2021年03月17日
リポート:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア スケトウダラ漁業 極東から中央部への物流費補助 カラの帰り便を対象とする可能性がある]
年間漁獲量が180万トンに及ぶ、ロシアのスケトウダラ漁業は、洋上でH&G(ドレス)を生産、中国へ輸出し、同国がフィレ加工してヨーロッパ市場へ再輸出することを主流として成立してきた。
2021年も年明け1月1日から開始された、ロシア漁業にとって最も重要な春季オホーツク海抱卵スケトウダラ操業”Aシーズン”が、これから終盤に向かっていく段階となっている。
現在、極東地方に8万トンから9万トンの製品在庫があるとされている。
しかし、当該操業製品の主要供給陸揚げ港となる中国の大連と青島が新型コロナウイルス拡散防止対策で制限を強化し、輸出が極めて鈍化、ロシア漁業は重大な危機に直面している。
このことから、ロシア政府は、余剰在庫の仕向け先の一つとして国内市場を考えており、特に極東から中央部への鉄道を利用した物流に補助金の準備をしている。
補助金額は最大4億ルーブルで、10万トンの製品輸送が可能と見積もられているが、この対象が、中央部からの折り返しのカラの帰り便となる可能性がある。
ロシア経済紙カメルサントが伝えた。
食品業界団体で冷凍物流業者が構成するASORPS(АСОРПС)の代表者は、先にロシア漁業庁長官シェスタコフとこの問題について協議し、中央部からの折り返しのカラの帰り車両の補償を提案したと同紙に明らかにした。
中央部から極東へのカラの車両の移動に20万ルーブルの経費がかかるが、ASORPSは、このコストを支払う余裕はないとしている。
ロシア漁業分野が、中国市場の制限にともなった国内市場への大量供給の方針を示し、物流の不均衡が起き始めている。
例えば極東から100台の冷凍・冷蔵コンテナ貨車が水産物製品を積載し到着しても、帰りの極東向けに、全てのコンテナを満たす貨物需要がない。
10万トンの水産物製品の貨物輸送に伴う補助金見積は最大4億ルーブルと見積もられている。
ロシア漁業庁も同紙の照会に対して、このカラ運搬への助成を支持している旨を明らかにし、このことで、漁獲物製品が不良在庫化せず、製品価格が安定すると考えていることが分かった。
一方、ロシア・スケトウダラ漁業者協会会長ブグラクは、カラ運搬への補助が、実際に国内市場への製品供給拡大と価格維持に効果するか懐疑的だ。
補助金は、物流業者のみを助け、水産物製品の価格維持につながらないと予想している。
また、外の水産業界の代表者も、ロシア中央部で現在、食品業界向け加工原料は不足していないが、追加的処理をすることは可能とする一方で、製品販売までのマーチャンダイジングには問題があると指摘している。
さらに、全ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ(ВАРПЭ)会長ズベレフもASORPSの提案に強く反対している。
ズべレフは、国内市場の需要を刺激するのに決して役立たず、水産物加工業者や卸売会社のリスクを減らすことにはならない強調し、極東の余剰在庫を処理するための効果的な対策は、穀物市場に存在するものと同様の国家介入、買上のメカニズムだと指摘している。