改憲の企て 「緊急時」の議員任期延長① 政権の恣意的延命にも
国会は昨年7月の参院選の結果を経て、改憲推進の自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党で、衆参両院で改憲発議に必要な全体の3分の2の議席を占めることになりました。先の通常国会では維新、国民などが主導して憲法審査会の開催を常態化させ、「緊急時」の国会議員任期の延長を焦点に改憲議論をあおりはじめました。
参院選以降、維新や国民などは憲法審の毎週開催を声高に求め、自民党はその動きを巧みに利用し、改憲機運の醸成につなげようとしてきました。しかし、今年の憲法記念日(5月3日)に合わせて共同通信が行った世論調査では「改憲の機運は高まっていない」と答えた人は7割に達しています。「毎日」の調査では、岸田文雄首相のもとでの改憲に「反対」が47%で、「賛成」35%を上回りました。
国会と国民の意識に乖離(かいり)があるのは明らかです。
議会の関与なく権利の制限狙う
自公維国などが改憲の突破口としようとしているのが、大規模な自然災害や戦争などの緊急事態が起きた際の対応を憲法に新たに規定する「緊急事態条項」の創設です。「緊急事態」と称して政府に権力を集中させ、議会の関与なしに国民の権利制限を強化しようとするものです。
ただ、「緊急事態条項」の創設の企ては国民の強い批判もあり、進んでいません。そこで、先の通常国会で自民党などが持ち出してきた議論が「緊急時」の国会議員の任期延長です。
自民党などは、衆議院が解散もしくは任期満了時に災害や戦争など緊急事態のために総選挙が実施できなければ議員が不在となることを問題としています。その上で、「国会機能の維持」を理由に、衆院議員の4年の任期を延長したり、解散後に議員としての地位を復活する仕組みづくりを提起しました。
衆院憲法審査会=4月6日
憲法審の議論で危険性が鮮明に
こうした動きの中で、維新、国民、衆院会派「有志の会」は3月30日に、「議員任期の延長」についての改憲条文案を共同発表するなど、任期延長を焦点にしようと策動。しかし、「緊急事態」を口実に議員任期の延長を可能にすることは、国民が政権を代える機会を奪い、権力乱用と政権の恣意(しい)的延命につながります。
憲法審の議論では任期延長の危険性が鮮明になりました。
衆参の憲法審で参考人として陳述した長谷部恭男・早稲田大学大学院教授は、衆院議員の任期が延長されると、総選挙で得た正規のものとは異なる「異形の国会」が、国会に付与された全ての権能を行使し得ることになると述べ、「緊急時の名を借りて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスク」があると指摘。
「民意を反映していない政権の継続は“緊急事態の恒久化を招く”ことになりかねない」と警告しました。
日中戦争下の1941年、衆院議員の任期が立法措置により1年延長されました。短期間でも国民を選挙に没頭させることは「挙国一致体制」の整備と相いれないと政権が判断したためです。この間に日本は東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切り、無謀な戦争に突入していきます。
6月15日の衆院憲法審では、日本共産党の赤嶺政賢議員がこうした経過を振り返り、「戦後の日本はこの反省から、権力者の都合で議員任期を延長できないように法律ではなく憲法に任期を規定した。その憲法の規定自体を変えてしまおうというのは、歴史の教訓を真っ向から踏みにじるものにほかならない」と批判しました。(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月17日付掲載
自民党などは、衆議院が解散もしくは任期満了時に災害や戦争など緊急事態のために総選挙が実施できなければ議員が不在となることを問題と。その上で、「国会機能の維持」を理由に、衆院議員の4年の任期を延長したり、解散後に議員としての地位を復活する仕組みづくりを提起。
衆参の憲法審で参考人として陳述した長谷部恭男・早稲田大学大学院教授は、衆院議員の任期が延長されると、総選挙で得た正規のものとは異なる「異形の国会」が、国会に付与された全ての権能を行使し得ることになると指摘。
国会は昨年7月の参院選の結果を経て、改憲推進の自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党で、衆参両院で改憲発議に必要な全体の3分の2の議席を占めることになりました。先の通常国会では維新、国民などが主導して憲法審査会の開催を常態化させ、「緊急時」の国会議員任期の延長を焦点に改憲議論をあおりはじめました。
参院選以降、維新や国民などは憲法審の毎週開催を声高に求め、自民党はその動きを巧みに利用し、改憲機運の醸成につなげようとしてきました。しかし、今年の憲法記念日(5月3日)に合わせて共同通信が行った世論調査では「改憲の機運は高まっていない」と答えた人は7割に達しています。「毎日」の調査では、岸田文雄首相のもとでの改憲に「反対」が47%で、「賛成」35%を上回りました。
国会と国民の意識に乖離(かいり)があるのは明らかです。
議会の関与なく権利の制限狙う
自公維国などが改憲の突破口としようとしているのが、大規模な自然災害や戦争などの緊急事態が起きた際の対応を憲法に新たに規定する「緊急事態条項」の創設です。「緊急事態」と称して政府に権力を集中させ、議会の関与なしに国民の権利制限を強化しようとするものです。
ただ、「緊急事態条項」の創設の企ては国民の強い批判もあり、進んでいません。そこで、先の通常国会で自民党などが持ち出してきた議論が「緊急時」の国会議員の任期延長です。
自民党などは、衆議院が解散もしくは任期満了時に災害や戦争など緊急事態のために総選挙が実施できなければ議員が不在となることを問題としています。その上で、「国会機能の維持」を理由に、衆院議員の4年の任期を延長したり、解散後に議員としての地位を復活する仕組みづくりを提起しました。
衆院憲法審査会=4月6日
憲法審の議論で危険性が鮮明に
こうした動きの中で、維新、国民、衆院会派「有志の会」は3月30日に、「議員任期の延長」についての改憲条文案を共同発表するなど、任期延長を焦点にしようと策動。しかし、「緊急事態」を口実に議員任期の延長を可能にすることは、国民が政権を代える機会を奪い、権力乱用と政権の恣意(しい)的延命につながります。
憲法審の議論では任期延長の危険性が鮮明になりました。
衆参の憲法審で参考人として陳述した長谷部恭男・早稲田大学大学院教授は、衆院議員の任期が延長されると、総選挙で得た正規のものとは異なる「異形の国会」が、国会に付与された全ての権能を行使し得ることになると述べ、「緊急時の名を借りて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスク」があると指摘。
「民意を反映していない政権の継続は“緊急事態の恒久化を招く”ことになりかねない」と警告しました。
日中戦争下の1941年、衆院議員の任期が立法措置により1年延長されました。短期間でも国民を選挙に没頭させることは「挙国一致体制」の整備と相いれないと政権が判断したためです。この間に日本は東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切り、無謀な戦争に突入していきます。
6月15日の衆院憲法審では、日本共産党の赤嶺政賢議員がこうした経過を振り返り、「戦後の日本はこの反省から、権力者の都合で議員任期を延長できないように法律ではなく憲法に任期を規定した。その憲法の規定自体を変えてしまおうというのは、歴史の教訓を真っ向から踏みにじるものにほかならない」と批判しました。(つづく)(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月17日付掲載
自民党などは、衆議院が解散もしくは任期満了時に災害や戦争など緊急事態のために総選挙が実施できなければ議員が不在となることを問題と。その上で、「国会機能の維持」を理由に、衆院議員の4年の任期を延長したり、解散後に議員としての地位を復活する仕組みづくりを提起。
衆参の憲法審で参考人として陳述した長谷部恭男・早稲田大学大学院教授は、衆院議員の任期が延長されると、総選挙で得た正規のものとは異なる「異形の国会」が、国会に付与された全ての権能を行使し得ることになると指摘。
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