旧地名で液状化予測へ 「耕地」=水田 「土腐」=沼田
横浜の市民団体
「名は体を表す」ということわざがありますが、土地の名前についても例外ではありません。横浜市の港北区では、同区の旧地名を研究する市民団体が、積み上げた知識を生かし、液状化発生地点の予測に役立てようとしています。首都圏総局・島崎桂記者
6年かけ調査
港北区を細かく色分けした大きな地図には、「裏土腐(うらどぶ)」や「居家操(いやぐり)」など見慣れない地名が並び、自然や史跡の写真も見る人を楽しませます。
現代の地図に旧地名を配したこのユニークな地図は「港北歴史地名ガイドマップ」です。作成したのは市民団体「港北地名を調べる会」で、現在は「港北地名と文化の会」(渡辺忠治代表)として活動しています。
「調べる会」の6人は、知人などから入手した約50~120年前の古地図をもとに、同区の古い住民からの聞き取りなどで旧地名を調査。2000年から6年がかりで、聞き取ったのは約80人、調べた地名は190件を超えました。
「港北歴史地名ガイドマップ」の一部
「地名は自然環境、歴史、人びとの暮らしなどのシンボルになっている」と話すのは渡辺代表です。3月11日の東日本大震災発生以降、「『地名の知識を災害対策に生かせないか』と考え、液状化発生地点と旧地名の関係に着目しました」と言います。
港北区の日吉日本共産党後援会は11月4日、「旧地名から探る日吉・箕輪地域の液状化地盤を考えるつどい」を開きました。
招かれた「文化の会」の柴和紀さん(84)は、旧地名と地盤状態の密接な関係について説明。水田を指す「耕地」、泥田を指す「土腐」、沼を指す「船」や「橋」などを地名に持つ地域での液状化の危険性を指摘し、「液状化対策には、地盤状態の事前の把握が重要です」と強調しました。
「文化の会」メンバー(右側)から話を聞く、日吉後援会の人たちと、日本共産党の白井まさ子市議(中央)=11月4日、横浜市港北区
液状化の危険性がある地名
【注】「港北地名と文化の会」資料、若松教授の調査などによる。統計に基づくものであり、必ずしも一致するものではありません
大震災では、「池土腐」や「中土腐」などの旧地名を持つ現在の港北区小机町で、建物が傾くなど20件以上の液状化が発生しました。しかし、05年に液状化予測図を作成した市は、同町での被害を想定していませんでした。
地名の由来は諸説あり、地名だけで液状化を語ることはできません。それでも、統計や実績を見れば、必ずしも偶然とは言い切れないものがあります。
「文化の会」では、「自分たちの生活の場を、自分たちの手で良くしていくため」という「会」設立の目的にそって今、行政による液状化予測の向上を求めています。「住みよいまちづくり」のための取り組みは、今後も続いていきそうです。
震災で液状化が発生した港北区小机町付近。以前は「池土腐」「中土腐」と呼ばれていた
有効性を指摘
「文化の会」のように地名から地盤状態を探る試みに対して、専門家もその有効性を指摘します。関東学院大学の若松加寿江教授(工学博士)もその一人です。
若松教授は著書『日本の液状化履歴マップ745-2008』(東京大学出版会)で、日本史上の150の地震を対象に、文献の記述などから全国1万6688カ所の液状化発生地点をまとめました。同氏は調査結果から「地名と液状化発生地点に共通性が見られた」と話します。
また、「過去に河川の氾濫が多発していた地域は地盤が軟弱で、自然の埋め立て地のような状態にある」として液状化の可能性を指摘。「氾濫を表す地名」として、堤防が押し切られた経験を指す「押切」や、氾濫によってできた池を指す「押堀」「押立」などを挙げます。
実際、今回の大震災では1940年代まで「押堀」とされる池があった東京都葛飾区の東金町で液状化が発生しました。
水辺に生育する植物の名前にも注意が必要です。「(液状化の起きやすい)地下水の浅い土地で生育する『柳』の付く土地での液状化が多かった」と話す若松教授。同様に「芹(セリ)」、「葦・葭(アシ)」と、「菅(スゲ)」などが付く土地で液状化が発生した例もあるといいます。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年11月20日付掲載
古い地名から、液状化の起こりやすい地域が予測できるんですね。液状化でなくても氾濫の起こりやすい場所、土砂崩れの起こりやすい場所なども予測できるんでしょうね。
以前、NHKのEテレ・「極める」シリーズで、「地名から湧水(名水)のある場所を予測できる」って言っていました。
昔の人の知恵はすごかったのですね。
横浜の市民団体
「名は体を表す」ということわざがありますが、土地の名前についても例外ではありません。横浜市の港北区では、同区の旧地名を研究する市民団体が、積み上げた知識を生かし、液状化発生地点の予測に役立てようとしています。首都圏総局・島崎桂記者
6年かけ調査
港北区を細かく色分けした大きな地図には、「裏土腐(うらどぶ)」や「居家操(いやぐり)」など見慣れない地名が並び、自然や史跡の写真も見る人を楽しませます。
現代の地図に旧地名を配したこのユニークな地図は「港北歴史地名ガイドマップ」です。作成したのは市民団体「港北地名を調べる会」で、現在は「港北地名と文化の会」(渡辺忠治代表)として活動しています。
「調べる会」の6人は、知人などから入手した約50~120年前の古地図をもとに、同区の古い住民からの聞き取りなどで旧地名を調査。2000年から6年がかりで、聞き取ったのは約80人、調べた地名は190件を超えました。
「港北歴史地名ガイドマップ」の一部
「地名は自然環境、歴史、人びとの暮らしなどのシンボルになっている」と話すのは渡辺代表です。3月11日の東日本大震災発生以降、「『地名の知識を災害対策に生かせないか』と考え、液状化発生地点と旧地名の関係に着目しました」と言います。
港北区の日吉日本共産党後援会は11月4日、「旧地名から探る日吉・箕輪地域の液状化地盤を考えるつどい」を開きました。
招かれた「文化の会」の柴和紀さん(84)は、旧地名と地盤状態の密接な関係について説明。水田を指す「耕地」、泥田を指す「土腐」、沼を指す「船」や「橋」などを地名に持つ地域での液状化の危険性を指摘し、「液状化対策には、地盤状態の事前の把握が重要です」と強調しました。
「文化の会」メンバー(右側)から話を聞く、日吉後援会の人たちと、日本共産党の白井まさ子市議(中央)=11月4日、横浜市港北区
液状化の危険性がある地名
地名 | 過去の地盤状態・利用法など |
耕 | 水田 |
堤・埜 | 堤防や河川敷 |
船・橋・岸・田・腐 | 沼 |
柳・芹・葦・葭・菅・蓮 | 水生植物の生育地 |
押切・押立・押堀 | 河川の氾濫地点 |
袋・合 | 河川の蛇行や合流地点 |
谷・久保 | 窪地 |
緑 | 埋め立て地・造成地 |
【注】「港北地名と文化の会」資料、若松教授の調査などによる。統計に基づくものであり、必ずしも一致するものではありません
大震災では、「池土腐」や「中土腐」などの旧地名を持つ現在の港北区小机町で、建物が傾くなど20件以上の液状化が発生しました。しかし、05年に液状化予測図を作成した市は、同町での被害を想定していませんでした。
地名の由来は諸説あり、地名だけで液状化を語ることはできません。それでも、統計や実績を見れば、必ずしも偶然とは言い切れないものがあります。
「文化の会」では、「自分たちの生活の場を、自分たちの手で良くしていくため」という「会」設立の目的にそって今、行政による液状化予測の向上を求めています。「住みよいまちづくり」のための取り組みは、今後も続いていきそうです。
震災で液状化が発生した港北区小机町付近。以前は「池土腐」「中土腐」と呼ばれていた
有効性を指摘
「文化の会」のように地名から地盤状態を探る試みに対して、専門家もその有効性を指摘します。関東学院大学の若松加寿江教授(工学博士)もその一人です。
若松教授は著書『日本の液状化履歴マップ745-2008』(東京大学出版会)で、日本史上の150の地震を対象に、文献の記述などから全国1万6688カ所の液状化発生地点をまとめました。同氏は調査結果から「地名と液状化発生地点に共通性が見られた」と話します。
また、「過去に河川の氾濫が多発していた地域は地盤が軟弱で、自然の埋め立て地のような状態にある」として液状化の可能性を指摘。「氾濫を表す地名」として、堤防が押し切られた経験を指す「押切」や、氾濫によってできた池を指す「押堀」「押立」などを挙げます。
実際、今回の大震災では1940年代まで「押堀」とされる池があった東京都葛飾区の東金町で液状化が発生しました。
水辺に生育する植物の名前にも注意が必要です。「(液状化の起きやすい)地下水の浅い土地で生育する『柳』の付く土地での液状化が多かった」と話す若松教授。同様に「芹(セリ)」、「葦・葭(アシ)」と、「菅(スゲ)」などが付く土地で液状化が発生した例もあるといいます。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年11月20日付掲載
古い地名から、液状化の起こりやすい地域が予測できるんですね。液状化でなくても氾濫の起こりやすい場所、土砂崩れの起こりやすい場所なども予測できるんでしょうね。
以前、NHKのEテレ・「極める」シリーズで、「地名から湧水(名水)のある場所を予測できる」って言っていました。
昔の人の知恵はすごかったのですね。
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