年の瀬が近づくにつれ、食料の在庫処分をしなければならない時期になった。即席麺やらレトルトカレーは緊急用の備蓄を兼ねて購入している。例えば旅行先であったり、近所のスーパーだったり。気になるパッケージを見ると、とにかく買ってしまうのだ。
「北鎮カレー」もそのうちの一つ。もう随分前になるが、旭川に行った時、駅のお土産売り場にて購入した。今般、消費期限を迎える(厳密に言えば既に迎えていた)にあたり、在庫処分したのだった。
「北鎮」なる単語は初めて聞いた。
調べると屯田兵や旧陸軍第七師団ら、北方の防衛を指す言葉らしい。実に重々しい言葉であり、東京の輩が軽々しく口に出来ない単語である。 このカレーは陸上自衛隊旭川駐屯地が監修したもの。説明によると「旧日本海軍が長い航海における眠気予防のため、イギリス海軍より レシピを譲り受けた」とあり、部隊内の食堂で実際供されているものだという。しかも隊員らの人気メニューがこのカレーだという。なかなか、一般人は食べる機会がなく、ましてや内地の者が食べる機会はほとんどないだろう。
興味深いのはカレーの歴史がそのまま、このカレーに投影されている点だ。インドを植民地にしたイギリスがカレーをも輸入し、それを独自のレシピにして日本に伝えたというこのカレーはある意味、世界基準における日本の正当なカレーの系譜と言えるのではないだろうか。
歴史的にも、そして北鎮という役割的にも畏れ多いカレーをいただく。
一言でいえば、そのカレーはパンチ力だった。厳寒の環境に耐えうることを想定したパワー飯だった。スパイス感のある辛味は寒さの耐性とし、野菜と肉でスタミナをつける。とりわけこの北の大地にそれら素材は豊富であり、まさにカレーとは北海道こそが最もおいしく食べられる環境にあるのではと痛感する。
ただ、地球をほぼ一周して辿り着いたこのカレーはやはり植民地主義的な食べ物として伝わり、その呪縛から逃れられないまま今に至っていることも忘れてはならない。
防か奪か。
このうまいカレー織りなすハーモニーは食べる人によって味わいは変わる。
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