田んぼは常に水を張った状態ではなく、時々水を抜いて土中に酸素を供給し、不要なガスを抜いて丈夫な稲を育てている。
特に暑い盛りの今頃行われる「中干し」は、天気の良い日に水を落として、ヒビが入るまで田が乾かすことである。
この割れ目から土中に酸素を補給し、ガス抜きをして根腐れを防ぐと同時に、水を求めて根が深く強く張ると云われている。
これ以外に、田植えの時は3本前後の苗が、今は20本前後に増えているが、これ以上分けつすると1本当りの実入りが少なくなるので、余分な分けつを抑える効果もある。
天気にも恵まれて、3日間ほど中干しをしたが、直径1センチほどのヒビ割れが深く入り、細い根が無数に露出して新鮮な酸素を吸っているようだ。
中干しによって、田んぼの中もいろいろと変化していた。
浮き草が枯れ始める一方で、水を嫌う草が勢いよく出始めて、田んぼそのものが生き物のように感じる。
たくさん泳いでいたイモリは、近くの池や水路へ移動し、まだ尻尾を残した小さなカエルが稲で休んでいた。
中干しとは関係無いが、「ドロムシ」が発生して、養分を吸い取られて白茶けた葉っぱが目立つようになった。
姿は濡れた泥粒そっくりで、うまく擬態して天敵から身を守っている。
身を覆う黒い粘膜は、稲の養分を吸収した残りの糞だと言われている。
ウンチを塗りたくった虫を食べに来るものはいないので、ひたすら稲の養分を吸い続ける厄介者だ。
殺虫剤は使いたくないので、今は百姓魂を発揮して、田の草を取りながら一匹ずつ潰している。
中干し後は、3~4日間隔で湛水と落水を繰り返す「間断かんがい」をしばらく続けて、最後に「土用干し」をして水管理の締めくくりをする。
水が無ければ育たない稲も、与え過ぎれば丈夫な稲は育たないと教わったが、なんだか身につまされるようで耳が痛かった。
稲作文化は奥が深く、毎日が新しい発見で興味が尽きない