2023年07月17日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア業界団体 銀行と国家はカニ漁業のリスクを理解する必要がある]
全ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ(ВАРПЭ)会長ズベレフは、銀行と国家が、現在のロシア産カニとその国際市場の動向を冷静にモニターし、カニ漁業のリスクを理解する必要があると指摘している。
強力な経営資源を持つロシア大手企業数社が世界のカニ市場での寡占を目指しており、ロシアの銀行は、これへの対応に興味を持っている。
ロシアは突如としてカニ市場のナンバーワンとなり、金額ベースで世界のカニ輸出量の40%を獲得した。
しかしその理由は、2017年から2022年にかけて世界のあらゆる種類のカニの供給量が減少したことにあるとズベレフは指摘している。
2017年に92万6,000トンあった供給量は、5年後の2022年に77万8,000トンとなったが、この間、ロシアの供給量は7万3,000トンから10万トンまで増加した。
さらにカニの高級種に限ると、世界漁獲量に占めるロシアのシェアは、5年間で30%から約50%に増加した。
ロシアのカニ漁業者は、最も高級な活カニの市場を、意図をもって開発していった。
それまで、日本や韓国では活カニ流通について、馴染みがあったが、中国では新たなものとなった。
その結果、中国のカニ輸入量は2000年以来5倍に増加し9万トンに達したが、この内の75%は活製品となっている。
こうした状況を背景に、ロシアの漁業者は5年間でほぼ80億ドルを得た。
銀行はカニ漁獲枠への投資を収益性と信頼性が高いと認識し、政府はそれを“超過利潤税”の対象とみなしているとズベレフは指摘した。
しかし、漁業分野は、自然環境、海外経済などの大きなリスクにさらされている。
実際に資源の減少を理由に、米国はブリストル湾のタラバガニとベーリング海のズワイガニ(オピリオ)の漁業を2024年まで停止している。
ロシア自体も外国の経済的制裁に直面している。
最近まで米国市場でのカニの輸入量の少なくとも20%をロシア産カニが占めていた。
しかし昨年2022年、米国はロシアからの輸入を禁止した。
ロシアのカニ事業の財務内容は現在、中国市場の見通しに基づいているが、当該市場への輸出は何度となく。急激な縮小を経験している。
水産業界の資金調達債務額は 昨年2022 年に5,090億ドルに達し、負債はわずか 5年間でほぼ4 倍に増加した。
ズベレフは、その原因の半分は2019年のカニ漁獲割当オークションにあり、今後、カニのオークション規則により、業界はさらに約2,500億ドルの借り入れが必要になるとの見積を示し、借り手となる漁業者は変わらないため、融資負担はさらに増大すると説明した。
また、銀行と国家は、いつでも変わる可能性がある極めて不安定なビジネスに依存していると語り、例えば、カナダのカニの漁獲量が増えるかもしれないし、ロシアのカニの人気が下がるかもしれない、さらには中国がより魅力的な供給者を見つけるかもしれないと語り、同様の出来事は過去四半世紀にわたって繰り返し起きていると加えた。