世界経済の構造転換② 地球規模の搾取と収奪
群馬大学名誉教授 山田博文さん
現代経済は、一国で商品が生産され販売されるといった、単純な実体経済が支配的な経済ではありません。地球を舞台にした現代経済の特徴は、グローバル化・情報化・金融化の三つのキーワードで読み解くことができるようです。(図)
あらゆる領域に
現代経済は、原材料の調達・加工・製造・輸送・販売などが国境を越え、地球規模のグローバル・サプライチェーン(供給網)のもとで営まれています。多国籍企業は、安い国で原材料を調達・加工・製造し、完成品は高く売れる国で販売し、驚くほどの独占的高利潤を得ています。
グローバル化したのは、モノだけでなく、カネ・ヒト・技術・情報などあらゆる領域に広がります。グローバル化の主な推進主体は、市場原理主義・新自由主義政策を世界各国に普及するアメリカ政府・大企業・金融業・国際通貨基金(IMF)・世界銀行などです。日本など各国の巨大資本もグローバル化の大波に乗って多国籍化し、高利潤を得ています。
他方、多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展しました。
経済のグローバル化の限界が表面化し、その見直しが始まりました。国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決めました。
現代の経済活動は、情報通信技術(ICT)の革命に支えられ、時間と空間の制限を越えています。企業・団体・個人は、デジタルプラットフォーム(インターネット上の経済活動基盤)を利用することで、地球の裏側との取引もリアルタイムの速度で実施できます。記録されたビッグデータは人工知能(AI)で解析され、多様な需要にマッチした新しいビジネスチャンスが提供されます。
しかし、企業・団体・個人の情報が、アメリカの巨大IT独占企業(GAFAMなど)の提供するデジタルプラットフォームを介して第三者に知れわたるリスクも発生します。
金融化の進展で
現代経済のグローバル化・情報化のメリットを最大限引き出したのは、銀行・証券・各種投資ファンドなどの金融業です。金融業とITとは親和性が高く、経済の金融化が進展しました。金融とはマネーの融通のことですが、現代のマネーの大半は銀行預金(預金通貨)として、グローバルに連結された銀行のコンピューターの中の数字情報として存在しています。国境を越えた数百億円の売買取引でも、マネーの受け払いは銀行口座を利用し、一瞬で完結します。一瞬で空前の利益が得られる一方、失敗すれば大資本でも破綻するハイリスク・ハイリターンの経済です。
実体経済の規模を表す世界の国内総生産(GDP)は約100兆ドルですが、世界の株式・債券・預貯金といった金融資産の規模は約320兆ドルです。人類の生存に不可欠な実体経済が、株式・債券・為替といった金融資産のバプリーな動向に振り回される不安定経済―これが現代経済の特徴です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月30日付掲載
多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展。
国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決定。
群馬大学名誉教授 山田博文さん
現代経済は、一国で商品が生産され販売されるといった、単純な実体経済が支配的な経済ではありません。地球を舞台にした現代経済の特徴は、グローバル化・情報化・金融化の三つのキーワードで読み解くことができるようです。(図)
あらゆる領域に
現代経済は、原材料の調達・加工・製造・輸送・販売などが国境を越え、地球規模のグローバル・サプライチェーン(供給網)のもとで営まれています。多国籍企業は、安い国で原材料を調達・加工・製造し、完成品は高く売れる国で販売し、驚くほどの独占的高利潤を得ています。
グローバル化したのは、モノだけでなく、カネ・ヒト・技術・情報などあらゆる領域に広がります。グローバル化の主な推進主体は、市場原理主義・新自由主義政策を世界各国に普及するアメリカ政府・大企業・金融業・国際通貨基金(IMF)・世界銀行などです。日本など各国の巨大資本もグローバル化の大波に乗って多国籍化し、高利潤を得ています。
他方、多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展しました。
経済のグローバル化の限界が表面化し、その見直しが始まりました。国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決めました。
現代の経済活動は、情報通信技術(ICT)の革命に支えられ、時間と空間の制限を越えています。企業・団体・個人は、デジタルプラットフォーム(インターネット上の経済活動基盤)を利用することで、地球の裏側との取引もリアルタイムの速度で実施できます。記録されたビッグデータは人工知能(AI)で解析され、多様な需要にマッチした新しいビジネスチャンスが提供されます。
しかし、企業・団体・個人の情報が、アメリカの巨大IT独占企業(GAFAMなど)の提供するデジタルプラットフォームを介して第三者に知れわたるリスクも発生します。
金融化の進展で
現代経済のグローバル化・情報化のメリットを最大限引き出したのは、銀行・証券・各種投資ファンドなどの金融業です。金融業とITとは親和性が高く、経済の金融化が進展しました。金融とはマネーの融通のことですが、現代のマネーの大半は銀行預金(預金通貨)として、グローバルに連結された銀行のコンピューターの中の数字情報として存在しています。国境を越えた数百億円の売買取引でも、マネーの受け払いは銀行口座を利用し、一瞬で完結します。一瞬で空前の利益が得られる一方、失敗すれば大資本でも破綻するハイリスク・ハイリターンの経済です。
実体経済の規模を表す世界の国内総生産(GDP)は約100兆ドルですが、世界の株式・債券・預貯金といった金融資産の規模は約320兆ドルです。人類の生存に不可欠な実体経済が、株式・債券・為替といった金融資産のバプリーな動向に振り回される不安定経済―これが現代経済の特徴です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月30日付掲載
多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展。
国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決定。
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