きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ウクライナ戦時下の子どもたち③ 遺体を何度も目撃 寄り添い続け笑顔も

2024-02-23 06:34:49 | 国際政治
ウクライナ戦時下の子どもたち③ 遺体を何度も目撃 寄り添い続け笑顔も

「戦争でショックを受けた子どもの多くが、不安と恐怖以外の感情を失っています」
ウクライナ西部リビウ市にある、子どもたちの心をケアする施設「安全な場所」で勤務する精神科医のミラ・スラバさん(28)が語りました。



「安全な場所」の精神科医スラバさん

スラバさんは、2022年2月にロシアの侵略が始まった当初から、ハリコフやヘルソンなど東部の激戦地から逃げた子どもたちのケアをしてきました。
これまで10歳に満たない多くの小さな子どもを、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やパニック症候群、対人恐怖症、うつ病と診断してきました。
子どもたちとの接し方はまず、安心して過ごせる空間があるのだと認知させることです。指示や強制はせず、様子を見ながら一緒に遊び、優しく抱きしめたり、困ったことはないかとそのつど気にかけます。



心に傷を負う子どもたちと向き合うスタッフ


戦時下で懸命に生きる子どもたち

共感力育んで
子どもたちが環境に慣れたところで自己表現の仕方や他者への共感力を育みます。「社会生活を送る上で重要な要素です。いつか戦争が終わり、大人になった時のことを見越しながら支援しています」とスラバさん。
笑顔や怒った顔などさまざまな表情が描かれたカードを用いて「この人は今どういう気持ちか」と想像させるゲームをします。他者に攻撃的な言動が表れたときには、スタッフやスラバさんがその場で同じことを鏡のように繰り返し、相手がどう思うのかを考えるきっかけをつくります。
スラバさんが特に気にかけていたのは、5歳の男の子ユーリくん(仮名)。東部地域の小さな村で母親と2人で暮らしていましたが、22年3月初旬にロシア軍が村を占領し、居住地付近が戦闘の前線となりました。
ロシア軍は住民に対し「ここから逃げたければ金を寄越せ」といい、払えない人たちを軒並み銃殺。常に銃声や大砲の爆音が家の中に響き、ユーリくんは約4カ月間のほとんどを薄暗い地下室に隠れて過ごしました。
ロシア軍の監視が緩んだ隙を見て母親と村から脱出。移動途中でも遺体を何度も見てきました。母親の友人の勧めで「安全な場所」に来た当初、何に対しても無反応でした。

私も救われた
スラバさんやスタッフが丁寧に寄り添い続けることで、次第に笑顔を見せるようになりました。「彼が他の子どもにお菓子を分けているのを見た時は本当にうれしかったし、私自身も救われた。力ではなく、愛でしか人を変えることはできないのだと強く思います」
(リビウ=吉本博美、写真も)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月21日付掲載


精神科医スラバさん。子どもたちとの接し方はまず、安心して過ごせる空間があるのだと認知させることです。指示や強制はせず、様子を見ながら一緒に遊び、優しく抱きしめたり、困ったことはないかとそのつど気にかけます。
スラバさんが特に気にかけていたのは、5歳の男の子ユーリくん(仮名)。大砲の爆音が家の中に響き、ユーリくんは約4カ月間のほとんどを薄暗い地下室に隠れて過ごしました。
「彼が他の子どもにお菓子を分けているのを見た時は本当にうれしかったし、私自身も救われた。力ではなく、愛でしか人を変えることはできないのだと強く思います」

ウクライナ戦時下の子どもたち② 恐怖から逃れ “安全な施設”でケア

2024-02-22 07:08:49 | 国際政治
ウクライナ戦時下の子どもたち② 恐怖から逃れ “安全な施設”でケア

ウクライナ西部リビウ市内に、戦争で深刻なトラウマを受けた子どもたちを受け入れ、学校生活に適応できるよう支援する施設があります。国際人道団体の助けを受けて設立された「セーフ・プレイス(安全な場所)」を訪れ、死の恐怖から逃れた子どもたちと触れ合いました。
市内のビルの一角にある事務所に入ると、子どもたちが描いた家族の絵や、色とりどりのおもちゃが目に飛び込んできました。「サッカーしよう」。アーニャさん(8)がボールを持って駆け寄ってきます。オラさん(11)は記者のノートをのぞき込んで目を見開きました。「これ日本語?面白い形だね」



アリーナ・ブラさん=2月13日、リビウ(桑野白馬撮影)

心にダメージ
「安全な場所」のアリーナ・ブラ所長(22)によると、施設を利用するのは戦闘が激しい東部地域から逃げてきた子どもたち。現在、6~11歳の10人が利用しています。
「みんな楽しそうでしょう。でも、来た当初は物を壊したり叫んだり。学校の先生が『手が付けられない』と諦めた子たちもいますよ」
ミサイルが飛ぶ音や爆発音、空襲警報におびえた経験は心に深刻なダメージを与えます。「死体を見た」と話す子も。落ち着きがなくなって攻撃的になり、学校生活に支障が生じると言います。
ブラさんは子どもたちに「あれをしろ、これをしろ」とは言いません。「子どもたちが好きなことをして、背負っている爆発的な負のエネルギーを発散するのが大事です」
暴れだす子どもがいれば、スタッフも同じように行動するゲームを試すこともあります。「子どもはあっけに取られ、恥ずかしくなって暴れるのを止めてしまいます」



「安全な場所」で遊ぶ子どもたち=2月13日、リビウ(吉本博美撮影)

5カ所へ増設
月に1度、親子で一緒に絵を描いたり、クッキーに絵付けしたりする活動日を設けています。ブラさんは「疲れ切った親への支援も必要です。子どもと一緒に過ごす穏やかな時間が、家族のケアにつながります」と語ります。
「安全な場所」は、国際人権団体「アーリー・スターターズ・インターナショナル」の援助を受け昨年設立されました。需要の高まりから全国5カ所に増設されています。
リビウの4人のスタッフはそれぞれが、長期化する戦争に苦しむ一般市民です。ブラさん自身も「将来の計画が立たないのがつらい」と、専門家のケアを受けています。「でも、子どもたちと触れ合うとエネルギーをもらえる。この国の未来を担う子たちを支えることが、私が前に進む力になっています」
(リビウ=桑野白馬)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月20日付掲載


ブラさんは子どもたちに「あれをしろ、これをしろ」とは言いません。「子どもたちが好きなことをして、背負っている爆発的な負のエネルギーを発散するのが大事です」
暴れだす子どもがいれば、スタッフも同じように行動するゲームを試すこともあります。「子どもはあっけに取られ、恥ずかしくなって暴れるのを止めてしまいます」
ブラさんは「疲れ切った親への支援も必要です。子どもと一緒に過ごす穏やかな時間が、家族のケアにつながります」と語ります。

ウクライナ戦時下の子どもたち① ロシア侵略開始2年 「早く戦争終わって」

2024-02-21 07:11:46 | 国際政治
ウクライナ戦時下の子どもたち① ロシア侵略開始2年 「早く戦争終わって」

ロシアがウクライナに侵略して始まった戦争は24日で2年を迎えます。命が脅かされる日々が続く中、ウクライナの子どもたちはどう暮らしているのか―。西部リビウ市で、不安や心の傷に苦しみながらも懸命に生きる子どもたちの姿を追いました。
(リビウ=桑野白馬、吉本博美)




「家のシェルターにいても地面が揺れるのを感じたよ。すごく怖かった」。時おり目をふせながら語るのはマキシム・トハムさん(13)です。昨年12月29日、自身が通うオリヤナ公立学校のすぐ近くにロシア軍が発射したミサイルが着弾しました。学校から徒歩15分の距離にあるトハムさんの家でも「聞いたことのない大きな音」が聞こえました。


ミサイルの破片で傷ついた校舎=2月12日、リビウ(吉本博美撮影)

窓ガラス散乱
今月12日、トハムさんの案内で学校の敷地に入ると、割れた窓ガラスが散乱していました。壊れた窓が取り外され、子どもたちが、けがをしないよう立てかけてあります。
写真を撮影していると、追いかけっこをして遊ぶ子どもたちの笑い声が聞こえてきました。「友達と冗談を言いあって、なるべく楽しく過ごすようにしているよ。ミサイルのことばかり考えていたくない」と話すトハムさん。ただ、長期化する戦争の話になると顔が曇ります。「つらくて悲しい。何より疲れたよ。早く戦争が終わってほしい」
東部で兵役についた親戚が命を落としたばかり。「2週間後に葬式を控えているんだ」と打ち明けました。「10人の親戚が戦場に出ている。もうこれ以上、誰も死んでほしくない」
友達と遊んで気を紛らわせるものの、空襲警報が鳴ったり、悲惨なニュースを目にしたりすると現実に引き戻されてしまいます。「警報が鳴るたびに勉強を中断しなきゃいけないのは、もう嫌だ。早く元の生活に戻りたい」。こう話すと、周りで話を聞いていた友達もうなずきました。



マキシム・トハムさん(右から2人目)と仲間たち(吉本博美撮影)

卒業生犠牲に
昨年12月のミサイル着弾は、校舎からわずか数十メートル離れた場所でした。リリア副校長(53)に案内され学校の裏手にまわると、芝生がえぐり取られた異様な光景が広がっています。幅数十メートルにわたって雨水がたまり、まるで沼地のようになっています。ミサイルの破片は窓を突き破り、教室内の机や椅子をなぎ倒しました。
リリアさんは「学校が休みの日で良かった」と胸をなでおろします。学校では6歳から17歳までの生徒1200人が学んでいます。「もし子どもたちが授業を受けていたらと思うと…」
生徒の焦りや不安を肌で感じています。「シェルターでは歌を歌ったりゲームをしたりします。みんなの目を爆撃から自分の人生に向けさせるのです」
夜間には近隣住民が避難してくることもあるため、教員は救急治療やメンタルヘルスケアの研修を受け「いざというとき」に備えています。「付近の住民たちに寄り添うのも私たちの役目です」
卒業生の多くが今回の戦争で命を落としました。「素晴らしい生徒たちだったのに」。涙ぐむリリアさんは、子どもたちの将来を見据えてこう語りました。「他人を思いやる優しい人間に育ってほしい。戦時下では人間らしさを保つことが一番大切だから」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月19日付掲載


記者が写真を撮影していると、追いかけっこをして遊ぶ子どもたちの笑い声が。「友達と冗談を言いあって、なるべく楽しく過ごすようにしているよ。ミサイルのことばかり考えていたくない」と話すトハムさん。ただ、長期化する戦争の話になると顔が曇ります。「つらくて悲しい。何より疲れたよ。早く戦争が終わってほしい」
涙ぐむ副校長のリリアさんは、子どもたちの将来を見据えてこう語りました。「他人を思いやる優しい人間に育ってほしい。戦時下では人間らしさを保つことが一番大切だから」

目で見る経済 ワイド版 実質賃金、1996年より74万円減

2024-02-20 07:10:33 | 働く権利・賃金・雇用問題について
目で見る経済 ワイド版 実質賃金、1996年より74万円減

実質賃金の低下が目立っています。厚生労働省「毎月勤労統計」によると、2023年平均(速報)の実質賃金は年換算371万円で、昨年より9・6万円の減少でした。12年12月に発足した第2次安倍晋三政権によるアベノミクス開始直前の12年の平均額404・6万円からは33・6万円もの減少になります。実質賃金がピークを迎えた1996年と比較すると74・1万円もの減少です。

実質賃金は名目賃金(現金給与総額)に、物価変動の影響(消費者物価指数のうち、持ち家の帰属家賃を除く総合値)を反映させることで算出されます。

名目も伸び悩み
20年平均を100として、1990年以降の名目賃金と消費者物価の推移を見ると、名目賃金は97年をピークに2013年まで下落傾向にありました。その後、若干上昇しますが、全体としては伸び悩んでいます。
毎月勤労統計は常用雇用労働者の就業形態について、正規・非正規という分類ではなく、フルタイムで働く一般労働者とパートタイム労働者という区分で集計しています。常用雇用労働者とは季節労働者や日雇い労働者とは違い、雇用期間を定めず雇用されている労働者のことです。
1990年に常用雇用労働者の9・2%しか占めていなかったパートタイム労働者は2023年速報で32・2%まで上昇しました。パートタイム労働者の現金給与総額は月額平均10万4570円(23年)と、一般労働者の同43万6849円の4分の1程度にすぎません。低賃金のパートタイム労働者の増加が全体の賃金低迷を招いています。




増税と金融緩和
消費者物価は1990年代以降、低い水準で推移してきました。しかし、安倍政権が消費税増税を強行した2014年以降、上昇傾向に入り、ロシアによるウクライナ侵略や天候不順で農産物や原材料価格が高騰した22年は前年比3%上昇、23年は同3・8%上昇と急速に伸びました。原材料価格の高騰に加え、異次元の金融緩和による円安加速が物価の急上昇をもたらしました。自民党政治が実質賃金を引き下げてきたのです。
(清水渡)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月17日付掲載


1990年に常用雇用労働者の9・2%しか占めていなかったパートタイム労働者は2023年速報で32・2%まで上昇。パートタイム労働者の現金給与総額は月額平均10万4570円(23年)と、一般労働者の同43万6849円の4分の1程度にすぎません。低賃金のパートタイム労働者の増加が全体の賃金低迷を。
原材料価格の高騰に加え、異次元の金融緩和による円安加速が物価の急上昇をもたらしました。自民党政治が実質賃金を引き下げてきたのです。

株高の深層② 強まる株主資本主義

2024-02-19 07:11:46 | 経済・産業・中小企業対策など
株高の深層② 強まる株主資本主義

株高の背景にある二つ目の事情は、日本企業による「自社株買い」や株主配当金の増額(増配)です。
自社株買いとは、企業が過去に発行した自社の株式を市場から買い戻すことです。
SMBC日興証券によると、東証株価指数(TOPIX)を構成する企業が2023年に決議した自社株購入額は計9兆3860億円と、22年の9兆2221億円を上回り、金額ベースで過去最高を更新しました。(グラフ1)




株主還元の強化
自社株買いは発行済み株式、数を減らし、1株当たり利益を増やすので、株主還元の強化策とみなされます。計画発表後には市場で株式が買われて株価が上昇する傾向にあります。このため近年、自社株買いを企業に求める機関投資家が増えているといわれます。
一方、増配は直接的な株主還元策です。「日経」(23年12月24日付)の集計によると、上場企業2350社の24年3月期の配当総額は16兆円で、過去最高になる見通しです。23年9月末時点から4000億円上振れしました。
株高の背景の三つ目は、23年3月に東証が上場企業に呼び掛けた経営改革です。東証は上場企業に株価を意識した経営を求め、株価純資産倍率(PBR)の引き上げを迫りました。これが上場企業による自社株買いや増配の流れを加速させました。
PBRは「株価÷1株当たり純資産」で算出され、各企業の株式時価総額がその企業の純資産の何倍になっているかを示す指標です。PBRが1倍を下回る場合、「株価が安すぎて時価総額が企業の純資産より低く、会社を解散して資産を分けた方が株主の取分が多い」状態とされます。
東証は上場企業の多くがPBR1倍割れだと指摘し、「株価に対する意識改革」を要請しました。PBR引き上げのためには株価上昇か資産圧縮が必要です。自社株買いは株価上昇に、株主配当は株価上昇と資産圧縮の双方につながります。東証の要請後、シチズン時計やウシオ電機など、「異例の大規模自社株買い」(「日経」23年6月9日付)を打ち出す企業が相次ぎました。




従業員を犠牲に
長期的にみても、株主還元は急激に強化されています(グラフ2)。22年度の大企業(資本金10億円以上、金融・保険を除く全業種)の配当金合計額は1990年度と比べて8・6倍になりました。当期純利益は5・7倍。他方で従業員1人当たり給与はわずか1・1倍(物価上昇で実質マイナス)です。従業員を犠牲にして利益を伸ばした企業が株主への配当金を増やしたという構造です。
岸田文雄政権は「資産運用立国実現プラン」(23年12月13日策定)で「中長期的な企業価値向上のため、投資家と企業との実効的なエンゲージメント(対話)を促進する」と表明。企業経営における株主の優位をさらに推し進める姿勢です。「新しい資本主義」ではなく、貧困・格差と金融危機を招いた米国流の「株主資本主義」(株主の利益を第一とする資本主義)が、日本で強められています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月16日付掲載


自社株買いは発行済み株式、数を減らし、1株当たり利益を増やすので、株主還元の強化策。計画発表後には市場で株式が買われて株価が上昇する傾向に。このため近年、自社株買いを企業に求める機関投資家が増えていると。
一方、増配は直接的な株主還元策。「日経」(23年12月24日付)の集計によると、上場企業2350社の24年3月期の配当総額は16兆円で、過去最高になる見通し。
「新しい資本主義」ではなく、貧困・格差と金融危機を招いた米国流の「株主資本主義」(株主の利益を第一とする資本主義)が、日本で強められています。