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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保3文書危険な大転換④ 軍事研究に民間「活用」 新たな国家総動員宣言(上)

2022-12-22 07:12:43 | 平和・憲法・歴史問題について
安保3文書危険な大転換④ 軍事研究に民間「活用」 新たな国家総動員宣言(上)
「防衛力のみならず、外交力・経済力を含む総合的な国力を活用し、我が国の防衛に当たる」。安保3文書の一つ「国家安全保障戦略」はこう述べ、国力のあらゆる要素を「防衛」にあてる考えを示しました。戦前の国家総動員体制による侵略戦争の反省を踏みにじる新たな「国家総動員」宣言といえます。
「官民の高い技術力を幅広くかつ積極的に安全保障に活用」。国家安保戦略はこう明記し、科学技術の軍事動員を掲げました。その狙いは、最新兵器の開発にあります。

民生分野の成果 秘とくの危険も
具体的には「経済安全保障重要技術育成プログラム」に言及。同プログラムは安全保障分野に企業や大学などを組みこむことを目的とした経済安保法にもとつくもので、国の予算から拠出される計5000億円の基金を使って大学・研究機関や企業などに研究開発を委託します。
同プログラムの第1回の研究課題公募には、無人機技術や海洋・宇宙関連技術などが挙がっており、ミサイル防衛の装置として使用することを想定した研究テーマもあります。
より重大なことに、「アカデミアを含む最先端の研究者の参画促進等に取り組む」として、研究者を軍事研究に動員することを狙っています。
防衛省はすでに、先進的な民生技術の軍事利用を目的とした「安全保障技術研究推進制度」を創設しており、大学などから公募し、助成を行っています。
安保3文書の閣議決定に先立って開かれた政府の有識者会議では、科学技術研究費のうち防衛省分が少ないとして、その比重を高めるよう求める意見が出ていました。大学や研究機関への交付金・補助金の削減が進むなか、軍事研究の比率を高めれば、多くの研究者が研究費を得るために軍事研究に動員される危険があります。
その結果、民生分野の研究成果も軍事情報として秘とくされてしまう危険もあります。



JAXAや東海大、岡山大が開発に参加している極超音速誘導弾(防衛装備庁資料から)

JAXAと空自 連携強化を推進
国家安保戦略は「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)等と自衛隊の連携の強化を進めるとしています。防衛省は航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編する方針であり、JAXAをより深く軍事に関与させる狙いです。
すでに政府は、違憲の敵基地攻撃兵器「スタンド・オフ・ミサイル」のうち、極超音速(マッハ5以上)で飛翔できる巡航ミサイル「極超音速誘導弾」の開発にJAXAを動員。極超音速技術の研究には、岡山大・東海大も参加しています。
政府は1969年の衆院決議に基づき、宇宙政策を非軍事分野に限定していましたが、2008年に成立した宇宙基本法は、宇宙開発利用を「我が国の安全保障に資するよう行われなければならない」と百八十度転換。12年にはJAXA法が改悪されて「安全保障」の研究開発が追加され、宇宙の軍事利用を加速しています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月21日付掲載


国家安保戦略は「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)等と自衛隊の連携の強化を進めると。防衛省は航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改編する方針であり、JAXAをより深く軍事に関与させる狙い。
すでに政府は、違憲の敵基地攻撃兵器「スタンド・オフ・ミサイル」のうち、極超音速(マッハ5以上)で飛翔できる巡航ミサイル「極超音速誘導弾」の開発にJAXAを動員。極超音速技術の研究には、岡山大・東海大も参加。
はやぶさ2などの宇宙探査の技術が、軍事利用される危険。
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安保3文書危険な大転換③ 暮らし壊す大軍拡の道

2022-12-21 07:10:13 | 平和・憲法・歴史問題について
安保3文書危険な大転換③ 暮らし壊す大軍拡の道
安保3文書が打ち出した敵基地攻撃能力保有などのための大軍拡。その財源として増税路線を打ち出したことで批判が高まっていま す。

軍事費5年間で1.5倍の43兆円
3文書の一つである「防衛力整備計画」は、軍事費を、2023年度から27年度までの5年間で、現行5年間の計画から1・5倍超となる43兆円に増額。不足分を補うための財源として、▽増税▽決算剰余金の活用▽防衛力強化資金▽歳出改革―を明記しました。
3文書と同日に決定された与党税制大綱は増税について、27年度までに①所得税②法人税③たばこ税の増税で1兆円強の財源を確保すると明記しました。
東日本大震災の復興費に充てている復興特別所得税の税率を現行の2・1%から1%引き下げる一方、所得税には税率1%を上乗せする付加税を課します。これはまさに「軍拡税」と言えるものです。しかも課税期間は期限を示さず延長されます。たばこ税は1本あたり3円相当の引き上げを段階的に実施します。
決算剰余金はこれまで補正予算の財源に使われていました。これを軍事費に回せば、補正予算の財源が不足し、増税につながりかねません。「防衛力強化資金」には、医療関係の積立金やコロナ対策費の未使用分など、医療、暮らしの予算の流用が狙われています。
「歳出改革」については、社会保障や文教費などの削減の加速が懸念されます。


「5年間で約43兆円」軍拡財源
本予算現在の軍事費(防衛省予算)の5年分
⇒年5兆円超、過去最大規模の水準を維持
不足分①歳出改革 ⇒社会保障、文教費などの削減も⇒補正予算の財源に充当
②決算余剰金 ⇒補正予算の財源に充当
これがなくなれば増税につながる
③防衛力強化資金 ⇒コロナ対策積立金などを充当
一度だけの収入、継続性がない
④増税 ・法人税 ⇒消費税を含む大増税も
・所得税 
・たばこ税
(その他)建設国債など⇒戦時国債乱発の戦前の反省を無視
米軍再編経費、SACO経費は「43兆円」の別枠!


戦前の反省反故 財源に国際使う
さらに、政府は、財源の不足をまかなうため、「軍事費の財源として公債を発行することはしない」(1966年の福田赴夫蔵相の答弁)としてきた政府見解を反故にして、自衛隊の施設建設のため建設国債約1・6兆円の発行にも踏み切ります。巨額の国債発行が侵略戦争の拡大につながった戦前・戦中の歴史の反省を踏まえ、国債の発行に厳しい規制が設けられている財政法を踏みにじるものです。
増税以外の財源は、いずれも一時的な財源にしかなりません。増税については1兆円超でとどまる保証はなく、消費税増税の危険性もあります。国債の増発は将来に負担を先送りするものです。
さらに、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設などに使われている在日米軍再編経費やSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費などは「43兆円」の別枠であり、実際にはさらに巨額の負担となります。
5月にNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請し、28年までに国防費を対GDP(国内総生産)比2%に引き上げると表明しているスウェーデンでは、財源について増税か社会保障などの削減が議論されています。財務省は増税、社会保障削減を狙っており、日本もこの道をたどらざるを得ません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月20日付掲載


3文書の一つである「防衛力整備計画」は、軍事費を、2023年度から27年度までの5年間で、現行5年間の計画から1・5倍超となる43兆円に増額。不足分を補うための財源として、▽増税▽決算剰余金の活用▽防衛力強化資金▽歳出改革―を明記。
補正予算の財源に使われてきた決算余剰金まで軍事費に使うといいます。
自衛隊の施設建設のため建設国債約1・6兆円の発行も。公共事業ならともかく、自衛隊の施設に建設国債とは流用にもあきれてしまいます。
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安保3文書危険な大転換② 敵基地攻撃も日米一体

2022-12-20 07:07:21 | 平和・憲法・歴史問題について
安保3文書危険な大転換② 敵基地攻撃も日米一体
「わが国への武力攻撃が行われた場合」「武力行使の3要件に基づき」「そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置」。安保3文書の最上位文書である「国家安全保障戦略」は敵基地攻撃(反撃能力)をこう定義し、「自衛の措置」だとして正当化しています。
しかし、重大な点は、「武力行使の3要件」には第2次安倍政権が強行した安保法制の下「わが国への武力攻撃が行われた場合」ではなくても、米軍の要請に基づいて集団的自衛権を行使する「存立危機事態」が含まれていることです。つまり、米軍とともに、あるいは米軍の肩代わりをして、他国を攻撃することが含まれています。
岸田文雄首相自身、16日の会見で、今回の3文書改定は「安保法制を実践面で強化する」と述べています。集団的自衛権を行使する態勢を強化するために敵基地攻撃能力を保有することこそ、核心部分です。
「国民の命と暮らし」を守ることとは無縁であるばかりか、米国の戦争への参戦国となり、日本が報復攻撃を受け、多くの市民の生命・財産が失われる危険があるのです。

戦略練り合わせ 協力を統合的に
「日米両国がそれぞれの戦略を擦り合わせ、防衛協力を統合的に進めていく」「戦略を整合させ、共に目標を優先付けることにより、同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する」。安保3文書の一つである「国家防衛戦略」は、戦略面での日米一体化を強調しています。実は、この点が安保3文書改定の最大の目標といっても過言ではありません。
敵基地攻撃能力についても、「日米が協力して対処していく」(国家安保戦略)、「情報収集を含め、日米共同でその・(敵基地攻撃)能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する」(国家防衛戦略)などとして、米国の統制下で行われる可能性を示しています。



フィリピン海で共同訓練を行う米原子力空母カールビンソン(手前)と海上自衛隊イージス艦「きりしま」(後方先頭)など=2021年9月(米インド太平洋軍ウェブサイトから)

攻撃される前に 破壊する「作戦」
敵基地攻撃がより深く米戦略に組み込まれる危険があるのが、敵基地攻撃と防空・ミサイル防衛を一体化させた「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)の導入です。IAMDは米国が中国・ロシアの高性能ミサイルに対抗していくため、同盟国を動員して地球規模で構築する「防空」網ですが、米統合参謀本部のドクトリン(教義)は、敵国の「ミサイル発射拠点、空港、指揮統制機能」などを、椙手前に破壊する「攻勢作戦」を行うことが含まれるとしています。日本も、そうした敵基地攻撃の一翼を担う危険もあります。
米軍と自衛隊は毎年、ミサイル防衛に関する共同訓練を行っていますが、今後、こうした訓練がどう変容していくのか注視する必要があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月19日付掲載


安保3文書の一つである「国家防衛戦略」は、戦略面での日米一体化を強調。実は、この点が安保3文書改定の最大の目標といっても過言ではありません。
敵基地攻撃能力についても、「日米が協力して対処していく」(国家安保戦略)、「情報収集を含め、日米共同でその(敵基地攻撃)能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する」(国家防衛戦略)などとして、米国の統制下で行われる可能性。
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安保3文書 危険な大転換① 日本発ミサイル戦争も

2022-12-19 07:23:20 | 平和・憲法・歴史問題について
安保3文書 危険な大転換① 日本発ミサイル戦争も
戦後の安全保障政策を大転換する安保3文書の閣議決定(16日)。岸田文雄首相は「1年以上、丁寧なプロセスを経た」と豪語しますが、大半は密室での議論であり、その内容は国民にほとんど知らされていません。3文書の問題点を明らかにしていきます。

最上位の戦略文書である「国家安全保障戦略」は、今回の3文書を「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである」と宣言しています。これに関して岸田首相は16日の記者会見で、「平和安全法制によって、法的・理論的には整った。今回の3文書で、実践面からも安全保障体制を強化する」と述べています。集団的自衛権の行使を可能とした2015年の安保法制を実践面で強化し、「戦争国家づくり」の総仕上げを図る考えです。

敵基地攻撃能力 行使に踏み込む
最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだことです。

【敵基地攻撃能力のポイント】
●理由ミサイル防衛だけでは他国のミサイル脅威に対抗できない
●定義相手領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力
●要件安保法制の新「武力行使の3要件」に基づく=日本が攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使で攻撃可能
●対象「相手の領域」=具体的な目標は明記せず。指揮統制機能も含む(=与党合意)
●着手日本が武力攻撃を受けていなくても、相手国が「着手」すれば攻撃。「着手」したかどうかは総合的に判断(=与党合意)

敵基地攻撃能力とは何か。安保戦略は、「自衛の措置」として、「相手の領域で有効な反撃を加えるスタンド・オフ防衛能力」だと定義し、他国領域を攻撃する能力だとしています。
「防衛力整備計画」では、具体的な、「スタンド・オフ防衛能力」配備計画(表)を示しています。

「スタンド・オフ・ミサイル」関連の主な計画
【国産】


陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾の発射装置

○12式地対艦誘導弾(能力向上型)の量産
○高速滑空弾の開発・量産
○高速滑空弾(能力開発型)の開発・量産
○極超音速誘導弾の開発

【輸入】
○JSM(F35A戦闘機に搭載)の取得
○JASSM(F15戦闘機に搭載)の取得
○トマホーク(潜水艦に搭載?)


潜水艦から発射されるトマホーク(レイセオン社ウェブサイトから)

【その他】
○火薬庫の整備
○試験場の新設
○F15戦闘機の改修
○ミサイル発射型潜水艦の導入

12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画です。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
ただ、これらは今後5年間で完成する見通しがないため、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホーク(射程1600キロ)の大量購入を検討。F35、F15戦闘機から発射するミサイル(JSM、JASSM)の購入も進めています。
ミサイルを格納する火薬庫や発射試験場を建設。発射地点を秘匿し、効果的な攻撃を行うため、スタンド・オフ・ミサイル発射可能な潜水艦まで導入しようとしています。

「攻撃着手」定義 首相説明できず
これまで日本政府は、自国領域に攻撃が発生した場合にのみ、これを排除するために武力行使する「専守防衛」を基本原則としてきました。この「専守防衛」を大きく踏み越え、まさに日本は周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けようとしています。
しかし、攻撃を仕掛ける「相手の領域」が具体的にどこを指すのか示されておらず、事実上、全域が攻撃対象になります。自民党は相手国の「指揮統制機能」も含まれると解釈。そこには政府機関や軍司令部も当然含まれることになり、全面戦争につながる危険があります。
さらに、政府は実際に攻撃を受けていなくても、「着手」すれば攻撃可能という立場です。
ただ、何をもって「着手」と判断するのか。首相は16日の会見で「着手」の定義を間われ、「いろいろな学説があり難しい問題だ」として説明できませんでした。
相手国から見れば日本が国際法違反の先制攻撃を仕掛けたとみなされます。「反撃能力」は「国民の命と暮らしを守るため」に保有するとしていますが、逆に相手国の報復攻撃を引き起こし、国土の戦場化をもたらします。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月18日付掲載


最大の「転換」は、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の行使に踏み込んだこと。
12式地対艦誘導弾の能力向上型(射程を1000キロ以上に延伸)を地上、艦艇、航空機に配備。地上・艦艇発射型は27年度までの運用能力獲得を目指しています。運用部隊は当面、全国に11個中隊を配備する計画。
さらに、高速滑空弾や極超音速誘導弾といった高性能ミサイルの開発を進めます。
まさに、日本本国の専守防衛の範囲を超え、周辺国に「ミサイル戦争」を仕掛けるものに。
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デュアルユース(軍民両用)の危険⑤ 殺傷型の無人兵器も

2022-12-18 07:11:42 | 平和・憲法・歴史問題について
デュアルユース(軍民両用)の危険⑤ 殺傷型の無人兵器も
安保3文書の改定に向けて、自民党が4月に発表した「提言」は、「戦い方の変化」を強調しました。その推進力は「急速な技術革新」だといいます。「AI(人工知能)、無人機、量子技術等の先端技術」によって出現している「新たな『戦い方』」に対応するため、最先端の民生技術を取り入れた兵器研究・開発が必要だといいます。


ベルリンで開かれた安全保障会議で展示された無人航空機ドローンのモデル=11月30日(ロイター)

未来
「未来の戦場」はどのような世界になると想定されているのでしょうか。中央省庁などからの委託により調査研究を行っている「未来工学研究所」(平澤冷理事長)が行った「技術革新がもたらす安全保障環境の変容と我が国の対応」報告書(2020年3月)がその一端を明らかにしています。
〈ロボット工学〉
無人航空機(UAV)、無人潜航艇(UUV)、無人車両(UGV)などの活用が進み、部分的ないし全面的に有人の兵器を置き換える。これらの無人兵器は有人兵器よりも長時間・長距離にわたって行動することができ、危険な敵地上空での偵察や攻撃にすでに広く活用されている。今後は輸送、補給、空中給油、傷病兵の回収などさらに幅広い分野に進出することになる。AIやIT(情報技術)との組み合わせにより、広範囲に分散した無人兵器が群(スウォーム)として振る舞うことで、新たな戦闘方法が出現することも予見される。
〈人工知能(Al)〉
AIが人間の指揮官の意思決定を支援するようになる。軍事計画の策定に関し、AIが人間の指揮官に選択肢を示す。偵察機や偵察衛星が入手した画像情報をAIが自動判別することで人間の分析官の事務量を軽減するといった用途での利用はすでに開始されている。
また、サイバー戦やミサイル防衛など、極端に進行速度の速い戦闘局面ではAIが人間の意思決定を全面的に代替する可能性がある。AIがロボット工学と組み合わされた場合には、殺傷型自律無人兵器(LAWS)として完全に人間の介在しない戦闘が実現する。現実と見分けがつかない偽映像などが登場し、情報戦がさらに熾烈(しれつ)さを増す。
〈バイオ技術〉
DNA操作や化学物質によって兵士の肉体的能力や認知能力などを拡張し、筋力や持久力を通常の人間よりもはるかに高めたり、夜間でも目が見えるなどの能力を付与することができるようになる。合成生物学によってより感染性や毒性の強い生物兵器や、敵の兵器やそれらを動かす燃料を分解してしまう新カテゴリーの生物兵器が出現する。一方で兵士の抗体を強化することも可能となる。
〈情報通信技術〉
軍事組織の運用するあらゆる装備品がネットワークによって接続され、戦場におけるモノのインターネット化が実現する。指揮通信統制系統が効率化し、軍事組織は前線における兵士個々人から宇宙空間までの全戦闘領域の情報をリアルタイムで共有しながら、より少数の兵力でも大きな効果を発揮する軍事作戦が可能となる。
〈神経工学〉
兵士の脳同士を直接接続してコミュニケーションをとる。人間の思考を反映して動く兵器などが出現する。また、敵の精神的・身体的能力を低下させ、捕虜の尋問をより効果的に行うことを可能とする。
〈宇宙技術〉
桁違いに安価な宇宙輸送が可能となることで、これまでに例を見ない大型の人工衛星や多数の「衛星コンステレーション」(多数の小型衛星を連携させて情報収集能力を高めるシステム)を軌道上に配備できるようになり、宇宙を用いた偵察、通信、航法能力が飛躍的に拡大する。レーザー迎撃システムが宇宙空間に配備される。他方で、人工衛星を標的とする対衛星攻撃が活発化する。

生活
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在になってしまいます。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められています。
(おわり)(金子豊弘、小村優、日隈広志が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年12月17日付掲載


未来の戦場では、ロボット工学、人工知能(AI)、バイオ技術、情報通信技術、神経工学、宇宙技術などありとあらゆるものが活用されると。
「軍事対軍事」の力の論理が科学・技術を覆ってしまえば、科学・技術は、人類の生存を脅かす存在に。人々の生活を豊かにするという本来の科学・技術の役割が果たせるようデュアルユース(軍民両用)の危険を取り除くための仕組みづくりが求められます。
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