2024年03月15日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア ”2030年までの漁業発展戦略”の調整ガイドライン計画を発表]
2024年3月14日、全ロシア博覧センター(Выставка Достижений Народного Хозяйства)で開催された国際展示フォーラム“ロシア”の枠組みで、パネル・セッション“ロシア漁業:昨日・今日・明日”が行われ、”2030年までの漁業発展戦略”の計画調整などが論議された。
セッションのモデレータを務めた上院経済政策委員会副委員長ドルゴフは、ロシアが有数の漁業国の一つであり、漁獲量では世界第4位にランクされていることを指摘、漁業分野がロシア経済にとって戦略的な産業の一つであると述べ、食糧安全保障の確保と、船舶や水産加工設備の輸入代替において、先進的役割を果たしていると言及した。
ロシア漁業庁長官シェスタコフは、漁業分野について、GDPへの貢献の大きさに特別なものはないが、特に沿岸地域社会にとって非常に重要だと語り、*2030年までの漁業発展戦略(報告担当者 原口聖二:2017年9月15日、サンクトペテルブルグで開催された第1回ロシア国際漁業フォーラムにおいて発表された。)に達成すべき指標が含まれていると指摘、すべての利害関係者で議論し、協力をして調整を加え、これを実現させたいと求めた。
昨年2023年のロシア漁業者の漁獲量は530万トンを超え、過去30年間で最高の記録となった。
高次加工製品の割合は2014年比で2 倍になり32% に達し、漁業・水産加工業の総売上高は史上初めて1兆ルーブルを超え、納税等社会貢献の総額は1,120億ルーブルに達した。
シェスタコフは、この成果を達成することを可能にした経営上の決定の中で、世界に類を見ない、投資目的漁獲割当(“投資クオータ”+カニ漁獲割当オークション)の採用の貢献を強調した。
投資目的漁獲割当の第1弾では義務付けされた漁船建造プロジェクト契約105隻について22隻が竣工し、25施設の水産加工場が建設済となっている。
当該第2弾では、さらに46隻の建造、11の水産加工場と6の物流施設の建設が計画されている。
加えてシェスタコフは、漁獲量のさらなる増加が業界の優先事項であると述べ、2030年までに漁獲量を600万トン、養殖漁業生産量60万トン、そして高次加工製品の割合を50%にまで高めるガイドラインを設定する計画だと発表した。
*ロシアの2030年までの漁業発展戦略”経済成長と国家食料安全保障”
(2017年09月15日ロシア漁業庁発表 仮訳:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二)
1.主な事項と要となる指標
(1)累積的なGDP貢献の増加
①GDP貢献の年間平均成長 5%(2017年-2030年)
②水棲生物資源漁獲のトンあたりの漁業会社の粗利益の成長 150%(2030年 養殖漁業を除く)
(2)確実な国家食料安全保障
①水産物の一人当たりの消費量 22-27kg(2020年-)
②水産物の食料自給率 80-90%(2017年-)
(3)国際市場におけるリーダーシップの再強化
①ヨーロッパ製品市場におけるスケトウダラとハドックのシェア 25%(2030年)
②アジア太平洋諸国製品市場におけるスケトウダラとサケマスのシェア 10%(2030年 主に中国国内消費)
(4)人材資本開発
①雇用創出 2万5,000(2030年)
②労働生産性の向上 150%(2030年)
(5)環境負荷の低減
持続的な漁業と養殖にかかるロシア水産業のリーダーシップの国際的認知(2025年 FAO基準)
2.漁業発展戦略の要となる4つのプラットフォーム
(1)経済的発展
①新たな白身魚産業
A)スケトウダラ・マダラ・ハドック漁船団の最大70%の更新
B)極東地方、北西地方などにおける白身魚フィレとそれを利用した製品を生産するためのハイテク水産加工場建設
C)新たな施設による廃棄物処理
②海洋バイオテクノロジー
A)北西太平洋のイワシ資源の成長を利用した高次加工・機能性食品(オメガ3)の生産など
③表層魚製品
A)北西太平洋のイワシ・サバ資源の成長を利用した水産加工と資源の保全
B)ICCAT海域におけるマグロ漁業と資源の保全
④サケマス養殖
A)北西地方、中央地方などにおけるサケマス養殖漁業の成長
B)極東地方におけるサケマス稚魚生産の成長
⑤その他経済成長のためのサポートプログラムの設定など
(2)社会的発展 水産業と関連管理組織の社会的責任の領域
(3)環境的発展 漁業・養殖・法令順守監視システムの新たな規範
(4)戦略設定の発展 戦略実行の管理手順