2017年08月15日
“Nature Ecology and Evolution” Nature 関連誌注目ハイライト
[海で十分なだけ魚を得る方法] How to get plenty of fish in the sea
“Nature Ecology and Evolution”の掲載論文によれば、世界の海洋は、水産養殖の大幅な拡大に適した場を十分に供給できるという。この知見は、水産養殖が世界の食料安全保障に寄与する可能性を強調している。陸上の農業には空間的な制約と環境への影響があり、世界の天然漁業は不安定な状態にあることから、水産養殖は潜在的な食料供給源として重要である。現在、水産養殖の多くは内陸または沿岸で行われているが、そうした場所は競争的圧力があり、理想的ではない。外洋での水産養殖の可能性はあまり評価されておらず、十分な漁獲を得るのに必要な海洋空間の大きさは定量化されていない。Rebecca Gentryらは、世界の海洋を0.042度四方(ここでいう「度」とは、緯度および経度の度である)のグリッドセルに分割し、知られている温度範囲と魚類120種および二枚貝60種の成長速度を利用して、各海洋セルでの養殖が考えられる魚類および二枚貝の量を計算した。さらに、海運業や海洋保護区など、他の用途に必要な海域を除外して、それぞれの適切なセルから漁獲される可能性のある現実的なバイオマスを計算した。その結果、魚類に関しては1140万km2、二枚貝に関しては150万km2の海洋に開発の余地があり、そこからは、現在の世界の総海産物消費量の100倍超が得られる可能性があることが分かった。また、世界の全天然漁業による現在の漁獲量は、ミシガン湖ほどの面積から得られそうであることも明らかになった。今回の結果は海洋水産養殖の上限を与え、空間が制約的考慮事項ではないことを示している。食物の嗜好、好適な養殖海域から人口の多い市場まで養殖産物を輸送するコスト、および魚類に立脚する水産養殖に必要な投入用食物を育てる能力など、社会的、経済的、およびその他の環境的要因は考慮が必要と考えられる。同時掲載のNews & Views記事では、Max Troellらがそうした追加的な考慮事項をいくつか検討し、「そのような水産食料の生産が水中生態系および陸上生態系の両者とどの程度関係するのかについて、熟慮が必要である」と述べている。
付記
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、原著論文をご覧ください。