2024年 経済の潮流② 日本 停滞抜け出せず
東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん
世界の政治経済体制が動揺する中、足元の日本の政治経済も例外ではありません。1990年代以降、日本の政治経済体制は大きく変化しました。90年代後半以降、日本経済は金融危機を伴いながら物価も賃金も上がらない経済停滞状況に陥り、今日まで停滞は続き、抜け出す気配もありません。先進国の中で一人日本だけ低迷し続けています。金融緩和策をやめることもできません。原因は、経済循環の要である個人消費が慢性的に停滞しているためです。雇用が不安定で、賃金も上がらず、税や社会保険料が家計に重くのしかかり、さらに医療、介護、年金、雇用などの不安材料を抱えているため、消費が伸びないのは当然です。国内総生産(GDP)の5割を占める消費が伸びないため、経済成長も期待できません。
大事なことは国民生活がどうなっているかです。GDPはその映し絵にすぎません。とはいえ、GDPを無視するわけにはいきません。GDP成長率が30年もの間低迷し続けていることは、日本経済や国民生活に何らかの深刻な良からぬ問題が発生していることを示唆しています。
店頭で品定めする買い物客=東京都内
失政による人災
手掛かりは消費の長期低迷です。他の先進国のプラス成長を見ると、けん引しているのは安定した個人消費です。日本ではこれが弱くなっています。原因は、主に低賃金、不安定雇用です。さらに政府の失政が個人消費を抑えつけています。無駄遣いを放置したまま、増税や社会保険料負担の引き上げを繰り返し、さらに雇用、年金、医療、介護など国民生活が抱える不安に対して背を向け続けている政府の姿勢が、国民生活の劣化を招き、消費を抑え込んでいます。つまり、日本経済の停滞は失政による人災なのです。
その結果、生産、投資、雇用、所得、消費の連鎖、すなわち経済循環構造が衰弱、破断し、停滞から抜け出せない構造になっています。アベノミクスは、国民生活が疲弊しているさなかに増税を繰り返すという誤った政策、さらには長期の金融緩和策などの的外れの政策を続け、しかも借金を増やしそれを新たな借金で返し、それを丸ごと国民に押し付けるというやり方で停滞構造を定着させてしまいました。
この路線は、岸田文雄内閣になっても変わりません。国民生活に背を向け、挙げ句に物価上昇はいいことだと宣伝します。昨年から政府、日銀そしてマスコミまでもが「物価と賃金の好循環」という奇妙な説を唱え始めました。物価が上がれば賃金が上がり、賃金が上がれば物価が上がるといいます。しかし、物価が上がれば自動的に賃金があがるのでしょうか。物価が上昇して誰が喜ぶのでしょうか。低所得者や年金生活者は物価上昇に耐えられるのでしょうか。そもそも物価と賃金の上昇がなぜ好ましい循環なのでしょうか。
格差さらに拡大
中には、物価が上昇しても賃金が上がればいいという人がいます。しかし、物価が上昇すれば預貯金も目減りします。そうなると目減り分を補填(ほてん)できる高所得者とそれができない者の格差はさらに拡大します。日本経済の停滞は必至となります。いずれにせよ、こんな論理を振り回しているようでは、的外れな理屈で経済を停滞させ続けたアベノミクスの轍(てつ)を踏むことになります。
戦争をしない国の姿は変わってしまいました。そんな中、政権政党議員の裏金作りが報じられています。国民は今、国が崩れていく姿を目の当たりにしているのではないでしょうか。
(この項おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月11日付掲載
GDP成長率が30年もの間低迷し続けていることは、日本経済や国民生活に何らかの深刻な良からぬ問題が発生していることを示唆。
手掛かりは消費の長期低迷。他の先進国のプラス成長を見ると、けん引しているのは安定した個人消費。日本ではこれが弱く。原因は、主に低賃金、不安定雇用。さらに政府の失政が個人消費を抑えつけ。無駄遣いを放置したまま、増税や社会保険料負担の引き上げを繰り返し、さらに雇用、年金、医療、介護など国民生活が抱える不安に対して背を向け続けている政府の姿勢が、国民生活の劣化を招き、消費を抑え込む。つまり、日本経済の停滞は失政による人災。
東京工科大学名誉教授 工藤昌宏さん
世界の政治経済体制が動揺する中、足元の日本の政治経済も例外ではありません。1990年代以降、日本の政治経済体制は大きく変化しました。90年代後半以降、日本経済は金融危機を伴いながら物価も賃金も上がらない経済停滞状況に陥り、今日まで停滞は続き、抜け出す気配もありません。先進国の中で一人日本だけ低迷し続けています。金融緩和策をやめることもできません。原因は、経済循環の要である個人消費が慢性的に停滞しているためです。雇用が不安定で、賃金も上がらず、税や社会保険料が家計に重くのしかかり、さらに医療、介護、年金、雇用などの不安材料を抱えているため、消費が伸びないのは当然です。国内総生産(GDP)の5割を占める消費が伸びないため、経済成長も期待できません。
大事なことは国民生活がどうなっているかです。GDPはその映し絵にすぎません。とはいえ、GDPを無視するわけにはいきません。GDP成長率が30年もの間低迷し続けていることは、日本経済や国民生活に何らかの深刻な良からぬ問題が発生していることを示唆しています。
店頭で品定めする買い物客=東京都内
失政による人災
手掛かりは消費の長期低迷です。他の先進国のプラス成長を見ると、けん引しているのは安定した個人消費です。日本ではこれが弱くなっています。原因は、主に低賃金、不安定雇用です。さらに政府の失政が個人消費を抑えつけています。無駄遣いを放置したまま、増税や社会保険料負担の引き上げを繰り返し、さらに雇用、年金、医療、介護など国民生活が抱える不安に対して背を向け続けている政府の姿勢が、国民生活の劣化を招き、消費を抑え込んでいます。つまり、日本経済の停滞は失政による人災なのです。
その結果、生産、投資、雇用、所得、消費の連鎖、すなわち経済循環構造が衰弱、破断し、停滞から抜け出せない構造になっています。アベノミクスは、国民生活が疲弊しているさなかに増税を繰り返すという誤った政策、さらには長期の金融緩和策などの的外れの政策を続け、しかも借金を増やしそれを新たな借金で返し、それを丸ごと国民に押し付けるというやり方で停滞構造を定着させてしまいました。
この路線は、岸田文雄内閣になっても変わりません。国民生活に背を向け、挙げ句に物価上昇はいいことだと宣伝します。昨年から政府、日銀そしてマスコミまでもが「物価と賃金の好循環」という奇妙な説を唱え始めました。物価が上がれば賃金が上がり、賃金が上がれば物価が上がるといいます。しかし、物価が上がれば自動的に賃金があがるのでしょうか。物価が上昇して誰が喜ぶのでしょうか。低所得者や年金生活者は物価上昇に耐えられるのでしょうか。そもそも物価と賃金の上昇がなぜ好ましい循環なのでしょうか。
格差さらに拡大
中には、物価が上昇しても賃金が上がればいいという人がいます。しかし、物価が上昇すれば預貯金も目減りします。そうなると目減り分を補填(ほてん)できる高所得者とそれができない者の格差はさらに拡大します。日本経済の停滞は必至となります。いずれにせよ、こんな論理を振り回しているようでは、的外れな理屈で経済を停滞させ続けたアベノミクスの轍(てつ)を踏むことになります。
戦争をしない国の姿は変わってしまいました。そんな中、政権政党議員の裏金作りが報じられています。国民は今、国が崩れていく姿を目の当たりにしているのではないでしょうか。
(この項おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月11日付掲載
GDP成長率が30年もの間低迷し続けていることは、日本経済や国民生活に何らかの深刻な良からぬ問題が発生していることを示唆。
手掛かりは消費の長期低迷。他の先進国のプラス成長を見ると、けん引しているのは安定した個人消費。日本ではこれが弱く。原因は、主に低賃金、不安定雇用。さらに政府の失政が個人消費を抑えつけ。無駄遣いを放置したまま、増税や社会保険料負担の引き上げを繰り返し、さらに雇用、年金、医療、介護など国民生活が抱える不安に対して背を向け続けている政府の姿勢が、国民生活の劣化を招き、消費を抑え込む。つまり、日本経済の停滞は失政による人災。
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