きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿⑥ 賃金上がれば委託先変更

2017-06-24 10:37:29 | 経済・産業・中小企業対策など
グローバル経済の迷宮 海外工場の事件簿⑥ 賃金上がれば委託先変更

「グローバル・サプライチェーン(国際供給網)による海外への外部委託の増大は、雇用に重大な影響を及ぼしている」
国際労働機関(ILO)がこう強調しています。2016年に発表した報告書「グローバル・サプライチェーンにおける人間らしい労働」の一節です。
グローバル・サプライチェーンは現代の多国籍企業の特徴を表す言葉です。国境を何度もまたいで製造・流通・販売を管理する企業グループの取引の連鎖構造を意味します。

工場と国を選ぶ
ILOによると、グローバル・サプライチェーンには二つの種類があります。製造業者が頂点に立つタイプと小売業者が頂点に立つタイプです。違いは頂点の業者が工場を所有するかどうかです。
伝統的に製造業者が主導するのは自動車産業です。トヨタの子会社が各国に工場をもち、下請け業者を安定した供給網に組み込む、という構造です。
他方、小売業者主導の典型が衣料品産業です。世界的に有名な小売業者の決定とブランド名に、下請けの製造業者が縛られます。
しかし両者の境界線は不動ではありません。製造業主導型の産業も次第に小売業主導型に近づいている、とILOは指摘します。
「例えば自動車産業では部品製造の外部委託が世界中で進んできた。自動車会社は、製品全体のデザインや構造といった、知識の集約や戦略の立案に力を集中するようになってきた」
電機産業では小売業主導型への変質がもっと劇的に進んでいます。米国企業アップルは製造工程をほぼ完全に外部委託し、自社工場を放棄しています。
問題は、外部委託によって多国籍企業が強大な権力を握ることです。力の源泉は、委託する工場や国を自由に選べる点にあります。
「買い手(多国籍企業)は世界のあちこちにある下請け工場のコストと能力を比較し、発注先の工場と国を変更する」
自社の工場ではないから、コストが比較的高いとみれば簡単に切り捨てられるのです。



明海大学の宮崎礼二准教授

価格競争に拍車
「委託先を変えるという選択肢は現地企業への強い圧力になる」と明海大学の宮崎礼二准教授は解説します。
「賃金が上がりそうになると、多国籍企業はすぐに委託を打ち切って製造拠点を移します。現地企業は発注を続けてもらうために労働組合をつぶし、人権を抑圧します。現地政府も雇用を守るためには多国籍企業の要求をのまざるをえないという状況に置かれます」
多国籍企業の支配下で、雇用に対する究極の無責任体制が生まれているのです。ILOも問題視しています。
「グローバル・サプライチェーンにおいては、製造工程が所有を伴わずに外部委託されている。買い手(多国籍企業)は法的な雇い主ではなく、下請け業者の雇用関係に正式の責任を負っていない。それなのに買い手は労働条件に重大な影響を及ぼす」(同報告書)多国籍企業が下請け業者に低価格競争を強いるため、労働条件が切り下げられます。さらに第2次・第3次の下請け業者への委託により、低価格競争に拍車がかかります。
「価格競争が激しく受注量も変動するため、下請け業者は製造の一部をさらに下請けに出すよう駆り立てられる。下位の下請け業者の中には買い手も知らない零細企業や非公式の仕事場があり、自宅勤務者もいる」
ILOによれば、こうした零細な下請け業者は世界に4億2000万~5億1000万も存在します。多くの場合、労働条件に規制は及びません。
「このような業者の下では、人間らしい労働がはなはだしく欠如していることが多い」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年6月21日付掲載


下請けたたきは日本でもあることですが、多国籍企業の場合は国ごと発注先を変えられる。まさに負のスパイラルです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿