聞く
6月27日から30日にかけて、経済産業省資源工ネルギー庁から、初の電力需給逼迫注意報が出ました。それをきっかけに、「再工ネは不安定」「原発再稼働を」という主張も聞かれるようになりました。どう見たらいいのでしょうか。京都大学大学院特任教授の安田陽さんに聞きました。
(手島陽子)
政府が電力逼迫注意報や警報の基準を定め、今回、発令したことは、リスク管理としてよいことです。問題は、いたずらに不安を煽る報道です。大雨洪水注意報や津波注意報はしばしば発令されますが、注意報で右往左往する人はいませんよね。
電力の場合、需要に対して供給力の余裕がどの程度かを示す予備率が5%を下回る見込みなら「注意報」、3%なら「警報」を発令します。警報の時点で節電要請があり、節電しても逼迫した場合は部分的な計画停電となります。急な停電にならないために何段階もチェックポイントがあり、「注意報」は第1段階なのです。リスクを軽視してはいけませんが、不安を煽るのもよくありません。
供給増よりも需要の調整を
今回の需給逼迫の主原因は、季節外れの猛暑による需要増加と考えられます。例年、需要増は7月後半から始まるのですが、今年は梅雨明けが観測史上最も早く、8月並みの気温が1週間も続きました。
一方、供給側は、6月は需要の少なさを念頭にメンテナンスなどで休止している設備が多く、東京エリアでは、過去7年間で見ても6月中に50GW(ギガワット)を超えた年はありません。梅雨明けと猛暑の到来が、半月も前倒しで来てしまう異常気象で、需要が突発的に増えたのです。これを早めに察知し、供給を準備するというのは困難だと思います。
例年の需要を想定して、供給を準備するわけですから、今回のケースは、発電所を増やせば解決するという問題ではありません。こういう時、“供給量を増やせ”“原子力だ”という議論がすぐ出てきます。
突発的な需要の急増に対して、原発などの発電所を増やしても、急に運転できるわけではないので、確実ではありません。突発的な事態には、省エネやデマンドレスポンス(需要応答、供給量に合わせて需要を調整すること)が一番合理的です。
個人には限界 建物を断熱化
今後、夏の需要のピークが8月にくるので、そのときに注意報や警報が出る可能性はあります。その際、節電対策を個人の努力任せにするのは本末転倒です。工場や商業施設などでデマンドレスポンスを行う対策の方が優先順位が高いです。
大手企業が実行すれば、1%程度の不足を補う威力を発揮することもあります。技術的には、事前の契約に基づいて、遠隔操作や自動で温度設定を変える方法もあります。
個人でできるのは、健康を害してまで節電するなどの不適切な行動をとらないことです。むしろ、お店に入って過剰冷房であれば、やんわりとクレームするなど、企業を動かすことが先決でしょう。
冬はさらに需給が逼迫すると予想されていますが、対策はまず省エネです。建物の断熱化が不十分な日本で、供給だけを増やそうとするのは、例えると、穴だらけのバケツに、せっせと水を汲み入れるようなもの。穴をふさぐのが先です。窓を二重ガラス・樹脂サッシにするだけでも、エアコンの余計な運転を減らすことができます。企業や店舗などでも二重ガラスにするなど、冬までの数カ月間にできる対策はかなりあります。
風力発電など再エネ主体に
新築の断熱化が2025年から義務付けられますが、いまからでも、住宅業界の努力で、高断熱化した住宅を供給することだと思います。購入側にとっても、20年住めば電気代や暖房費の節約で、支出以上の便益を得られます。収入が低い人でも、補助金で断熱化できるようにすることもよいでしょう。
今回の異常気象は、気候危機の影響の可能性が高いです。火力発電に頼ってきた政府や企業の責任は大きいです。太陽光発電だけでなく、夜も供給できる風力発電を増やし、再エネ主体の社会に転換していくことが必要です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年7月12日付掲載
「注意報」は第一段階 軽視しないが冷静に
大企業の節電こそ威力を発揮
今回の需給逼迫の主原因は、季節外れの猛暑による需要増加と考えられます。
供給増よりも需要の調整を
突発的な事態には、省エネやデマンドレスポンス(需要応答、供給量に合わせて需要を調整すること)が一番合理的。
節電対策を個人の努力任せにするのは本末転倒。工場や商業施設などでデマンドレスポンスを行う対策の方が優先順位が高い。
太陽光発電だけでなく、夜も供給できる風力発電を増やし、再エネ主体の社会に転換していくことが必要。
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