立ち飲み屋「やまとや」を出ると雨が降っていた。
まだ本降りにはなっておらず、たいした雨ではなかったが、傘を持たない我々からしてみれば、近場でハシゴしたい心境だった。
目の前には森永製菓の本社、森永プラザビルがある。
「ビルの中に店があるんじゃないか」。
怪鳥の一言でビルに近づくと、やはり居酒屋らしき店がテナントしている。
階段を降りると、幾つかの飲食店が軒を連ねていた。
さて、どこに入ってみようか、と店を物色してみるが、どこも五十歩百歩。「ここだ!」という決定打がどの店にもない。
仕方なく、消去法で選び、我々は、我々はその店、「酒処しゃら」に入店したのだった。
見た目は冴えない店だったが、この店は実にユニークな居酒屋だった。
店内は和風の趣だった。テーブル席が4つか、5つか。小上がりがL字型に店の周囲を飾る。一見すると田舎の定食屋の風情だ。壁は砂壁風で、木造の梁が見える。
我々は「純和風の店だね」と言いながらテーブル席についたのだった。
「やまとや」でさんざんビールを飲んだので、我々がチョイスしたの酎ハイ(367円)。
残念ながらホッピーはここにも置いてなかった。そういえば、ホッピー研究会もしばらくホッピーから遠ざかっているような気がする。
お通しは「にらのおひたし」。
これが、さっぱりしてて実においしい。
つまみには納豆オムレツ(420円)、スパイシーポテト(367円)を頼んだ。
店を切り盛りするのは優しい笑顔のおばさん。おばさんというと失礼かもしれないが、癒し系の笑顔で対応している。
店内には何組かのお客がいた。全てサラリーマン。「やまとや」とは異なり、この店の立地はいいとは言えない。ここで飲む酔客はほとんどが常連だろう。
さて、肴が一通り運ばれてきた。味は悪くない。味付けを辛くしてビールをより多く飲ませる店が多いなか、同店の酒肴は極めて胃に優しい。だから、酎ハイも進む進む。
一通り、つまみを食べたが、まだ腹が落ち着かない。さて、なにか頼むか、とメニューに手を伸ばしたところ、見慣れない文字が目に飛び込んできた。
「チャナバジ」と書いてある。
その横にはカッコでこのようにくくられていた。
「豆の炒めもの」。
どうやら、インド料理らしい。
望むところだ。早速、それを頼んでみた。
そういえば、店の入り口には「インドカレー」のメニューが手書きで書き連ねてある。厨房をみると、インド人と思しき人物がせっせと料理をこなしている。
「なるほど、インド人のスタッフが料理をこなし、少しずつ同店のメニューに加えられたのか」と我々は、この純和風の店に似つかわしくないインドメニューの採用を推測してみた。
「酒処 しゃら」の目の前にはインド料理屋「TAJ」が店を構えている。
「『TAJ』であぶれたインド人スタッフが何かの縁で、この店に雇われたとか…」。
我々は勝手な推測をすることでおおいに盛り上がった。
しばらくして、くだんのインド料理「チャナバジ」(367円)が運ばれてくる。
ガラムマサラをはじめとするスパイスをふんだんに使った味付けは何かのわたしの記憶とともに鼻腔をくすぐる。日本では一緒くたにインド料理は「カレー」と称されるが厳密に言えばそれらはカレーではない。敢えて言うならば、煮込み汁と言ったほうがいい。様々なスパイスが使われており、それらが結果的にカレーのような匂いと味になっただけである。
インドは豆の料理が得意である。この「チャナバジ」という食べ物もその代表のひとつであろう。わたしは3ヶ月間のインド生活の中で一度もそれを口にする機会がなかったが、豆の料理はいくつか食べた。
例えば、「ダル」。
インドの定食「ターリー」に必ずついてくるのが、この「ダル」で豆を煮たスープだ。これが実にクセのある匂いと味をしており、インド生活の初め頃は、どうも苦戦した食べ物だった。
この「チャナバジ」も見た目は汁のないダルのように見え、匂いもまたインドに居た頃を思い出す。一口食べると、ガラムマサラの味が口の中に広がった。
「おいしい!」
「ダル」に比べるとそのしつこさがなく、むしろあっさりとしている。ターメリックなどの匂いもしており、味付けはいわゆる「カレー」だ。
しかし、これが実にうまい。
怪鳥も「うまいうまい」と言いながら豆をつまんで食べている。
ひとしきり、「チャナバジ」を食べたら調子が出てきた。
締めはカレーにしよう!
怪鳥と意見があうと、「チキンマサラ」(997円)と最後の酎ハイを頼んだ。
やがて、相当煮込まれたであろう「インドカレー」が目の前に出てきて、すかさず我々はそれにかぶりついた。
やはり、うまい!
しかし、辛い。
わたしは辛いものが好きだから、それほど苦にしないが、けっこうスパイシーでヒーヒー言いながら食べた。
しかし、怪鳥は涼しい顔で「『カシミール』のカレーよりは辛くない」などと言っている。
だが、酎ハイはその辛味をすっきりした飲み口で爽やかに洗い流してくれる。
「カレーに合う飲み物が、分かったよ」。
怪鳥は満足そうにカレーをたいらべて言った。
「カレーには断然酎ハイだね」と。
そういえば、辛いカレーにはわたしも随分何を飲んでいいのか迷ってきた。
確かに、シュワシュワとした炭酸がほどよくカレーの辛味を洗い流してくれる。
甘くなく、さりとて味がついているわけでもなく。
酎ハイの偉大さに、今改めて気づいたのである。
お勘定の段になって、癒し系のおばさんに聞いてみた。
「何でインド料理があるんですか」。
おばさんは、その魅力的な笑顔でこう言った。
「元々ウチはインド料理屋だったんですよ」。
え?と我々は絶句した。
インド料理屋から居酒屋に転身?
そんな変り種もあるのか。
ともあれ、この店の「チャナバジ」、お奨めですよ!
そして、ホッピー研究会も名称を「酎ハイ研究会」に変えようか、と帰宅の電車に揺られながら考えた熊猫であった。
まだ本降りにはなっておらず、たいした雨ではなかったが、傘を持たない我々からしてみれば、近場でハシゴしたい心境だった。
目の前には森永製菓の本社、森永プラザビルがある。
「ビルの中に店があるんじゃないか」。
怪鳥の一言でビルに近づくと、やはり居酒屋らしき店がテナントしている。
階段を降りると、幾つかの飲食店が軒を連ねていた。
さて、どこに入ってみようか、と店を物色してみるが、どこも五十歩百歩。「ここだ!」という決定打がどの店にもない。
仕方なく、消去法で選び、我々は、我々はその店、「酒処しゃら」に入店したのだった。
見た目は冴えない店だったが、この店は実にユニークな居酒屋だった。
店内は和風の趣だった。テーブル席が4つか、5つか。小上がりがL字型に店の周囲を飾る。一見すると田舎の定食屋の風情だ。壁は砂壁風で、木造の梁が見える。
我々は「純和風の店だね」と言いながらテーブル席についたのだった。
「やまとや」でさんざんビールを飲んだので、我々がチョイスしたの酎ハイ(367円)。
残念ながらホッピーはここにも置いてなかった。そういえば、ホッピー研究会もしばらくホッピーから遠ざかっているような気がする。
お通しは「にらのおひたし」。
これが、さっぱりしてて実においしい。
つまみには納豆オムレツ(420円)、スパイシーポテト(367円)を頼んだ。
店を切り盛りするのは優しい笑顔のおばさん。おばさんというと失礼かもしれないが、癒し系の笑顔で対応している。
店内には何組かのお客がいた。全てサラリーマン。「やまとや」とは異なり、この店の立地はいいとは言えない。ここで飲む酔客はほとんどが常連だろう。
さて、肴が一通り運ばれてきた。味は悪くない。味付けを辛くしてビールをより多く飲ませる店が多いなか、同店の酒肴は極めて胃に優しい。だから、酎ハイも進む進む。
一通り、つまみを食べたが、まだ腹が落ち着かない。さて、なにか頼むか、とメニューに手を伸ばしたところ、見慣れない文字が目に飛び込んできた。
「チャナバジ」と書いてある。
その横にはカッコでこのようにくくられていた。
「豆の炒めもの」。
どうやら、インド料理らしい。
望むところだ。早速、それを頼んでみた。
そういえば、店の入り口には「インドカレー」のメニューが手書きで書き連ねてある。厨房をみると、インド人と思しき人物がせっせと料理をこなしている。
「なるほど、インド人のスタッフが料理をこなし、少しずつ同店のメニューに加えられたのか」と我々は、この純和風の店に似つかわしくないインドメニューの採用を推測してみた。
「酒処 しゃら」の目の前にはインド料理屋「TAJ」が店を構えている。
「『TAJ』であぶれたインド人スタッフが何かの縁で、この店に雇われたとか…」。
我々は勝手な推測をすることでおおいに盛り上がった。
しばらくして、くだんのインド料理「チャナバジ」(367円)が運ばれてくる。
ガラムマサラをはじめとするスパイスをふんだんに使った味付けは何かのわたしの記憶とともに鼻腔をくすぐる。日本では一緒くたにインド料理は「カレー」と称されるが厳密に言えばそれらはカレーではない。敢えて言うならば、煮込み汁と言ったほうがいい。様々なスパイスが使われており、それらが結果的にカレーのような匂いと味になっただけである。
インドは豆の料理が得意である。この「チャナバジ」という食べ物もその代表のひとつであろう。わたしは3ヶ月間のインド生活の中で一度もそれを口にする機会がなかったが、豆の料理はいくつか食べた。
例えば、「ダル」。
インドの定食「ターリー」に必ずついてくるのが、この「ダル」で豆を煮たスープだ。これが実にクセのある匂いと味をしており、インド生活の初め頃は、どうも苦戦した食べ物だった。
この「チャナバジ」も見た目は汁のないダルのように見え、匂いもまたインドに居た頃を思い出す。一口食べると、ガラムマサラの味が口の中に広がった。
「おいしい!」
「ダル」に比べるとそのしつこさがなく、むしろあっさりとしている。ターメリックなどの匂いもしており、味付けはいわゆる「カレー」だ。
しかし、これが実にうまい。
怪鳥も「うまいうまい」と言いながら豆をつまんで食べている。
ひとしきり、「チャナバジ」を食べたら調子が出てきた。
締めはカレーにしよう!
怪鳥と意見があうと、「チキンマサラ」(997円)と最後の酎ハイを頼んだ。
やがて、相当煮込まれたであろう「インドカレー」が目の前に出てきて、すかさず我々はそれにかぶりついた。
やはり、うまい!
しかし、辛い。
わたしは辛いものが好きだから、それほど苦にしないが、けっこうスパイシーでヒーヒー言いながら食べた。
しかし、怪鳥は涼しい顔で「『カシミール』のカレーよりは辛くない」などと言っている。
だが、酎ハイはその辛味をすっきりした飲み口で爽やかに洗い流してくれる。
「カレーに合う飲み物が、分かったよ」。
怪鳥は満足そうにカレーをたいらべて言った。
「カレーには断然酎ハイだね」と。
そういえば、辛いカレーにはわたしも随分何を飲んでいいのか迷ってきた。
確かに、シュワシュワとした炭酸がほどよくカレーの辛味を洗い流してくれる。
甘くなく、さりとて味がついているわけでもなく。
酎ハイの偉大さに、今改めて気づいたのである。
お勘定の段になって、癒し系のおばさんに聞いてみた。
「何でインド料理があるんですか」。
おばさんは、その魅力的な笑顔でこう言った。
「元々ウチはインド料理屋だったんですよ」。
え?と我々は絶句した。
インド料理屋から居酒屋に転身?
そんな変り種もあるのか。
ともあれ、この店の「チャナバジ」、お奨めですよ!
そして、ホッピー研究会も名称を「酎ハイ研究会」に変えようか、と帰宅の電車に揺られながら考えた熊猫であった。
また行きましょう!
しかし、湯島の「デリー」って知らないんだよね~。春日通りでしょ?
次回、ホッピー研究会はホッピー飲みましょう。もうかれこれホッピー研究会でしばらく本業のホッピーを飲んでいません。
今月中に招集しますよ!
この地下にもぐることは一度もありませんでした。
なんかアヤシイなーと思っていたのと、
まだ新入社員の自分が入れる雰囲気ではなかったのと(笑)。
しゃら、ってこんなお店だったんですね~。
やっぱりあのビルで働いてる人が常連さんだったりするんでしょうかね~。
「まき子の酒」を読んでてそう思ってました。
さて、ビルにテナントしている居酒屋ってあまり行きませんよね。
テナント代が料金に含まれていて、割高感を感じますもんね。
でも、「しゃら」のように安く飲める店もあるのです。今回はビルのテナントの居酒屋も悪くないなって思いました。
最近浜松町に出没中。でもクルマだから飲めないのデス。。。
酎ハイですよ。やっぱ。相性としては、シャンパンも悪くないと思うけれど、なかなか普段買えるものでもないし。
今度、今p試してみてください。
浜松町?
また超多忙の仕事ですか。
再来週くらいに焼き鳥ツアーどうでしょう。
あいている曜日を教えてくださいナ。