きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ④ DX 利益のため個人情報収集

2024-07-24 07:16:14 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ④ DX 利益のため個人情報収集

昨年の骨太方針2023に比べ、骨太方針2024で大幅にボリュームアップされたのが、デジタル技術で行政や社会を変えていくとするデジタル・トランスフォーメーション(DX)の分野です。
骨太方針はデジタル社会の形成に向け、行政のデジタル化を推進するとして、政府と地方自治体のデジタル共通基盤構築の強化をあげます。政府はこれまでに7000億円を確保しています。

政府方針破たん
しかし、デジタル庁が3月に発表した調査によると、全体の約1割に相当する171自治体が、骨太方針2023で期限としてきた2025年度までの「移行が困難」と回答しました。この中には渋谷区や中野区など東京の10区や横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市などの政令市も含まれます。判断を保留した自治体も50に上り、骨太方針はすでにつまずいています。
政府はデジタル化で自治体のシステム運用経費を3割以上減らせるとアピールしてきました。しかし、デジタル庁自身の調査でも6割を超える自治体で逆に負担が増えています。政府の説明は破たんしています。



マイナ保険証の利用を勧める厚生労働省のホームページ

デジタル化の最大の目玉が半導体産業に対する巨額の支援です。
骨太方針は「産業競争力の強化及び経済安全保障の観点から、AI(人工知能)・半導体分野での国内投資を継続的に拡大していく」として至れり尽くせりの支援策を並べます。▽複数年度にわたる大規模かつ計画的な重点的投資▽次世代半導体の量産などに向けた法制上の措置▽出融資の活用拡大▽支援手法の多様化-などです。
骨太方針は「防衛力の抜本的強化を推進する」として七つの分野を重視する方針を強調しました。防衛省は7月2日、骨太方針が掲げたこれらの分野でAIを活用すると発表しました。▽ドローンなどの「無人アセット(装備品)」▽収集情報の分析などを踏まえ意思決定を下す「指揮統制」▽敵基地を攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」―などです。イスラエルがパレスチナ・ガザ地区への攻撃でAIを使用し、多くの子どもや住民の命を奪っている現実を顧みない危険な方向です。
骨太方針は医療データを活用して医療・介護DXを確実かつ着実に推進するとしています。「全国医療情報プラットフォーム」の構築をはじめ、電子カルテの導入や薬局情報のDX・標準化などです。身体や病気に関わる極めて機微な個人情報を1カ所に集め、本人の同意も得ずに創薬企業などに効率的に利活用させる仕組みをつくるもので、認めるわけにはいきません。
骨太方針は医療・介護DX推進のため、現行の健康保険証の発行を12月2日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行すると断言しています。しかし岸田政権のなりふり構わぬ押しつけにもかかわらず、マイナ保険証の利用は9・9%にとどまっています。

医療の現場混乱
誤登録やひも付け間違いなどのトラブルの原因は未解決で、医療の現場では混乱が続いており、国民の信頼は地に落ちたままです。
健康保険を人質に取ってマイナンバーカードを強制するやり方は、「取得は任意」という建前すら投げ捨てるもので、まったく道理がありません。
保険証廃止は中止し、マイナンバー制度のあり方から全面的に見直すべきです。膨大な量の個人情報を次々にひも付けるような企業利益最優先の計画を根本的に転換することが求められます。(日本共産党政策委員会湯浅和己)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月23日付掲載


デジタル庁が3月に発表した調査によると、全体の約1割に相当する171自治体が、骨太方針2023で期限としてきた2025年度までの「移行が困難」と回答。この中には渋谷区や中野区など東京の10区や横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市などの政令市も含まれます。
デジタル化の最大の目玉が半導体産業に対する巨額の支援です。
骨太方針は「産業競争力の強化及び経済安全保障の観点から、AI(人工知能)・半導体分野での国内投資を継続的に拡大していく」として至れり尽くせりの支援策を。
健康保険を人質に取ってマイナンバーカードを強制するやり方は、「取得は任意」という建前すら投げ捨てるもので、まったく道理がありません。

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ③ 大企業支援 経済安保を表看板に

2024-07-23 07:16:08 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ③ 大企業支援 経済安保を表看板に

この30年間、大企業が利益優先でコストカットに奔走した結果、設備投資も賃金も増えず、日本は国際的にも稀有(けう)な「成長できない国」に転落しました。大企業は自らリスクをとって新事業を開拓するという企業なら当たり前のことを忌避し、経団連は、「(国家が)新規分野等への積極的な投資や取り組みを促すことが重要」(提言「産業技術立国への再挑戦」2022年10月11日) などと政府依存を恥ずかしげもなく公言しています。
岸田文雄政権の成長戦略(「新しい資本主義実行計画」)はこうした要求を丸のみし、大企業への桁違いの補助金投入と減税を進めるものです。
既に先端半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県での工場建設に1兆2000億円余の補助金投入を決めています。また、最先端半導体の国産化をめざすラピダスの北海道での工場建設には1兆円規模の補助金を投入します。



TSMCがソニーと共同出資したJasmの工場=3月、熊本県菊陽町(小林久美子党町議撮影)

リスクを国民に
ラピダスにはトヨタ自動車、ソフトバンクなどの大企業8社が名を連ねながら出資額はわずか73億円のみ。さらに骨太方針はラピダスへの金融機関の融資に政府保証を行う内容の法案を検討するとの方向を示しています。高いリスクを国民に肩代わりさせる狙いです。
こうした大企業支援の表看板が「経済安全保障」です。成長戦略は半導体投資に関して「成長けん引領域」という定義を持ち出しました。
「成長けん引領域」はラピダスと米国企業などとの連携への支援で、日米首脳会談(22年5月23日)や第2回日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2、23年11月14日)が「同盟国や有志国」での最先端半導体の開発協力と利用拡大を確認したことの具体化です。半導体産業を「経済安全保障」と直結させて日米同盟にいっそう組み込む狙いです。
桁違いなのは補助金だけではありません。5月に成立した改定「産業競争力強化法(産競法)」に盛り込まれた「戦略分野国内生産促進税制」は電気自動車1台当たり40万円、半導体1枚当たり1・6万円など、製品を作れば作るほど法人税が減税される異例の税制です。対象となるのは名だたる大企業ばかりです。さらに骨太方針は、このうち「GX分野に該当する物資」について予算・税制で支援する法案を来年の通常国会に提出するとしています。

破綻済みの政策
岸田政権は「新しい資本主義」とうそぶきますが、一握りの大企業への支援は自民党政権が続けてきて破綻した政策です。1999年の「産業活力再生特別措置法(産活法)」では「三つの過剰」(債務・設備・雇用)の解消を掲げ、大企業のリストラを支援しました。さらに産競法で規制緩和や優遇税制を推し進めた結果、大企業は巨額の内部留保を蓄積した一方、国内には貧困と格差拡大がもたらされました。
今年4月19日の衆院経済産業委員会で日本共産党の笠井亮議員が「産競法を推し進めた結果が今日の失われた30年ではないか」と転換を迫っても、斎藤健経産椙は「国内投資促進策を強力に講じていく」などと大企業支援一本やりの姿勢に終始しました。
自民党は大企業からの企業・団体献金を受け取り続けています。5月30日の参院経産委で日本共産党の岩渕友議員は自民党の国民政治協会への過去10年間の企業献金額を示して、「献金と政策が関係ないとはいえない」と追及し、企業・団体献金の禁止を求めました。
経済停滞をもたらした反省もなく、大企業からの献金の見返りに、破綻した"大企業のための成長戦略"に固執するのが岸田政権の「新しい資本主義」なのです。(日本共産党国会議員団事務局中平智之)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月20日付掲載


岸田文雄政権の成長戦略(「新しい資本主義実行計画」)はこうした要求を丸のみし、大企業への桁違いの補助金投入と減税を進める。
既に先端半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県での工場建設に1兆2000億円余の補助金投入。また、最先端半導体の国産化をめざすラピダスの北海道での工場建設には1兆円規模の補助金を投入。
桁違いなのは補助金だけではありません。5月に成立した改定「産業競争力強化法(産競法)」に盛り込まれた「戦略分野国内生産促進税制」は電気自動車1台当たり40万円、半導体1枚当たり1・6万円など、製品を作れば作るほど法人税が減税される異例の税制。


経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ② 社会保障 給付なしの保険詐欺

2024-07-22 06:45:31 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ② 社会保障 給付なしの保険詐欺

骨太方針は、安保3文書や日米首脳合意にもとつく「防衛力強化」を叫び軍事費増額を狙う一方で、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に「黒字化」する目標を掲げ、国の予算の削減・抑制を強調します。「歳出改革」の最大の標的にしているのが社会保障です。
骨太方針は、昨年閣議決定した全世代型社会保障「改革工程」を「着実に推進」するとしています。
「改革工程」には▽高齢者の窓口負担の引き上げ▽都道府県内統一化の名による国民健康保険料(税)の値上げ▽薬剤費の新たな患者負担の導入1など、医療にかかわる“老いも若きも負担増”のメニューが並べられています。

苦しむのは若者
介護保険でも、骨太方針は▽利用料の2割負担の対象拡大▽要介護1と2の生活援助の保険給付外し▽ケアプラン作成の有料化―などの「検討」を本文に明記。26年度末までに「結論を得る」としています。
岸田文雄政権は、高齢者向けの社会保障を「改革」することで現役世代に実質的な負担を生じさせず「少子化対策」の財源を確保すると説明しています。しかし「介護離職」「ヤングケアラー」などの実態が示すとおり、公的介護の切り捨てで最も苦しむのは、家族を介護している現役世代・若年世代です。
骨太方針はその現実に口をつぐんだうえで、介護をしながら働く「ビジネスケアラー」に対応するため、「介護保険外サービスの利用促進」を図るとしました。保険料を徴収するが給付は行わず、保険外サービスの購入を促す―。これでは文字どおりの保険詐欺です。



「大幅賃上げ」「医療・介護の充実を」とアピールする医労連の人たち=5月1日、東京都渋谷区

中小の淘汰狙う
負担増・給付削減と並んで骨太方針が打ち出しているのが、医療・介護の提供体制の再編です。
医療では、「27年度以降の医学部定員の適正化」を明記し、医師養成数を減らす方向を示しました。「地域医療構想」による病床削減についても、目標年次である25年に向けて施策を強化するとうたいます。25年以降は従来の病床淘汰(とうた)に加え、外来診療や在宅医療にも対象を広げた新たな地域医療の再編計画をつくるとしており、医療提供体制のいっそうの縮減を狙っています。
介護の人材不足や事業所の経営難については、事業の「効率化」、情報通信技術(ICT)の活用、事業所の大規模化などで解決を図るというのが骨太方針の立場です。介護報酬引き上げなど提供体制の抜本的強化には背を向け、中小事業所の淘汰を進めるというのです。
政府が訪問介護の基本報酬の引き下げを強行したなか、今年上半期の介護事業所の倒産は過去最多となっています。政府の方針が続けば、各地で介護の提供基盤の崩壊が起こりかねません。
日本共産党は昨年発表した「経済再生プラン」で、社会保障は国民の権利であると同時に、経済の重要な部分を占めると強調。自民党政治がこの30年間、社会保障の削減・改悪を繰り返してきたことが、日本経済の停滞・後退を引き起こす要因の一つとなったことを明らかにしました。
国民の命と権利を守り、くらしの困難を打開する政策に転換してこそ、経済再生や財政再建の道が開けます。▽年金の増額▽医療費負担の軽減▽国保料(税)値下げ▽公的介護の提供体制の拡充1などが必要です。末期的状況にある自民党政治からの根本的転換が求められます。
(日本共産党政策委員会 谷本諭)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月19日付掲載


骨太方針は、介護離職の現実に口をつぐんだうえで、介護をしながら働く「ビジネスケアラー」に対応するため、「介護保険外サービスの利用促進」を図るとしました。保険料を徴収するが給付は行わず、保険外サービスの購入を促す―。これでは文字どおりの保険詐欺。
医療では、25年以降は従来の病床淘汰(とうた)に加え、外来診療や在宅医療にも対象を広げた新たな地域医療の再編計画をつくるとしており、医療提供体制のいっそうの縮減を狙っています。
介護の人材不足や事業所の経営難については、事業の「効率化」、情報通信技術(ICT)の活用、事業所の大規模化などで解決を図るというのが骨太方針の立場。介護報酬引き上げなど提供体制の抜本的強化には背を向け、中小事業所の淘汰を進めるというのです。

命救う住まい(下) 国の脆弱な住宅政策 兵庫・尼崎の住環境支援事業調査 追手門学院大学准教授 葛西リサさんに聞く

2024-07-21 07:17:31 | 政治・社会問題について
命救う住まい(下) 国の脆弱な住宅政策 兵庫・尼崎の住環境支援事業調査 追手門学院大学准教授 葛西リサさんに聞く

住まいに窮する人たちが増えるなか、住宅施策はどうあるべきなのか。兵庫県尼崎市の「REHUL(リーフル)」事業の調査をした追手門学院大学の葛西リサ准教授に聞きました。



日本の住宅政策は長年、持ち家、中流以上の家族を基準とし、支援の対象としてきました。世帯のあり方が多様化するなか、多くの人たちが支援の対象から外れています。
セーフティーネット(安全網)である公営住宅は、全住宅の3・6%しかありません。供給戸数が減るなか、応募倍率は高止まりしています。総務省の調査によると、2~5倍という団地がもっとも多く、100倍以上というものもあります。地理的な偏りもあります。また、多くの自治体は若年単身者の入居を認めていません。
民間賃貸住宅は公営住宅に比べると家賃は高く、低所得世帯ほど負担が重くなります。
不動産業者は、収入が低い人や不安定な人を「リスク」とみなし、入居を拒みます。ひとり親、高齢者、若年者、外国人といった人たちの多くは困窮し、住まいを失いかけても、国にも不動産市場にも救ってもらえない、というのが現状です。



「リーフル」事業に活用している市営団地=兵庫県尼崎市

活気戻った例も
「リーフル」は、「政策空き家」の「目的外使用」という国の制度を使ったものです。尼崎市が全国に先駆けて始めました。市営住宅のうち、建て替えが決まり、募集を停止した住戸のなかから、状態の良い空き家を期間限定で貸し出します。
募集停止をすると、若い人や体力がある人は次の住まいに移っていき、高齢者が残るというのが大きな特徴です。尼崎市としては、地域が荒廃していくなか、今の居住者をどう支援し、救済するかが狙いでした。
参加団体には自治会参加を条件としました。イベントにも積極的に声をかけ、新旧の居住者の交流を重視したことで活気を取り戻しつつある団地もあります。
「政策空き家」は全国で約20万戸あります。他県からも注目される「リーフル」ですが、普遍化し、全国に広げるには乗り越える課題もあります。

誰が中心担うか
最大は、中心の役割を誰が担うのかです。「リーフル」は「コープこうべ」が中心となり、ほぼ無償で、団体選びから日々の運営まで、きめ細かく行っています。もうけ主義で参入する団体もあるでしょう。貧困ビジネスをどう排除するのかも課題です。
さらに政策空き家の「目的外使用」という仕組みは、期間限定の事業であり、入居者にとっても一時利用です。居住権の保障が難しいという点もあります。
本来は公営住宅に住む権利のある人たちを、こうした仕組みで支えざるを得ないという、日本の住宅政策の脆弱(ぜいじゃく)性に目を向けるべきでしょう。
住まいは命を支える基盤です。コロナ禍以降、住まいの貧困は多様化、深刻化しています。尼崎市とコープこうべの挑戦に注目しています。(芦川章子)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月19日付掲載


日本の住宅政策は長年、持ち家、中流以上の家族を基準とし、支援の対象としてきた。世帯のあり方が多様化するなか、多くの人たちが支援の対象から外れています。
セーフティーネット(安全網)である公営住宅は、全住宅の3・6%しかありません。
「リーフル」は、「政策空き家」の「目的外使用」という国の制度を使ったもの。尼崎市が全国に先駆けて始めました。市営住宅のうち、建て替えが決まり、募集を停止した住戸のなかから、状態の良い空き家を期間限定で貸し出します。
最大は、中心の役割を誰が担うのかです。「リーフル」は「コープこうべ」が中心となり、ほぼ無償で、団体選びから日々の運営まで、きめ細かく行っています。
「政策空き家(空家になっても募集しない)」は神戸市もあります。尼崎の住宅の様に、エレベーターの無い5階建てまでの住宅です。神戸市も、尼崎市に見習って、地元「コープこうべ」と協力して、本当に必要な人に貸し出してはいかがかな。

命救う住まい(上) DVから逃れ心身も安定 兵庫・尼崎 住環境支援事業

2024-07-20 07:55:02 | 政治・社会問題について
命救う住まい(上) DVから逃れ心身も安定 兵庫・尼崎 住環境支援事業

貧困が広がるなか「居住の権利」が脅かされる人たちが増えています。困窮者支援として、自治会支援として、専門家や支援団体から注目を集めている兵庫県尼崎市の事業「REHUL(リーフル)」。スタートから3年目を迎えました。



「ここがなかったら逃げられなかった。思い切って連絡して、本当によかった」
夫のDV(家庭内暴力)から逃れ、他県から引っ越してきた40代の女性は穏やかな表信で語ります。尼崎市の市営団地の一室で生活しています。
夫の暴力と支配は長年続きました。抜け出す方法が分からないまま、耐えるだけ。人生を取り戻すきっかけは、同市の住環境支援事業「リーフル」を紹介する報道でした。
女性は「わらをもつかむ思い」で電話をかけました。「リーフル」経由で住まいはすぐに見つかりました。リーフル事務局の担当者は同時に、DV被害者の支援団体に協力を求めました。
今、子どもたちは市内の学校に通い、女性は心身の安定を取り戻しつつあります。団地の高齢者とも日常的に言葉を交わします。「これ、食べて」。おすそわけをもらい、お互いの健康も気にかけ合います。



「リーフル」事業で貸し出している市営団地の一室。母子の居場所事業にも活用されています=兵庫県尼崎市

市営住宅安価で
「リーフル」は、市と生活協同組合「コープこうべ」が連携し、2022年4月、始まりました。建て替え予定で、新規入居を停止した市営住宅を安価で提供する事業です。「コープこうべ」が窓口になり、ネットワークに参加する支援団体に空き家を貸し出します。3月末現在、20団体に約50戸を提供しています。
市が団体へ貸し出す使用料は1戸あたり月6500円。修繕費などは団体持ちです。居住者は団体に利用料を支払います。
ひとり親、DV被害者、障害者、外国人、ホームレスの人たち…。団体が支援する人は多岐にわたります。利用料は団体により異なりますが、月1万~3万円。「営利目的にならない範囲」(市担当者)にとどめています。
市が「リーフル」を始めた背景には、別の事情もありました。
都市整備局住宅部住宅管理担当の秋岡修司課長は「10年前からの募集停止で新しい人が入らなくなり、入居者の高齢化が進み、草刈りや清掃、団地の管理維持も難しくなっていた」と振り返ります。1人あたりの自治会費や共益費の負担も重くなるばかりでした。
「リーフル」を始めたことで入居者が増え、年齢も多様に。祭りやもちつきなどのイベントが復活した自治会もあります。
「リーフル」を利用する一般社団法人「オフィスひと房の葡萄」の赤井郁夫代表理事は「本当に助かっている」といいます。子どもの居場所、若者の自立支援シェアハウスなどを手がけています。活動資金は寄付頼み。家賃を抑えることで、支援の幅は「ぐっと広がった」と話します。

支援団体の悩み
「リーフル」の立ち上げから中心を担う「コープこうべ」の前田裕保・第1地区本部本部長は、住宅困窮者に提供できる部屋が圧倒的に足らず、多くの支援団体が悩んでいることを知っていました。
「困っている人に、いかに迅速に住まいを提供できるか。『即、入居』が命を救う。同時に部屋を貸して終わりではなく、継続した支援を地域につなぐ。
この事業が“住まい”のあり方を考える先導になればと思います」
次回は、国の脆弱(ぜいじゃく)な住宅政策や事業の課題について、追手門学院大学の葛西リサ准教授の話を紹介します。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月18日付掲載


女性は「わらをもつかむ思い」で電話をかけました。「リーフル」経由で住まいはすぐに見つかりました。リーフル事務局の担当者は同時に、DV被害者の支援団体に協力を求めました。
今、子どもたちは市内の学校に通い、女性は心身の安定を取り戻しつつあります。
「リーフル」は、市と生活協同組合「コープこうべ」が連携し、2022年4月、始まりました。建て替え予定で、新規入居を停止した市営住宅を安価で提供する事業。
「リーフル」を始めたことで入居者が増え、年齢も多様に。祭りやもちつきなどのイベントが復活した自治会も。「リーフル」を利用する一般社団法人「オフィスひと房の葡萄」の赤井郁夫代表理事は「本当に助かっている」といいます。
「困っている人に、いかに迅速に住まいを提供できるか。『即、入居』が命を救う。同時に部屋を貸して終わりではなく、継続した支援を地域につなぐ。