デジタル化社会 光と影③ 「監視社会」になる危険
経済研究者 友寄英隆さん
デジタル化は、社会生活のあり方にも、光と影の対照的な影響をもたらします。
コロナ・パンデミック(新型コロナウイルスの大流行)による社会的危機が、狭い意味の経済過程だけでなく、人間の社会的諸関係の全体にかかわるものであるだけに、コロナ禍からの回復過程でも、さまざまな分野で最新のデジタル技術が利用されていく可能性があります。これは、経済恐慌からの回復期に、生産過程での技術革新が急速に進むことに似ていますが、違いは、デジタル化は、行政や企業の力が結びついて、急速に社会全体に浸透していくことです。
格差の固定化
デジタル・ディバイド(情報格差)とは、インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のことです。
情報格差は、資本主義社会における所得、資産などの経済的な格差と結びついており、情報格差が経済格差を拡大させ、それがさらに情報格差を拡大・固定化するという悪循環をもたらします。
コロナ禍の以前から、ICT(情報通信技術)革命によって、教育政策は大きく変化してきました。安倍晋三前内閣=自公政権はすでに、IT(情報技術)「人材不足」が深刻になってきたため、小学校からのプログラミング教育の必修化を決めました。さらに、菅義偉首相は1月の通常国会の施政方針演説で、「小中学生に1人1台のIT端末」など、「教育のデジタル化も一挙に進めます」と強調しました。
しかし、文化・教育の分野では、デジタル化の影響は、広く深く複雑な形で現われてくることが予想されます。財界からの目先の要求に押されて、ことを拙速に強行して、後世に取り返しのつかないことにならないよう、長期的視点から、その功罪を慎重に検討しながら進めることが必要でしょう。
■情報セキュリティー10大脅威2020
IPA(情報処理推進機構)資料から作成
見えない技術
資本主義のもとでデジタル化された情報は、コンピューターの内部で電子的に高速処理されるために、その過程は、人間にはまったく不可視的になり(人間には見えなくなり)、それを人間がチェックすることが難しくなります。
例えば、資本主義企業や国家を危機にさらすサイバー攻撃は、コンピューター技術の不可視性を前提に、それを悪用したものです。情報処理推進機構(IPA)は毎年「情報セキュリティー10大脅威」を発表しており、デジタル化経営とともに、経営情報の外部漏洩(ろうえい)、サイバー攻撃、予期せぬICT基盤の故障など、セキュリティー上の脅威が増大すると警告しています。
菅首相は、施政方針演説で、次のように述べました。
「デジタル庁の創設は、改革の象徴であり、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は2000億円の予算を持った司令塔として、国全体のデジタル化を主導します」
具体的には、「全国規模のクラウド移行」、「自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化」、「マイナンバーカードの普及」、「健康保険証との一体化」、「運転免許証との一体化」、「公務員の採用枠にデジタル職の創設」、「教育のデジタル化」、などなどを挙げています。
しかし、行政のデジタル化によって、個人のプロファイル(人物記録・履歴)が処理され、流通する過程は、ブラックポックス化します。予算の計上や執行などの「指揮命令権を持つデジタル庁」によって、個人情報が国家に集中すると、国民の民主的な権利を踏みにじり、自由を抑制する「監視社会」になる危険があります。
社会全体が監視社会になることは、国民全体が力を合わせて、なんとしても阻止しなければなりません。そのためにも個人情報のデジタル化について、その原理をしっかり学ぶことが大事です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月11日付掲載
経済格差がデジタル技術の恩恵の格差にならないように。
デジタル庁による、行政や国政のデジタル化の推進。個人情報の集約化による漏えいや不正利用、監視社会の危険。
規制が必要になるでしょうね。
経済研究者 友寄英隆さん
デジタル化は、社会生活のあり方にも、光と影の対照的な影響をもたらします。
コロナ・パンデミック(新型コロナウイルスの大流行)による社会的危機が、狭い意味の経済過程だけでなく、人間の社会的諸関係の全体にかかわるものであるだけに、コロナ禍からの回復過程でも、さまざまな分野で最新のデジタル技術が利用されていく可能性があります。これは、経済恐慌からの回復期に、生産過程での技術革新が急速に進むことに似ていますが、違いは、デジタル化は、行政や企業の力が結びついて、急速に社会全体に浸透していくことです。
格差の固定化
デジタル・ディバイド(情報格差)とは、インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のことです。
情報格差は、資本主義社会における所得、資産などの経済的な格差と結びついており、情報格差が経済格差を拡大させ、それがさらに情報格差を拡大・固定化するという悪循環をもたらします。
コロナ禍の以前から、ICT(情報通信技術)革命によって、教育政策は大きく変化してきました。安倍晋三前内閣=自公政権はすでに、IT(情報技術)「人材不足」が深刻になってきたため、小学校からのプログラミング教育の必修化を決めました。さらに、菅義偉首相は1月の通常国会の施政方針演説で、「小中学生に1人1台のIT端末」など、「教育のデジタル化も一挙に進めます」と強調しました。
しかし、文化・教育の分野では、デジタル化の影響は、広く深く複雑な形で現われてくることが予想されます。財界からの目先の要求に押されて、ことを拙速に強行して、後世に取り返しのつかないことにならないよう、長期的視点から、その功罪を慎重に検討しながら進めることが必要でしょう。
■情報セキュリティー10大脅威2020
1 | 標的型攻撃による機密情報の窃取 |
2 | 内部不正による情報漏えい |
3 | ビジネスメール詐欺による金銭被害 |
4 | サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 |
5 | ランサムウェアによる被害 |
6 | 予期せぬlT基盤の障害に伴う業務停止 |
7 | 不注意による情報漏えい |
8 | インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 |
9 | IoT機器の不正利用 |
10 | サービス妨害攻撃によるサービスの停止 |
見えない技術
資本主義のもとでデジタル化された情報は、コンピューターの内部で電子的に高速処理されるために、その過程は、人間にはまったく不可視的になり(人間には見えなくなり)、それを人間がチェックすることが難しくなります。
例えば、資本主義企業や国家を危機にさらすサイバー攻撃は、コンピューター技術の不可視性を前提に、それを悪用したものです。情報処理推進機構(IPA)は毎年「情報セキュリティー10大脅威」を発表しており、デジタル化経営とともに、経営情報の外部漏洩(ろうえい)、サイバー攻撃、予期せぬICT基盤の故障など、セキュリティー上の脅威が増大すると警告しています。
菅首相は、施政方針演説で、次のように述べました。
「デジタル庁の創設は、改革の象徴であり、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は2000億円の予算を持った司令塔として、国全体のデジタル化を主導します」
具体的には、「全国規模のクラウド移行」、「自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化」、「マイナンバーカードの普及」、「健康保険証との一体化」、「運転免許証との一体化」、「公務員の採用枠にデジタル職の創設」、「教育のデジタル化」、などなどを挙げています。
しかし、行政のデジタル化によって、個人のプロファイル(人物記録・履歴)が処理され、流通する過程は、ブラックポックス化します。予算の計上や執行などの「指揮命令権を持つデジタル庁」によって、個人情報が国家に集中すると、国民の民主的な権利を踏みにじり、自由を抑制する「監視社会」になる危険があります。
社会全体が監視社会になることは、国民全体が力を合わせて、なんとしても阻止しなければなりません。そのためにも個人情報のデジタル化について、その原理をしっかり学ぶことが大事です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月11日付掲載
経済格差がデジタル技術の恩恵の格差にならないように。
デジタル庁による、行政や国政のデジタル化の推進。個人情報の集約化による漏えいや不正利用、監視社会の危険。
規制が必要になるでしょうね。
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