昨日の記事で紹介した二冊の本の編訳者あるいは著者、Cédric Giraud と Pierre Vesperini は、それぞれの専門分野であるヨーロッパ中世文化史・精神史と古代ギリシア・ローマ哲学史での新世代を代表する最優秀の研究者である。どちらも40歳を越えたばかりだ。すでに大きな業績を築いており、気鋭の学者というよりも、何か大家の風を漂わせるほどにその学識は深い。読む者に眩暈を引き起こしかねない博覧強記に裏づけられたその精細な議論は、既存の理解の枠組みそのものの組み換えを迫る静かな迫力に充ちている。それぞれに中世史と古代史との専門的な研究でありながら、まさにそうであるからこそ現代に至るまでのヨーロッパ精神史を新しい光で照射し直さずにはおかない彼らの著作を読んでいると、その精神的エネルギーによってこちらの頭脳も荷電されたかのような知的興奮を覚え、文字通りの浅学菲才の身ではありながら、研究への意欲を掻き立てられる。